2019.10.24 Thu

観世会部

一生かけて追求したいと思える、能。学べるのは芸能だけじゃない。~観世会(かんぜかい)部~

一生かけて追求したいと思える、能。学べるのは芸能だけじゃない。~観世会(かんぜかい)部~

後列中央:新井英莉さん(2018年度 委員長)文学部哲学科4年

日本の伝統芸能、能を研究・発表する観世会部。年に一度行われる能楽コンクールでも9年連続で入賞を果たし、観世会部が創設されている大学の中では上位入賞の常連校。2019年には創部70周年を迎え、OB・OGの中にはキャリア20年、30年という先輩方も珍しくない。もしかしたら"一生モノ"になるかもしれない、伝統芸能の世界に挑戦してみよう。

知れば知るほどおもしろい、"和製ミュージカル"「能」

このサークルに入ったきっかけを教えてください。

練習風景

中学・高校時代は弦楽部でバイオリンを弾いていましたが、大学では新しいことに挑戦したいと考えていました。私は学部で西洋美術史を学んでいるので、課外活動では日本の古典について学びたいという気持ちがありました。そこで古典芸能のサークルを中心に見学し、観世会部は先輩方が稽古に真面目に取り組みながらも楽しそうで、とても雰囲気が良くて、私も4年間こんな雰囲気の中で過ごしたいと思い入部しました。

観世流の能とはどんなものなのか、教えてください。

舞台

舞台

簡単にいうと、"和製ミュージカル"です。「シテ」と呼ばれる主人公と「ワキ」と呼ばれる相手役を中心に舞い、すべてのセリフが「謡(うたい)」で表現されます。この「謡」が、独特の調子で、和歌からの引用も多いので最初はわかりづらいかもしれませんが、話の流れがわかってくるととても楽しめますよ。

「能」はどんなところがおもしろいですか?

練習風景

練習風景

演じる側のおもしろい点は、「正解がない」というところです。主人公「シテ」を演じるときは、原本を読んで自分なりの解釈をして舞うようにしていますが、同じ演目を舞うのでも人によっては「厳かに重々しく」する人、「晴れやかにさっぱりと」する人がいます。師事している先生によっても違いますし、どれが正解ということもないので、自由にできるところに魅力を感じます。

初心者でもついていけるでしょうか。

もちろん初心者でも心配ありません!今在籍している部員全員が未経験者でした。 入部後1ヶ月は仮入部期間として基本の作法を学び、簡単な型を覚えてつなげるということから始めます。少人数のサークルなので、マンツーマンでの指導ができるのが強みです。1ヶ月後に道場で部内発表会を行い、それをもって晴れて正式に入部となります。その頃には足袋にも慣れてきます。

練習風景

練習風景

"舞台に立つ"という経験を通して、成長を実感

普段の活動内容について教えてください。

練習風景

練習風景

扇を持ち舞う「仕舞(しまい)」と、本を見ながら大きな声を出して歌う「謡」のふたつを主に練習しています。上級生が、下級生と2人1組になり教えています。動き回って、腹式呼吸で声を出すのでなかなかの運動量なんですよ。2時間の稽古の後はみんなお腹が空いたと言って、部室に戻ってお菓子を食べたりします(笑)。部室が居心地がよいのか、空き時間やお昼の時間に自然に集まることも多いです。

年間を通して舞台に立つ機会も多いようですね。

舞台

現在は年に6回、公演を行っています。単純に計算すると4年間で20演目を経験することになります。1年生ならこれ、3年生ならこれ、と演目ごとにレベルの目安があり、その中から希望のものを話し合いで決めるようにしています。中でも大きな舞台は、夏の「全国学生能楽コンクール」と、12月末に行われる学習院大学観世会部主催の公演「櫻諷会(おうふうかい)」です。

夏のコンクールでは、9年連続で入賞されているとか。

コンクールには5人が出場します。選抜メンバーになりますが、それほど人数のいるサークルではないので、3、4年生だけが出場するというわけでもありません。私も2年生の時に初めて出場し、最優秀賞をいただくことができました。コンクール前の稽古は、やはり熱が入りますね。

コンクールや舞台を通して、とくに印象に残っている経験はありますか?

