教員インタビュー:多彩な教授たち
清水 大昌 教授

経済学科 清水 大昌 教授

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1998年、米国Cornell大学を経済専攻として卒業、2004年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了、博士号取得。その4月より東京大学社会科学研究所の助手となり、2006年より現職(専任講師、11月から助教授、准教授、2012年より教授)。

研究分野は産業組織、寡占立地競争、製品差別化、企業結合やカルテルと競争政策。

【この道に進んだきっかけ】
小学5年から大学までをアメリカで過ごしたが、海外に飽きて日本に戻り、大学院に。そこでミクロ経済学の面白さを知り、研究の道に。博士課程3年後期から始めた東洋大学非常勤講師の仕事を通じて、教育の重要性と楽しみを知る。

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モデルを用いて企業が進むべき道を示す

〈世の中で一般常識だと思われていることの中にある、本当は確かではないこと〉を明らかにし、わかりやすい言葉で伝える。それこそ、清水教授が目指しているところだ。たとえば、ゲーム理論を用いた企業行動の把握。ゲーム理論とは、経済主体、たとえば企業の間の相互依存関係を分析する手法。「囚人のジレンマ」という言葉を聞いたことがある人は少なくないだろう。この手法を用いることで、足し算・引き算さえできれば誰でも、ある二つの企業のとるべき行動が把握できるのだ。

「経済学というと、難しい感じがしますよね。でも決して近寄りがたいものではなく、実際に使えるものであるということを知ってほしい」

そんな清水教授が手掛けている研究のひとつが、企業の立地論だ。これまでは、立地後、つまり店を建てた後に店舗同士が価格競争を行うというモデルが主流だった。その後生まれたのが立地後の数量競争というモデル。数量競争とは、ある品を企業1が10個、企業2が20個持ってくるとして、全30個が全部売れるためにはいくらの値段に設定すべきか、という形で価格を決めること。価格競争とは逆の考え方だ。

「設定が多少ややこしくはありますが、結論がきれいに出る。このモデルのほうが現実を描写できるんです。価格競争、数量競争という考え方自体は古くからありますが、立地に加えてそれらの競争を考える、というのは最近出てきたもの。立地後の数量競争について細かい部分を詰めていったわけです」

企業が立地を決める際には、消費者の興味に近づくことによる需要促進効果(=利潤を上げる)と、企業同士が近づいてしまうことによる競争効果(=利潤を下げる)のバランスを考慮する。それが「立地後に数量競争を行うモデル」にも当てはまることは、このモデルを率先して研究していた清水教授だからこそ示せた成果だ。

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ゲーム理論の活用
表の数字は企業の利益、つまり売り上げから広告費を引いた値。二つのコーラ会社が相手の企業よりも利益をあげるため、より多くの広告費を使おうとする。しかしお互いの広告費が違う場合には、多い方に消費者がつられて売り上げが上がり低い方は売れなくなる。広告費が同じ場合には売り上げは同じであるため、その広告費が高い場合の方が利潤は減っている。つまり、二社ともが広告費を縮小しておいた方が利益をあげることができる。しかしながら、結果として二社とも広告費を拡大してしまうというジレンマがこの表から分かるようだ。


企業同士の合併の傾向を探る

清水教授が新たに取り組んでいる研究に、企業同士の合併がある。企業は様々な方法で多様化し、製品の差別化を図っている。合併するにあたっても、企業がどんな相手と合併するかはこの多様化戦略と深いかかわりをもつはずだ。清水教授はそのあたりを考察しながら、合併が社会に及ぼす影響、そしてそれに対して必要な政策を検討しようとしている。

「もともとは、強い企業が合併して値段のつりあげやカルテル(企業間での協定)を行うことが問題になっていたんです。しかし、現在は企業が弱っているので、救済合併という形も増えている。そんな背景をもとに、どういう企業が合併しやすいかを研究しています。似たものをつくっている企業同士なのか、違うものをつくっている企業同士なのか」

