教員インタビュー:多彩な教授たち
和田 哲夫 教授

経営学科 和田 哲夫 教授

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1989年、東京大学法学部第一類卒業、1994年カリフォルニア大学バークレー校経営大学院修士(M.S.)、同大学院から2003年博士号(Ph.D.)取得。1989年郵政省入省、1992年人事院長期在外研究員に。1994年郵政研究所研究官、主任研究官を経て2000年学習院大学経済学部助教授に。2004年より現職。

研究分野は特許を中心とした知的財産の戦略的な使用方法。

【この道に進んだきっかけ】
祖父が弁理士で、幼い頃は内容がわからないなりに知的財産に親しみがあった。文科系である一方で技術・科学にも関心を持っていた。そのようなベースのもと、大学時代知的財産の第一人者である中山信弘教授に師事し、この道に。

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ゆるやかな契約のもたらす効果

大学時代、法律を専攻する前に和田教授は考えた。社会科学では、学問分野ごとに考え方が根本的に別れていて、それぞれがバラバラに思える。たとえば実務の必要から成り立つ法律学と、科学であろうとする経済学は、発想からして相容れないようにさえみえる。物理学の統一理論のように、とまではいかないにしても、社会科学を横断的に把握することはできないのだろうか。もともと経済学も学んでいた教授は、そこから多ジャンルの要素が融合した存在である特許について研究を始めた。特許は法律に守られているものだが、内容は技術そのものを相手にする。そしてその存在は企業の経営を左右し、技術革新を起こし経済を動かしもする。それは、まだ知財というより産業財産や無体財産という言葉の方が良く使われる時代だった。

「大学院で指導いただいたウイリアムソン教授が、経済学、経営学、社会学、法学をまたがる業績でノーベル賞をとられた方なんです。企業は契約の積み重ねによってできている存在ですが、契約というもの自体、法的な制度に支えられているし、経済・経営と密接に結びついている。自分の研究領域のベースにあるのはそういった部門横断的な考え方です」

その考えに基づき、和田教授は知的財産に関する研究を進めるようになった。たとえば、企業同士の技術に対する契約のあり方について。

「契約と聞くと、生命保険の契約書を思い浮かべ、一から十まで細かな規定を行うものと考える人が多いかもしれません。しかし、研究の結果、企業同士の協力関係が長期間にわたってうまくいく契約というのは、そこまで細かく規定しないゆるやかなものであることも多いことがわかりました。知的財産の取引はその典型です。たとえば、二つの企業間でお互いに相手の技術を利用することができる契約形態であるクロスライセンス。どちらかの企業が一方的に技術を供与するよりも、技術的な依存関係も互いにあがるし、開発のペースもあがるんです。知財管理を通じ、法学と経営組織論の双方が、戦略的な合理性という接点でつながったのです」


特許の引用について、社会学で考える

和田教授が現在手掛けている研究のひとつに、「特許の引用」がある。先にある特許技術を引用し、新たな特許技術を開発するという、技術間の関係を測る新たな方法を探っているのだ。

「現在は、単純に引用がたくさんされる技術の経済価値が高い、という考え方なんです。しかし、同じ業種で近い研究をやっている人たちに技術が多く流用されるのは当然のこと。ジャンルを超えてまったく予想していなかったことに使われていく技術こそ、本当に価値のあるものなのではないか」

その計量手法に、社会学で使われているネットワークデータを活用しようとトライしている最中なのだという。

「社会学で有名な研究に『ザ・ストレングス・オブ・ザ・ウィークタイズ……弱い絆の強さ』という現象があるんです。誰の情報を元にいまの職業に就いたのかを調査した結果、普段一緒にいる親密な関係の相手からではなく、遠い知り合いから回ってきた話が人を動かす力になるというもの。このネットワークの手法をうまく利用できないかといま、検討を重ねています」


現場の声を聞くことで、教育の力が深まる

門戸を広くした上で理論と現実を重ねる和田教授のゼミでは、研究テーマは自由。のみならず、ともに研究を行うグループの人数も学生に委ねられている。自分たちでテーマを決め、人数合わせではなく純粋にそのテーマを研究したい仲間を集め、研究を行う。「一人でできない人はグループの一員になっても推進力にはなれない」という理由から、まず2年生では個人での研究発表の経験を積み、3年生でグループワークに移行する。他大学との発表会もある。研究に際して教授が学生たちに伝えることは単純だ。

「言いたいことをはっきりすること、検証手段を考えて裏付けを明確化すること。そして空論にならないようできるだけ企業の方にお話を聞きに行け、ということは強調します」

そのため、このゼミの学生たちは自分のテーマに合わせ、それぞれ現場の人から話を聞いてくる。最近は日本中を飛び回って来る学生が増えているという。

「大企業でなく、小さな企業で海外進出を果たした食品会社をテーマにしたグループは、鹿児島や名古屋に行って各企業の社長と直接話してきた。プリクラを生み出したメーカーに行き、スマホ時代の戦略について聞き取ってきた学生、学生サークル合宿を扱う企業が企業人事部も顧客にしていることを発見した学生、化粧水に特化した化学企業の新規参入戦略を聞き出してきた学生、など様々な側面があります。サマンサタバサの新分野プロジェクトに飛び込み、そのまま就職した学生もいます」

陸上部に所属するある学生は、食品企業の主催するランニングイベントの調査のため、福岡に飛んだ。

「アンケートを送るだけだと『社会貢献の一環』といった通り一遍の言葉しか出てこないけれど、実はこのイベントを支えているという思いで社内の連帯感が高まる効果があったりする。それは、現場の話を聞かないと見えてこないことなんです。」

「新聞にも雑誌にもネットにも載っていない、新鮮な事実を学生たちが次々と掘り起こしてくる。すごく、面白いですよ」

教授はゼミの学生たちに対しても、横断的な考え方を身に着けるヒントを与えている。

「たとえばスターバックスについて研究するとしたら、高いサービス評価を得ている背景として、それをできる人材を育てるための研修体制にどれくらいコストをかけているのかを調べてみる。企業レベルの情報を汲み上げてみると、テーマが立体的に浮かび上がってくるのです。一方向から研究するのではなく、客観的にさまざまな切り口や分析方法を用いることで新たな発見が生まれることがある。現場を大切にしつつ、そこから頭を使って深く考え、大きな枠組みにもつながる論理を組み立てて欲しい」

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学生たちは興味応じテーマを決める。野菜スイーツに関する戦略や売り出し方について研究したある2年生は、3年次にそれを発展させてオーガニック食材を取り扱う企業の研究を検討しているとか。

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