労働経済、人事管理、女性の働き方
日本キャリア・デザイン学会会長
日本経済学会、社会政策学会、日本労務学会
神奈川県職業能力開発審議会会長
東京地方労働審議会副会長
講義では、テーマごとにポイントを述べますが、興味のあるテーマはぜひ、授業やシラバスでふれる参考文献を読んでみて下さい。仕事や雇用はみなさんの身近なこととして感じられるでしょう。そのなかで1つぐらい興味あるテーマは必ずあるはずです。
演習では各自が遠慮せず活発な議論ができるような場にし、少しでも深く考えることの訓練ができれば、と思います。良いにせよ悪いにせよプレゼンテーション・スキルというのが、ビジネス社会で重要視されてきています。失敗や恥をかく経験をしましょう。
経済学や経営学を学習するときのポイントはどのようなものでしょうか。
素材が、どこにあるかといえば、社会そのものにあります。社会あるいは企業の奥深いところに接する機会は、学生のときにはほとんどありませんから、新聞や雑誌、インターネットなどで仕入れてください。素材(つまり関心事)がなければ、技法だけ覚えても役にたちません。
つぎに、いくら良い素材を仕入れても、ありきたりの調理法では、おいしくない料理になってしまいます。調理法が経済や経営の理論です。そこには、プロしかできない調理法もありますが、ちょっと学習(訓練)をすれば習得できるものもあります。かなりの経済現象・社会現象が、わりと単純な調理法(理論)で説明・解明できます。この最低限のところを、学生のときに習得する、つまり、どの主張がどういった理論や仮説を背景にもっ てなされているかを、見抜くことができるようになってほしいと思います。
高校までの勉強と大学での勉強の違いを言えば、自分自身でテーマや関心事を発見するところが大学です。丸の内や霞ヶ関といった経済・政治の中心地のすぐ側にいるわけですから、素材は仕入れやすいはずです。その東京のなかでも、目白という、ゆったりと思索することができる場所で学生時代を過ごすことによって、この優位性を十分に生かして、大きなものを得てください。学問的手続きをふんで行う研究は、意外なほど企業などの組織の仕事を進めるうえで役立ちます。表面的なテーマは、大学と実社会でかなり異なりますが、新たなプロジェクトやテーマに取り組むとき、その大切さを痛感します。
現在の私の研究で、もっとも力をいれているのは、「ワーク・ライフ・バランス」(WLB)、すなわち仕事と生活の調和です。21 世紀におけるキー・ワードであるとさえ思っています。学習院大学経済経営研究所が先進企業と共同でWLB の指標を作成し、その成果も出版されました。多くの企業や病院などで用いられており、少しでも世の中が変わることに役立てれば、と期待しています。
女性労働の研究を専門的に4 0 年続けてまいりましたが、2018年に『女性労働に関する基礎的研究―女性の働き方が示す日本企業の現状と将来』(日本評論社)を集大成として出版しました(労働関係図書優秀賞受賞)。専門的に興味のある方は、手にとってみて下さい。
日本経済新聞などで、日々動いていく経済・社会を感じとり、何が変化し、何が変化していないかを見極めてください。