令和3年度大学院、専門職大学院及び大学卒業式

学長告辞(令和3年度大学院及び専門職大学院修了式、大学卒業式)

 学習院大学の卒業生のみなさん、大学院の修了生のみなさん、おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。

 本年度の卒業生は、法学部・経済学部・文学部・理学部・国際社会科学部の5学部あわせて2155 名です。大学院の博士前期課程の修了生は、6研究科あわせて123 名、博士後期課程に在籍中に博士の学位を授与され課程博士になられた方が3名、法科大学院を修了して司法試験に挑戦する資格を得た方が15名です。すべての卒業生、修了生のみなさん、おめでとうございます。ご父母の皆様、ご家族の皆様もお慶びのことと存じます。

 昨年度と同様に多くの皆様には式の様子を別室で見ていただくという形で行うこととなりましたが、ここに耀英一学習院長、東園基政桜友会長をはじめ、来賓の皆様のご臨席を賜わるなかで卒業式・修了式を挙行できますこと、たいへんうれしく思います。

 新型コロナウイルスとの戦いは2年前から続いています。学部を卒業する皆さんにとっては、青春を謳歌したであろう初めの2年間に比べてコロナ禍の中の2年間は、どう表現して良いか言葉も見つからないくらい耐え難いものであったと思います。学業の不自由さだけでなく、友人との交流、課外活動、留学はもちろん、見聞を広めるべき国内外の旅行もままなりませんでした。失ったものの大きさは計り知れないと思います。大学として、それをどこまで補えたか、皆さんをどこまで支えることができたかと考えると、忸怩たるものがあります。しかし、その中で学業を修め、また卒業研究、学位論文をまとめ上げたみなさんに敬意を表します。この2年間の困難な状況を耐え、頑張り、乗り越えてくれたことに感謝いたします。ありがとうございます。

 皆さんがこれから飛び込んでいく社会の様子も、コロナ禍前とは大きく変わりました。ほとんどの社員が在宅勤務という会社も多数あるそうです。みなさんの就かれる職場の環境は様々だと思います。これまで思い描いていた社会人の生活とは大きく異なるかもしれませんが、若い人の方が適応力は高いと思います。自身の適応能力を信じて頑張ってください。

 もう一つ世界に不安をもたらす出来事が直近に生じました。ウクライナの戦乱です。まだ先行きが見通せませんが、事と次第によっては、コロナ禍以上の災厄を世界にもたらす危険も孕んでおり、大変心配です。

 もう27年ほど前になりますが、私はウクライナの複数の科学者と共同研究を始めました。客員研究員として本学に来ていただいたことも何度かあります。私自身も、最近のニュースで名前が伝えられるハリコフにある物理技術研究所に滞在したことがあります。いまでもmailや論文のやり取りを続けています。従ってウクライナには深い親近感をもっているのですが、その親近感を別にしても、今回の一方的な軍事侵攻という暴挙には強い憤りを感じます。様々の国から、ロシア国内からさえも多数の人々から、非難の声があがっています。独裁的権力者はその様な声を無視してこの様な暴挙ができてしまうということを見て暗澹たる思いです。できてしまうと言いましたが、それを可能にした強力な手段は情報の統制と操作です。自国内への情報統制は歴史的に見ても今に始まったことではありませんが、現代の開けたコミュニケーションの場では、その行為は外から丸見えです。むしろそこから首謀者が何を意図しているかを読み取ることもできます。それでも事を推し進めるためには自国民に対しては限られた情報しか与えないということが現実に起きています。一方、我々は情報を自由に発信できる場も持っています。その様なところではなんらかの意図を持ったフェイクニュース、嘘の情報が横行しています。やはり事を推し進めるために、虚偽の根拠を作り出すという行為です。今起きていることは、事実を隠蔽あるいは事実らしきものを捏造して平和を破壊する行為、情報操作を駆使して無理を通している様に私には見えます。

 その中で我々はどうすべきなのか。学習院は「真理と平和を追い求める」ことを標語に掲げています。また、世間が抱く学習院大学のイメージは「誠実・正直」だそうです。大学のイメージというよりは、在学生・卒業生のイメージです。大変嬉しいことです。誠実・正直である我々は情報の隠蔽や捏造に関わらないことを改めて確認し肝に命じましょう。しかしこの様な状況の中ではそれだけでは足りません。我々は、情報を受け取る側にいることがほとんどです。我々に届いている情報が正しいものか否か、冷静な目で常に気を配りましょう。ややもすると自分にとって望ましい情報だけを信ずることに陥りがちであることにも注意しましょう。皆さんが大学、大学院で勉強してきたことは、真実を見極め、課題を発見する能力です。何が真実であるかを見極め、そのうえで自分ができることを自問し、行動してください。我々が個人的にできることは限られていますが、声を上げ、それが集まれば国際社会を動かすことにつながっていくでしょう。

 卒業式の告辞にしてはやや重い話題になりました。明るい話題も紹介しましょう。科学研究費という言葉を皆さんは聞いたことがあると思います。研究活動に対して国から補助される競争的研究資金、つまり研究計画を作成して申請し、審査を受けて採択されれば研究費が交付されるというものです。学習院大学の2021年度の新規採択率は49.2%でした。新たに申請した計画のおよそ2件に1件が採択されました。この採択率は日本全国の大学の中で2位、私立大学では首位でした。これは、学習院大学でいかに優れた研究が計画され進められているかということを物語っており、大変名誉なことです。大学にとって研究と教育は両輪です。研究あっての教育、教育あっての研究ということです。皆さんはこの様な研究・教育環境の中で学びました。卒業研究で研究の一端に触れた人もいるでしょう、大学院で論文をまとめた方はその研究の一翼を担いながら育ったわけです。学習院大学がこの様に優れた研究・教育を行っていることが、世間にはいまひとつ浸透していない様な気がするのが歯痒いところです。学習院大学のもう一つのイメージは「礼儀正しい・上品」だそうです。大変結構なことなのですが、どうも上品すぎて自慢が足りないのかもしれません。皆さんは学習院大学というすごい大学を卒業したのだと、周りの人に是非大いに自慢してください。そしてその誇りを持って社会で活躍してください。

 様々の困難と不安の中で卒業・修了に到達したみなさんにあらためて敬意を表し、お祝いを申し上げます。おめでとうございます。

 以上をもって告辞とします。

令和4年3月20日 学習院大学長 荒川 一郎