【トピックス】研究インタビュー:学長表彰受賞に寄せて(自然科学研究科物理学専攻博士前期課程2年 西坂研究室 綾野未来さん)

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 3月17日、学長室にて学生表彰式が開催され、学習院大学大学院自然科学研究科物理学専攻博士前期課程2年 綾野未来さんに、荒川一郎学長より賞状と副賞が授与されました。

受賞理由:
 理学部物理学科西坂崇之研究室において、生物学的製剤の調整に欠かせないウイルス除去フィルターの仕組みを解明する研究に取組み、ウイルス様粒子フィルターの膜に捉えられる瞬間を世界で初めて可視化し、その成果を英国の学術誌 Scientific Reports に筆頭著者として発表したこと。

授賞式の後に、荒川一郎学長および指導教授である物理学科西坂崇之教授の同席のもと、綾野さんに受賞理由である研究に関することや、学生生活についてインタビュー取材を行いました。(企画・制作:広報センター)

――学長表彰の受賞おめでとうございます。お気持ちをお聞かせください。

 4年生から3年間の研究成果を論文という形にまとめて、学長表彰という賞をいいただくことができてうれしく思っています。西坂先生はじめ、共同研究をさせていただいた旭化成メディカルの皆さま、関係する皆さまにサポートしていただけて結果が得られたものです。この場を借りて皆さまに感謝いたします。ありがとうございます。

ウイルス除去フィルターPlanova™(プラノバ)を前にインタビューに応える綾野さん
※Planova™は旭化成メディカル様より学長表彰のために一時的にお貸しいただいたものです。

――受賞理由である研究内容について教えてください。

 私の研究では、生物学的製剤という人の細胞や血液から作られる医薬品の製造過程で使われているウイルス除去フィルターを扱いました。このフィルターは世界中で使われているのですが、実際にウイルスが除去される原理は詳しくわかっていませんでした。
 その過程を明らかにするために、西坂研究室で開発している独自の顕微鏡を使って、ウイルス除去フィルターの中でろ過されるウイルスの動きや、その詳しい捕捉過程を観察しました。これまでにも、ウイルス除去フィルターの原理解明に向け、数多くの研究がされてきたのですが、目に見える形でその様子を明らかにすることは、いままで世界中で誰もやっていなかったものです。研究では実際のウイルスではなく、遺伝子を抜いたウイルス様粒子というモデル粒子を使い、それがフィルター内を動く様子を世界で初めて動的な画像(5分おきに撮影するタイムラプス動画)として捉えることに成功しました。

参考:
リリース「ウイルス様粒子が中空糸膜に捉えられる瞬間の「動的」画像化に世界で初めて成功」
理学部物理学科西坂研究室紹介動画

――学生生活、研究生活についてお聞きします。まず、ゼミ(西坂研究室)を選んだきっかけは?

 所属する研究室を選ぶ直前まで、4年生で何を研究したいのかを考えながらどの研究室に所属するかを迷っていたのですが、物理学科では大輪講(4年生の必修科目。自らの研究内容に基づき全員の前で発表するもの。所属ゼミを決めるため、3年生の参加が推奨されている。)というイベントがあり、そこで西坂研の発表内容を聞いて面白そうだなと思い、決めました。

参考:
物理学科「大輪講」

――西坂先生はどのような先生でしたか?

