学長メッセージ 学生の皆様へ:コロナ禍の中から新年度に向けて

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学長メッセージ 学生の皆様へ:コロナ禍の中から新年度に向けて

 これは学生の皆さんへのメッセージです。新年度の授業の実施方針等も含まれますので、学習院大学にこの春入学する皆さんにも読んでいただきたいと思います。

 2020年は大変な1年でした。国内、そして世界の各所で感染はさらに拡大し、先行きが見通せないまま、新しい年を迎えました。さらに首都圏の1都3県に緊急事態宣言が再発令されるという事態となりました。供用の始まったワクチンが感染の拡大に遠からずストップをかけることを期待しつつ、今しばらく頑張って乗り越えて行きましょう。

 はじめにこの1年間を振り返ります。20204月に例年通りに授業を始めることはできませんでした。COVID-19がいかなるものか判らないまま、通常の授業を行うことはできなかったのです。3-4月の間に遠隔授業の準備を進め、5月半ばから始めた授業はすべて遠隔方式としました。学期が進む中で、「対面授業を再開してほしい」、「感染が怖いので遠隔授業を続けてほしい」と言う相対立する声が聞こえてきました。対面授業をどのような形でどのくらい再開していくかは難しい問題でした。原則は学生諸君の感染の危険を抑えることでした。これは大学が感染拡大の原因にならないようにすると言う社会的責任にもつながります。感染状況を睨みながら、はじめは卒業研究等、次に大学の施設・設備を使わなければならない実験・実習、さらに少人数の講義科目と徐々に対面授業を拡大していく努力・工夫をしながら、科目数にして17%を対面形式に戻して現在に至っています。

 この間、11月末までの本学学生の感染者累計は、入構していない人も総て含めて5名でした。その後、国内の感染者の急増に同期して12月末までに新たに12名の陽性者が確認されました。今後も増えていくことは避けられないと思います。本学学生の感染者はいずれも学外で感染したと思われ、ウイルスが学内で拡散して、学生の間に感染が拡まるということは起きていません。遠隔授業を継続したことと、第2学期になって再開した対面授業でも、入念な感染防止対策をとったことが役に立ったのでしょう。課外活動の制限にもよく耐えてもらっていると思います。感染防止策を施し、無用の集まりはしないなどの条件の下で活動制限を緩和しましたが、課外活動の場でのクラスターの発生は起きていません。人口が約1400万人の東京都の感染者累計が12月末で6万人に達していることを考えると、在籍者数約9500人の本学の感染者数の比率は世間の半分以下です。遠隔授業は感染の拡大の防止に一定の効果があったと判断しています。そのような形で授業を行うことに対し忍耐心を示し協力してくれた学生諸君に感謝します。また学生諸君が学外にあっても、感染しない、かつ感染を拡めない生活・行動を実践してくれたことにも深く感謝します。

 この1年の間に、我々はCOVID-19にどのように対処すれば良いか、かなりのことを学びました。面と向かって喋ることが、おそらく最も効率的にウイルスを拡散するようです。人が集まっていても、例えば教室の中でも、発話しなければ感染する確率はかなり低そうです。面と向かって議論を交わすこと、あるいは冗談を言い合いながら談笑することができないのは、大変寂しいことですが、仕方がないでしょう。対面での会話をどの程度に抑えれば良いのかなど、まだ明確でないことはありますが、これまでに得た知見を基として、対面授業の実施方法や大学構内での活動の仕方を検討いたします。

 新型コロナ禍が大学にもたらした大きな変化は、IT環境の格段の充実と教員の遠隔授業技術の修得です。これまでも、IT環境の整備と授業への導入は計画的に進めてきました。新型コロナ禍の中で遠隔授業を実施するために、経済的にも労力的にもかなり無理をしてその作業を加速し、短期間の内にIT環境を実用的なレベルに整備しました。また、教員も必要に迫られて遠隔授業の手法を学習し、その利点と可能性は教員の間で共有されました。

