【教員による授業紹介】「国際開発論」山﨑 泉 国際社会科学部 准教授

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大学で行われる授業はどのような目的を持って、またどのような知識・スキルの習得のために行われ、それらはどのような人材育成を想定したものであるのか。
国際社会科学部開講科目「国際開発論」(※PDF)について、国際社会科学部 山﨑 泉 准教授にインタビューしました。

※掲載シラバスやその他掲載情報は記事掲載時のものです。

Q.山﨑先生の専門分野を教えてください。

専門分野は、教育経済学です。開発途上国、特にアフリカの教育を扱っていますが、現在はその労働市場も分析対象にしています。教育のパフォーマンスを考えるには、それをただ受けて終わりということではなく、どう生産や社会への貢献に繋がっているのかを検証する必要があるためです。

アフリカに注目した理由としては、開発途上国として課題が一番多いと考えたのがアフリカ、特にサブサハラアフリカ(サハラ以南のアフリカ)だからです。そこにある貧困などの様々な課題解決のためには、教育が果たすべき役割が大きいと思います。教育により生産性を上げ、社会の様々な課題に対処できる人間を育て、国を発展させるべきで、この地域の教育に 取り組む意義は大きいと考えています。

Q.教育経済学とはどのようなことをするのでしょうか。

経済学の理論・分析手法を使って教育政策の検証や課題の分析をしています。たとえば、経済学には生産関数という資本と労働等の投入量と生産物の量の関係を表すモデルがあります。それを学校に当てはめ、生産関数の要素として、たとえば教員の質(経験年数・履歴)、机・教科書・その他教材などの投入物により、どのように生産(よく使われるのは学力、成績)が伸びるのかを検証するというものがあります。また、統計手法を使った計量経済学の分析手法はよく使われます。もちろん学力だけでなく、給料や雇用、労働生産性との関係など、様々な要素が分析対象です。

Q.現在取り組んでいる研究は?

JICA研究所と、「フィリピンの技術職業高校卒業生の労働市場のパフォーマンス」というテーマで共同研究をしています。フィリピンは、数年前まで中学校4年を終えたら、大学進学か就職という教育課程を取っていました。現在はその課程に2年追加されていますが、その試行事業をする際にJICAが様々な支援を行いました。試行事業において、技術職業高校での追加された2年間の教育が期待するパフォーマンスを上げているのかを分析しています。

Q.「国際開発論」では、なにを学ぶことができますか?

この授業では、私自身が国際機関で働いていた経験から、国際機関で働きたい学生や開発途上国支援にかかわりたい人にとって、頭に入れておいて欲しいトピックを一通りカバーしています。現実の課題はあらゆる要素が混じり合って、さらにそれぞれが関係しているものです。課題に対して広い視野で俯瞰できるようになって欲しいと思っています。1学期の前半では、貧困・雇用・保健・教育・ジェンダーなどの様々な開発課題を学び、後半では、援助の潮流、国際開発にかかわる組織を扱います。一口で国際開発にかかわるといっても国際機関や政府組織、NGO、私企業など様々ありますので、将来を考えるうえでもそれぞれの特徴を知ることは重要です。

国際機関では良く「T字型人材になりなさい」と言われます。「T」のヨコの棒は、いろいろな分野を幅広く知識として持っておくことの重要性を表します。この授業では、ヨコの棒を扱います。ちなみに、「T」のタテの棒は専門性です。国際機関・欧米の組織ではスペシャリスト集団ですので、そこで働くのであれば専門性を追求することが重要です。

Q.授業での工夫を教えてください。

近くの学生同士でのディスカッションの時間を作ったり、毎回授業の最後にリアクションシート(講義を踏まえた学びや感想、意見)を書いてもらい、講義で受け取った情報を出力させるようにしています。出された意見は抜粋して次の授業で取り上げたりと、ただ授業を聴講して終わるのではなく双方向の取組みになるようにしています。

また、私自身、仕事などでも書くことを通して成長したという実感があるので、学期末試験は書くことを重視しつつPBL(Problem Based Learning 課題解決型授業)の手法を取り入れたものにしています。試験一月前に、それまでの授業を踏まえた課題を提示して、課題の分析とその解決案を試験で書いてもらうのですが、世界銀行データベースから多くの統計を入手しなくてはいけないこともあり、なかなか大変なものです。ですが、その取り組みを通して、データベースの使い方や社会科学の分析手法を知り、論理的にまとめて意見を書くことで知識を自分のものにしてもらいたいと思っています。

(授業では、公的・民間セクター問わず様々なアクターをゲストに呼んでいる)

Q.「国際開発論」を履修することは、学生の将来にどのように生きてきますか?

これから先、どのような仕事であっても世界と関わりのない仕事はないと思います。そういう時代の中で生きていく人たちにとって、実は世界の多数の地域・国・人口を占める開発途上国という場所にどのような問題があるのかを知っておくことは大切なことだと思います。

もちろんビジネスや援助で関わる方や国際機関で働きたいという人にとっては、実際に国際機関で働いていた私自身がこういう知識を持っておきたかったという授業ですので、とても役に立つと思います。

Q.「国際開発論」はどのような学生に履修して欲しいですか?

開発途上国にかかわりたい、興味があるという学生はぜひ受けてください。ただ、ここで扱っているトピック は日本も含めた世界の課題です。例えばジェンダーという問題に関しては、日本が開発途上国であるとも言えます。先進国も関係する様々な地球規模のトピックを俯瞰的に捉えることができる授業になっていますので、開発途上国という視点でなくても、それを知りたい方や、世界の中の日本という視点で物事を考えてみたい方に役に立つ授業になっています。

(制作:学習院大学広報センター)