現時点では具体的な企業を調査しているのではなく、モデルとして捉えているが、具体例を挙げてわかりやすく説明すると――。

「たとえば、ゲームソフト会社のスクウェア・エニックスという企業があります。これはスクウェアとエニックスという二つの企業が合併してできました。スクウェアの代表的なゲームはファイナルファンタジーシリーズ。そしてエニックスといえばドラゴンクエストシリーズですよね。互いにRPG(ロールプレイングゲーム)を得意とする企業同士がくっついた。同じように、バンダイナムコゲームスは二社ともキャラクターものに強い。こんなふうに、似たもの同士の企業がつながる事例が多いのです。おそらくノウハウや人脈など、共通で使える財産が多いという理由があるのでしょう」


あらゆる題材が経済学につながっていく

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清水ゼミの様子。3年生は夏季の合宿で後期の半年間をかけて研究するテーマを発表し、2、4年生はそれに対して意見を言う。欠点を指摘されてテーマを急遽変更するグループも。清水教授のゼミでは、ミクロ経済学やゲーム理論を使い、現実の諸問題をどう理解すればいいかを考えてゆく。範囲は消費者行動、企業行動、政策すべて。一見難しそうだが、トピックの内容は「スーパーマーケットのセールについて」「プライベートブランドについて」など、ごく身近なものも少なくない。

2年生は教授が用意したトピックについて分析し、3、4人のグループで発表を行う。3年生からは学生自らテーマを選び、前期は4人グループで毎週発表を実施。その後、法学部とのインターゼミ(違うゼミ同士での発表会)に向け、6人グループで4週間かけて分析を行う。後期は半年間ひとつのテーマに3人グループでじっくり取り組み、他大学とのインターゼミに挑む。テーマは基本、自由。

「学生たちには、経済学じゃなくてもいいとさえ伝えています。でも、どんな題材もほとんどが経済学に結びつくんです。たとえばスカイツリーについて研究したいのであれば、スカイツリーができたことで誰が利益を得たのか、影響を受けたのかという切り口で経済とつなげることができる」

どんなテーマも、どこかで経済とつながっている。それほど経済学は我々の身近にあるのだ。研究内容が現実と地続きであることは、清水ゼミの面白さのひとつ。

「外国の企業税金が免除される地域・経済特区というのは海外にはありますが、日本にはまだない。それを沖縄につくろうと考えたグループがいたんです。すると実際に国内に経済特区をつくる案が検討されているというニュースが出てきたりする。あるグループが大学改革について研究したら、ちょうど大学の設置基準が揺らぐニュースが報道されたことも。いままさに研究していることが現実にリンクしているのは、学生たちにとってもいい経験でしょう」


きっちり答えを出すのがミクロ経済学の役割

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3年生前期のゼミでは、発表担当者以外その日初めて聞く内容について討論を行う。まるで就職活動で行われるグループディスカッションを毎週実践しているような環境だ。

「題材そのものももちろん大事です。しかし、研究を通じて自分で伝えたいメッセージを論理的に示せるようになってほしい。それは社会に出てからも重要なことなんです。経済学の細かいことよりも、経済学的な思考の流れを体験して、身体で覚えてほしいと思っています」

ミクロ経済学を研究する者として、また教育者として、清水教授がつねに考えていることがある。

「マクロ経済学の場合、研究者によってさまざまな仮説があります。経済全体がこれからどうなるかというのは、複雑な問題ですから人によって意見が違いますよね。でも産業政策や競争政策などはミクロ経済学の分野ですから、『こういう政策を実施したらこうなります』というように、比較的ズバッと答えが出る。みなさんには、まず経済学にもわかりやすい分野があるということをまず知っていただくのが、ミクロ経済学の役割だと思っています。そして、経済学を学んだ暁には、あらゆる物事を判断する道具としてうまく経済学を使えるようになってほしいと思います」


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