【受賞】外国語教育研究センター加藤耕義教授が第8回ゲスナー賞「目録・索引」部門で金賞を受賞しました

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外国語教育研究センター 加藤耕義教授が訳したハンス=イェルク・ウター著『国際昔話話型カタログ(日本語版監修:小澤俊夫)』が第8回ゲスナー賞「目録・索引」部門で金賞を受賞し、11月13日(水)パシフィコ横浜アネックスホールで授賞式が行われました。

(授賞式を終え、賞状と『国際昔話話型カタログ』を手に)

受賞した加藤教授のコメント:

このたび、『国際昔話話型カタログ』出版により、著者ハンス=イェルク・ウター博士、訳者加藤耕義、日本語版監修者小澤俊夫筑波大学名誉教授に対しゲスナー賞「目録・索引」部門で金賞が授与されました。この部門で金賞が出たのは14年ぶりだそうです。受賞できたことを心から嬉しくまた光栄に思っております。

2004年に学習院から在外研修の機会をいただき、ドイツはゲッティンゲンのハンス=イェルク・ウター教授のもとで1年間勉強いたしました。ウター教授は『メルヒェン百科事典』編集部にあるご自身の研究室で、先生の前にある机を貸してくださいました。そこでウター先生にアドバイスをいただきながら、研究することができました。ちょうどこの年に先生の『国際昔話話型カタログ』が出版され、同書をサイン入りでいただきました。

研修が終わって、2年ほどたったとき、これを日本でも出版できないものかと思い、以前からご指導いただいている小澤俊夫先生にご相談したところ、小澤昔ばなし研究所で出版しようとおっしゃってくださり、ウター先生に翻訳の許可をいただいて、作業を開始しました。翻訳にはたいへん時間がかかりましたが、小澤先生からは、「大切な仕事だから、あせらなくていいので、いい物をつくりなさい」と言葉をかけていただきました。2011年にまた在外研修の機会をいただいたので、そのときにかなり作業が進み、ようやく出版できたのが2016年のことでした。

この『国際昔話話型カタログ』というのは、もとをたどると、グリム童話集にさかのぼります。グリム兄弟が、それまで価値がないと思われていた民衆に伝わる説話を集め、民衆が伝えたままの形に価値があるということを示したのが1812年の初版第1巻です。

その後、グリム童話を初めとする多くの資料をもとに、フィンランド学派の学者アンティ・アールネ が、昔話を集めて整理することで、その原型や、発生地や、時代、伝播経路がわかるのではないかという地理的・歴史的研究方法を具体化し、1910年にドイツ語で「メルヒェンの型のカタログ」を出版しました。これがこの『国際昔話話型カタログ』のもとになります。これを弟子のスティス・トムソンが1928年と1961年に改訂しました。その後、このカタログがアールネ/トムソンの話型カタログとして、43年間使われてきました。ただこのカタログは、話型記述(筋書き)が不十分であったり、ある昔話がある国でいくつあったということは書かれているものの、その昔話を読もうと思っても、それにたどり着けないケースが多々あるという欠点がありました。それを大幅に改善したのが、ウター教授の『国際昔話話型カタログ』です。今回の改訂によって、話型記述は明確になり、どこの資料にその昔話が書かれているのかが明確に示されました。

この新しいウターのカタログによって、世界の昔話と日本昔話の比較が格段にしやすくなりました。ですから、このカタログがこれからの日本の昔話の国際比較研究に寄与することができれば嬉しく思います。

今回出版できた『国際昔話話型カタログ』はいわゆる基礎的な資料ですので、地味な存在ですが、アールネ以来約100年間にわたる先人達の研究の積み重ねの成果でもあるこの仕事が、ゲスナー賞金賞という形で評価されたことをとても嬉しく思います。

ウター先生、小澤先生、そして、研究の機会をくださった学習院に心より御礼申し上げます。

最後に、受賞の第一報を受けたとき、嬉しくて、ウター教授に報告のメールをしたところ、次のようにお返事をいただきましたので、紹介したいと思います。

親愛なる耕義へ、
たった今PCの前にすわって、君からの嬉しい報告を読んだところです。おめでとう!君が翻訳しているときの色々な質問を今でも覚えています。なので、どれほどの苦労があったか分かります。だから、もう一度、ほんとうに、心よりおめでとう!君の大学も君のことを誇ってくれると思うよ。
心より。
君のハンス

「ゲスナー賞」は、丸善雄松堂が主催する、編纂に膨大な時間と労力が必要とされる目録・書誌づくりにおいて、その著作や研究活動を広く世に知らしめ、優れた作品を顕彰することを使命としたアワードです。数年に一度の頻度で開催されており、今回は5年ぶりの開催でした。
「目録・索引」部門、「本の本」部門、「デジタルによる知の組織化」部門の3部門に今回は国内外から過去最多の338作品の応募があり、計9つの受賞作品が決定しました。
※338作品の内訳は「目録・索引」部門:49点、「本の本」部門:270点、「デジタルによる知の組織化」部門:19点。
なお、「目録・索引」部門での金賞は2005年の第4回以降該当がなく、加藤教授の『国際昔話話型カタログ』は久々の金賞受賞作品となりました。

参考URL(外部サイト):丸善雄松堂ゲスナー賞公式サイト