質問すると細かく丁寧に相談に乗ってくれる先生でした。教授室も近かったので、割と気軽に相談させていただいていました。

――西坂先生にお聞きします。西坂先生から見て綾野さんはどのような学生でしたでしょうか。

 研究テーマのためにいつも頭と手を動かしている、研究に真摯な学生だったと思います。それに綾野さんは自分の頭できちんと考えられる人でした。研究を進める上でも、綾野さん自身が設定した一つ一つの目標について、それらを達成するために私が技術的にサポートをすることが主でした。研究室では、多くの学生が教員に「ゴール」や「正解」をすぐに求めてしまいがちです。でも指導教授は、研究に関する経験や知識が豊富なのだから、彼らの夢を実現に近づけるのが役割のはずですよね。一緒に正解を探すことができるんです。綾野さんとの3年間は、学生自身が考えたことを私が手伝って進めることのできた、理想的なものだったと思います。

――荒川先生にお聞きします。荒川先生も理学部物理学科で長く指導をされていますが、成果を出す学生に共通する特徴を感じたことはあるでしょうか。

 いろいろなタイプの学生がいますが、研究に対して自分の考えで進められる学生は伸びていく印象があります。もちろん自分の考えだけだと脱線することもありますから、そういう時に軌道修正をしますが、あれやれこれやれと言わなくてもやる学生は頼もしいです。そういう学生はいろいろなアイデアも出してきますし、結果も出している印象です。

――綾野さんの学部4年生から3年間の研究生活を振り返って印象的だったことなどを教えてください。

 一番は、4年生から旭化成メディカル様との共同研究に携わらせていただいたことで、普通では(共同研究でないと)経験できないことを経験させていただけたことが良かったです。学外の研究者の方と定期的にディスカッションをしたり、研究テーマであるウイルス除去フィルターを作っている宮崎県の延岡工場に訪問し、発表させていただいたりしたことなどは思い出として残っています。
 学外の研究者と関わることで、研究に対しての責任もより感じましたし、進めるうえでのモチベーションにもなりました。

 大変だったのは、実験系(仮説を実証するための実験装置)を立ち上げることでした。いろいろ改良を加えながら実験系が立ち上がったのが学部4年生の最後のほうだったと思います。そこから実験・観察が始まるのですが、当初はサンプル(不活化されたウイルス)が充分ではありませんでした。西坂先生の伝手で、当時世界で初めてウイルス様粒子の販売を始めたアメリカのベンチャーから、発注のメールから税関を通すなどの事務手続きも自分で行って購入したのですが、取り寄せた試料にはウイルス様粒子以外のものも混ざっていて、そのままでは使えませんでした。そこで、そのサンプルをきれいにするための機器をまた用意していただき調整をするのも大変でした。

 十分な精度の観察ができる実験系が立ち上がって、試料の調整ができて、すべての条件がそろった状態で、フィルター内でのウイルス様粒子の動きを初めてとらえたのが博士前期課程1年の夏ごろでした。

――理学部・自然科学研究科の良かったところを教えてください。

 研究がハイレベルなことが良かったです。また、少人数で学生に対して教員の人数が多く、手厚い指導を受けられるところが良いところでした。

――最後に、これから研究に携わる後輩たちにアドバイスをお願いします。

 今、目の前にあるものを一つ一つ真剣に取り組むことが大切だと思います。また、研究活動では、自分ひとりだけでは進むことはできませんので、周りの先生方、先輩方に、自分から相談をすることが大事だと思います。ただし、ただ何も考えずに、ただ教えてもらうのではなく、自分の考えを持ったうえで相談したりディスカッションしたりするようにしないといけないと思います。そうすれば周りの人のサポートはより充実したものになって、実りある研究生活につながると思います。

――西坂先生から綾野さんへメッセージを

 修士の在学中に、論文までまとめ上げて成果発表を出したのは、私の研究室では初めてでした。生物物理学は、実験系を作る、機器の使い方に習熟する、サンプルを調製する、それらをまとめて論文にするのに5年や10年もかかるのが当たり前の分野です。それを3年という期間で成果発表まで行ったのは、ひとえに綾野さんの研究への情熱の賜物だったと思います。こういった世界初の研究に、指導教授として関われたこと、綾野さんに感謝しています。学長表彰と、そしてご卒業、本当におめでとうございます。

左から荒川一郎学長、綾野未来さん、西坂崇之教授 (※一時的にマスクを外して撮影しています。)