 大学の学びの場をこれから再構築するために、二つの視点が必要です。一つは、このような疫病の蔓延のもとでも、勉学・研究の場としての機能が止まらないようなシステムを持つことです。残念ながら、新型コロナ禍の終息はまだ先のことになりそうですし、将来、別のウイルスに脅かされる可能性もありますので、この点を忘れることはできません。もう一つは、IT環境の積極的利用です。新型コロナ禍を契機に充実したIT環境を構築したことと、その利用方法を我々が修得したことは奇貨とすべきでしょう。積極的にITを利用した新しい教育システムを開発することが可能となりました。新型コロナ禍が終息し日常の行動制限がなくなったとしても、大学の授業が完全に旧態と同じように戻ることはないでしょう。しばらくは、大学全体のシステムに関して、また個々の教員と学生諸君との間で試行錯誤が続くと思いますが、新しい教育システムのスタンダードの実現を目指していきます。

 前置きが長くなりましたが、これらの考え方を基に、2021年度の授業実施方針を定めました。

 まずは、学内の人口密度を下げるため、対面授業に出席する学生数が総学生数の半数(約4,500名)を超えないように、開講数を制限して対面授業を実施します。具体的には、履修者の多い講義科目は遠隔授業とし、履修者数が100名未満の講義の内、科目数の半数を上限として対面形式で実施する科目を選びます。これらの授業に出席する学生の数は多い時で3,000名と想定され、4,500名にはまだかなりの余裕があります。原則として遠隔授業であっても、その一部を対面授業で補うことは効果的ですので、それぞれの科目で適宜日時を指定して、前述の余裕の中で対面の授業を行うことにします。遠隔授業は、2020年度と同様に同時配信型とオンデマンド型として開講します。言うまでもなく、対面授業、同時配信型の遠隔授業、オンデマンド型の遠隔授業、それぞれに長所短所があります。科目の特性に合わせてそれぞれの教員が学部・学科の中で検討して、最適な授業方式を選択します。なお、対面授業と同時配信型の遠隔授業が併存すると、対面授業の前後に同時配信型の授業があるとき、それを視聴する場所の確保が問題になります。その解決策として2020年度はWiFi受信可能な教室をいくつか開放してその場所に充てました。2021年度は、対面授業が増え遠隔授業が減ることになりますが、学内での遠隔授業の視聴に支障のないように、教室数・座席数を調整します。

 教室の消毒、換気などに注意を払えば、授業中に感染が拡がる可能性は、それが感染拡大の原因にならない程度まで小さくできると考えていますが、心配なのは、休み時間、昼休み、放課後です。危ないのは、面と向かって会話することだとすでに申し上げました。みなさんに「大学に来ても友達とお喋りするな」とお願いするのが大変残酷なことであることは承知しています。しかし、自身と社会の安全のために、学内外での友人との会話は最小限とし、集会や会食は控えていただくようお願いします。

 最後に根本的なところに話を戻します。大学での学びとは何か、あらためて確認してください。皆さんの多くは高校まで「勉強させられていた」感を強く持っていたと思います。定期的な試験や、大学入試がその後押しをしていたはずです。大学は、それぞれの学生が学びたいことを主体的に学ぶところです。受け身ではいけません。何を学ぶかは自分が決めるのです。「自主的に学ぶのであれば講義なぞ聴かなくても良い」と言う先生も昔はいたかもしれませんが、今そのような発言をするのは時代錯誤でしょう。現在の大学の講義の目的の一つは、これが最も重要とも思いますが、学生諸君の興味を喚起し学びの方向を見つけてもらうことです。そこがうまくいけば、あとは皆さんの能動的な学びが始まるでしょう。皆さんの能動的な学びが始まれば、教員の次の役割は、その疑問・興味に応えることです。

 みなさんが学びに主体的にかかわるのであれば、授業の形式が対面であるか遠隔であるかは、それほど大きな問題ではないと思います。みなさんの要求に応えられる内容であることが大事で、それを用意するのが教員の仕事になります。そのためには、教員と学生のコミュニケーションが不可欠です。その機会を確保するために、質問・相談を受けるオフィスアワーを設けていますが、時間的・空間的に制限されるというきらいがあります。IT環境の利用は、一部で対面コミュニケーションの即時性・親密性を欠くこともありますが、時間・空間の制限を取り払ったと言う点では大きな進歩です。IT環境を媒体とするネットワークの量的・質的発展は、教員と学生のコミュニケーションの敷居を下げたと言えます。

 授業形態とコミュニケーションの手段が多様になることによって、学び方の選択肢が増えたと思います。是非それぞれの長所を積極的に活用して、主体的な学びの道を歩んでください。新年度からの皆さんの活躍を期待します。

学習院大学長 荒川 一郎