「屋島」で源義経が戦う場面

「屋島」で源義経が戦う場面

2年生の夏のコンクールはひとつのターニングポイントになりました。4年生の先輩方やOB・OGの方からの指導を通して能の奥深さを知り、練習するうちに学習院大学を代表するメンバーの一人なんだという自覚をもつようにもなりました。本番はさすがに足が震えましたが、最優秀賞に輝くことができ、とても嬉しかったです。今でも能をやっていて一番気持ちいいなと思うのは、舞台を降りる瞬間です。「役」から普段の「自分」に戻る瞬間、"舞台上のことが夢だったのでは"と思えるくらい役に入り込めた時は本当に充実感を感じます。

OB・OGや他大学とのつながりも深く、"一生モノ"になる可能性も

プロの能楽師の方に師事されているんですよね。

舞台練習

能楽師の今井泰介先生に師事しています。舞台の前の2〜3回は先生のお宅にある舞台をお借りして練習の成果を見ていただきます。OB・OGの方々が、コンクールや大きな舞台の前に教えに来てくださることも少なくありません。指導は厳しいこともありますが、その分ぐっと成長できる実感もあります。
また、時々プロの舞台を観覧しに行くこともあります。そこで「あの役をああいう風に表現するのはかっこいいな」「次はあの演目を演じてみたい」という思いが生まれることもたくさんあります。

先生やOB・OGの舞台、指導は刺激になりそうですね。

稽古風景

私たち学生が教えるときは「手首をこう曲げて」「顔をもっと前に出して」と、どうしても動きだけを注意してしまいがちなんですが、OB・OGの方は「こういう気持ちで」「あそこに海が広がってると思って」と、感情の表現・役への成りきり方を指導して下さいます。私も最近は、後輩に対して"演じる"ということについて考えるような指導を心がけるようになりました。決まり切った型を覚えて動くだけでなく「今回の舞台はこうしたい」と、部員同士で話し合いながら変えていくこともあります。

社会人の方、外部の方々と接する機会が多そうですね。

先生やOB・OGの方と接するのはとても楽しいです。はじめは緊張しましたが、今では部活以外のことも話すようになり距離が近くなりました。もちろん稽古中の作法には厳しいですが、お茶の出し方、おもてなしの仕方など、社会人になっても役に立つことを多く学べます。
また他大学の観世会部とも、年に2回共同で舞台を主催することで密な交流があります。互いの主催する舞台にゲスト出演することもあります。同じ演目でも人によって演じ方が全く違うことがあり、毎回とても勉強になります。

卒業後も長く続けていけるのも魅力のひとつでしょうか。

寄せ書き

最初にお伝えしたように、能は正解がないところが魅力なんです。終わりもなく、まだまだ学ぶことが多いなと感じています。それに老人の役など、年齢を重ねて初めて味が出てくる役もあると思います。所作が上手い・下手という単純なものではなく、内面が演技の魅力として出てくるのではないかと感じることも多々あります。卒業後もできる限り続けていきたいと思っています。

創部70周年の大舞台に向けて、ますます稽古に精進

観世会部として、今後目標にしていることはありますか?

2019年は創部70周年にあたる節目として、12月末にGINZA SIXにある観世能楽堂で大々的な舞台を行う予定です。それに向けて、一回一回のお稽古を大切にしています。私は次の3月で卒業してしまいますが、その舞台にはOGとして関われたらいいなと考えています。

最後に、高校生や新入生へメッセージをお願いします。

集合写真

部員は練習の時は真剣そのものですが、休憩時や練習後は和気あいあいと部室でおしゃべりしています。活動がない日でもよく部室に集まって一緒にお昼ご飯を食べたり、普段から仲が良いです。新入生に限らず入部はいつでも歓迎ですので、ぜひ一度見にきてみてください!