2017.11.07 Tue

手話サークル"のぞみ"

手話があふれる社会を目指して~魅力を広く伝えるために~「手話サークルのぞみ」インタビュー

手話があふれる社会を目指して~魅力を広く伝えるために~「手話サークルのぞみ」インタビュー

「手話」と聞くとどうしても身構えてしまいがちですが、「手話は誰にでもできる、魅力的な言語」と話す今井さんと佐藤さん。「手話を広めるために尽力したい」と、独自に工夫を凝らし、さまざまな取り組みをされているそう。これを読めば手話のイメージが180度変わるかも......?

左:経済学部経営学科3年 今井佑哉さん 右:文学部史学科3年 佐藤圭さん

左:経済学部経営学科3年 今井佑哉さん
右:文学部史学科3年 佐藤圭さん

手話を通じて感じた、新しい世界に触れる喜び

入部したきっかけについて教えてください。

左:経済学部経営学科3年 今井佑哉さん 右:文学部史学科3年 佐藤圭さん

今井:数年前にマンガの『聲の形』が流行っていて、友達から勧められて読んだ時にはあまり興味を持てなかったのですが、新歓で勧誘されて部室に行ってみたら、先輩たちの雰囲気がとてもよくて、入ろうと決意しました。

佐藤:私は、高校生の時に手話関連のマンガを読んで手話に興味を持ちました。また、サークルの雰囲気がとてもよかったので、それが入部の決め手になりましたね。

普段はどんな活動をされているのでしょうか。

今井佑哉さん

今井:サークル内にある学習指導部という部署に僕らふたりとも属しているのですが、活動時に手話を教えています。たとえば手話辞典から取った手話のイラストを貼り付けたプリントを配って、単語だけの手話を1回で15~23個ぐらい教えて、それを使った例文で問題を解いたり、手話での伝言ゲームや手話を取り入れた遊びみたいなものをやっていますね。
 
佐藤:手話技能検定という英検のような検定があるのですが、その中で一番簡単な6級の「おはよう」などの挨拶や色の名前など、ジェスチャーみたいな手話が多いので、わかりやすいものから説明していっています。

1回でかなりの数を覚えるのですね!始めたばかりの頃は戸惑うことなどなかったのですか?

今井:「大変だぞ」というよりは、新しいことを始めてウキウキしていましたね。中学生の時に初めて英語を覚えて「俺、かっこいい!」みたいな、単純な気持ちでした。

佐藤:私も楽しかったですね。

語源を知ることでぐっと覚えやすく

全くの初心者からすると、それだけの数の単語を覚えられるか少し不安なのですが......。

助けるの手話

「助ける」

助けられるの手話

「助けられる」

今井:これが『助ける』(写真 左)という手話なのですが、向かい合って教えているとわかりづらいので、「右手はパーで左手は親指だけ出して押す、横にするとこんな感じね」と説明しながら角度を変えて見せたり、「左手が相手を指していて、それを右手で手助けする、そこから『助ける』という手話になっていて、その逆で右手が自分だとして、今度は自分のほうに押されている、これは『助けられる』(写真 右)という手話になるからね」という感じで、語源や自分なりの覚え方を積極的に伝えています。

なるほど!語源を知ると格段に覚えやすくなりますね。

手話の講習風景

今井:そうなんです。「学習する時は極力語源を覚えておくように」と後輩には伝えています。

佐藤:プリントに描いてある手話の絵を見てもらい、なおかつみんなの前で2、3年生が実際に手話をやってみせて、意味や語源などをメモしてもらうなど、インプットしやすいように工夫をしています。

さきほど手話技能検定というお話がでましたが、資格を取られている部員の方も多いのですか?

今井:サークルを通じて1年間ちゃんと勉強すれば3級は取得することができるので、今の2、3年生はほぼ全員取っていますね。いろんな場所で使える実用的な手話というのは簡単なものが多いので、1500単語ぐらいは1年でほぼ頭の中にすっと入ってくる状態になっています。

コツをつかめばそのくらい覚えられるようになるのですね。手話は難しいというイメージがありました。

手話の練習風景

手話の練習風景

今井:他の言語、たとえば英語やフランス語よりは断然簡単だと思います。手を使ったりと動きがある形なので、語源を覚えながら手をずっと動かしていれば慣れてくるというのもありますし、みんなが知っているような、親指を立てて『男』、小指を立てて『女』だったり、両手で親指と人差し指を立てて横に広げたら『人々』、それを輪のように広げると人々がまわりにいるから『社会』というふうに、つながってくる単語がたくさんあるんですよ。手首の脈に手を当てたあとに親指を立てるか小指を立てるかで『医者』とか『女医』という手話になったり、「なるほど、だからか」と納得できるものばかりなのでとても簡単ですし、それが魅力でもあると思います。

「通じた!」という喜びがさらなる原動力に

ひとつの手話から関連してどんどん覚えていけそうですね。実際にろう者さんと交流できる機会はあるのでしょうか。

今井:月1回、ろう者の切手収集家の方々が活動をしている「切手クラブ」という集まりに参加したり、他の大学からお呼ばれして交流することも何度かありますし、自分から輪を広げていくことも可能です。

初めてろう者さんと交流した時はどう感じましたか?

