【開催報告】理学部 ノーベル賞解説の会『今年のノーベル賞』

10月15日(火)の夕方、理学部教員の有志によるノーベル賞解説の会『今年のノーベル賞』が開かれました。科学関係のノーベル賞の発表後、受賞対象となった研究について専門分野の近い理学部の教員が解説をする会で、2002年からほぼ毎年開催されています。

会の冒頭では、司会をつとめた物理学科の田崎晴明教授が「ノーベル賞をとった業績はどれも偉大だが、偉大な業績が必ずノーベル賞を受けるわけではない」ことを強調し「ノーベル賞を重く考えすぎず、受賞内容について楽しく話を聞く」という会の趣旨を説明しました。続いて、医学・生理学賞について生命科学科の井上武助教、物理学賞について物理学科の井田大輔教授、化学賞について化学科の稲熊宜之教授がそれぞれ解説を行ないました。

(写真)医学・生理学賞について解説する 井上武 助教

医学・生理学賞は細胞の低酸素応答の機構を解明したウイリアム・ケーリン、ピーター・ラトクリフ、グレッグ・セメンザの三名に与えられました。井上助教は今回の賞の鍵となった低酸素誘導因子の発見の歴史からはじめて、その発見が貧血症やガンの治療にどのようにつながっていくかを丁寧に解説しました。会場からは、生物学の基礎から新薬開発の展望にまで及ぶ様々な疑問が出ましたが、大学での教育・研究以外に製薬会社での研究の経験もあるという井上助教は幅広い質問に次々と明快に答えていました。

(写真)物理学賞について解説する 井田大輔 教授

  物理学賞の解説をつとめた井田教授は『今年のノーベル賞』に最も多く登壇している会の立役者です。今回は、三名の受賞者ジェームズ・ピーブルズ、ミシェル・マイヨール、ディディエ・ケローの内、マイヨールとケローによる太陽系外の惑星の発見について、基本となる考え方から決め手となった実際のデータまでを手際よく紹介してくれました。独立に探索を進めて惑星の発見に迫っていたカナダのグループの研究が紹介されると、会場からは複雑なため息が漏れていました。

(写真)化学賞について解説する 稲熊宜之 教授

会の常連の井田教授に対して、化学賞を解説した稲熊教授はこの会で解説するのは初めてとのことでした。無機化学の分野からは数多くの素晴らしい成果が得られているのでノーベル賞が少ないのは驚きです。今年の化学賞は、ご存知のように、リチウムイオン電池の開発に貢献したジョン・B・グッドイナフ、スタンリー・ウィッティンガム、吉野彰の三名に送られました。稲熊教授は以前ウィッティンガム教授と議論したこと、グッドイナフ教授とは共著論文もあることなどにも触れつつ、イオン電池の機構や開発の歴史について詳しく解説しました。会が終わった後も外部から参加してくださった高校の先生たちが稲熊教授を囲んでずっと議論を続けていたのが印象的でした。

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