今井佑哉さん

「手話」

今井佑哉さん

「I love you!」

今井:まるで理解できなかったですね。「切手クラブ」で活動されている方は高齢者の方々で、ずっと手話を使っている方々だったので会話の速度が速いんです。正直3年間やっていてもまだまだわからないことが多いので、最初は面食らってしまいました。今年の春に手話教室に通ったのですが、先生がろう者の方で、手話で質問した時に答えてくださったり、先生の手話の内容がわかったりする時は「やっと通じたんだ」とうれしくなりましたね。
 
佐藤:私は会長よりもスキルが少し低いのですが(笑)、簡単な会話だったら通じることもあって、読み取るのは大変なのですが、こちらの表現は逆にろう者さんがうまく汲み取ってくださるので、そこはとてもありがたいなと思いました。

本当のコミュニケーションとは......?

手話を始めてから、自分自身変わったと感じることはありますか?

練習風景

練習風景

今井:どうしたら相手にうまく伝わるのかな、後輩がどうやったらわかってくれるかな、喜んでくれるかな、楽しくやってくれるかなと、今までよりもさらに誰かのために努力しようということを人一倍考えるようになりました。適当にやるとその気持ちすら態度に出てしまうので、手話は正確にやらなくてはいけないとか、ろう者の方と話すと口も動かしたりするのですが、なぜそれが大事なのかを考えるようになったり......。本当の意味で人を理解したり、人を助けるということはとても難しいことなのだな、というのを改めて実感しました。口以外のものだけですべてを表現するって、簡単なようで難しかったりするんですよね。

言葉を話す者同士でもなかなかわかり合えないのに、音のない世界でコミュニケーションを取るのはなおさら難しそうですね。

佐藤:そうですね。伝言ゲームをときどきやるのですが、手話を使って伝言というのがかなり大変で、簡単なお題でも一番最後の人に来る頃には違うものに変わっていることが結構起きてしまうので、音なしでのコミュニケーションの難しさを身にしみて実感しています。

手話が日常にあふれる社会を目指して

おふたりとも真摯に手話に向き合っていらっしゃるようですが、今後の活動について目標はありますか?

左:経済学部経営学科3年 今井佑哉さん 右:文学部史学科3年 佐藤圭さん

今井:サークルに入ってから『聲の形』を改めて全部読んで思ったことなのですが、主人公やまわりの生徒たちがろう者の女の子と普通に会話して友達になっていく過程が描かれていて、現実でも同世代でろう者の友達ができて、何気なく手話で話して、ということができるようになれば、と。手話はまだまだマイナーな言語ではあるのですが、簡単なものなら小学生でもできるものが多くあるので、そういう社会がもっと当たり前になってくれれば、そしてそのために何かひとつでもお手伝いができれば、と思っています。

佐藤:やはり手話は少し堅いイメージがあるので、ゲームや学習会など工夫をして、もっと入口を広げたいですね。誰でも気軽に手話に触れられる機会をどんどん増やしていけたらいいなと思います。

気軽に会話に触れてみてほしい

確かに手話やボランティアというと身構えてしまうようなイメージがありますが、和気あいあいと活動されているようですね。

手話の講習風景

佐藤:はい。ゆるいサークルなので普段の活動も基本的に参加は自由で、忙しい時は無理して行かなくても大丈夫ですし、気軽に交流できるような雰囲気で活動しています。

実際にお話を聞いて私自身も手話に興味が湧いてきましたし、新入生の方にもぜひ関心を持ってもらいたいですね。

集合写真

今井:はい。新しいことを始めたい方にはもちろん、もし手話という言葉を聞いてピンときたら、高い志がなくてもかまわないですし、気軽に部室に来てもらえたらうれしいですね。
 
佐藤:いつでも安心できる、ほっこりした雰囲気のサークルですし、部員もみんな優しい人たちばかりなので、手話に自信がなくても、少しでも興味があったらぜひ来てほしいなと思います。