2025.08.07 Thu
令和7年度運動部フレッシュマンキャンプを開催

2025年6月28日(土)、学習院創立百周年記念会館にて「令和7年度運動部フレッシュマンキャンプ」が開催されました。運動部に所属する1年生を対象に"運動部に所属する上で必要な心構えや姿勢を学ぶこと"、"横のつながりを深めること"を目的として開催している学校行事であり、企画・運営は運動部常任委員会の学生が担当しています。今回は2024年のパリオリンピックで柔道女子48kg級の金メダルに輝いた角田夏実選手がスペシャルゲストとして登場し、投げ技の実演と講演のほか、質問コーナーでは学生から寄せられた多くの質問にお答えいただきました。後半は体育館に移動し、学生同士が交流を深めるレクリエーションが行われ大玉送りとビンゴゲームで盛り上がりました。
プログラム
― 前半の部 ―
■学生センター所長の挨拶と卒業生によるご講演
・学生センター 椋 寛 所長挨拶
・硬式野球部OB 芦田泰志さんご講演
■運動部の年間行事予定の紹介
■角田夏実選手による実演・講演・質問コーナー
■講評 スポーツ・健康科学センター 羽田 雄一所長
■運動部常任委員会新規募集説明会
― 後半の部 ―
■体育館でのレクリエーション
■運動部常任委員会の学生より
学生センター所長の挨拶と卒業生によるご講演
学生センター所長・椋 寛先生(経済学部教授)
学生センター所長の椋先生より、運動部の学生が意識すべきことについてお話がありました。
「運動部で活動する皆さんの姿勢は素晴らしいと思います。ただし、自分は特別なのだという驕りは禁物ですし、学業も疎かにしてはいけません。また、各部特有の"ノリ"によって不適切な行動に気づけないケースもありますので、どうか自らを律していただければと思います。皆さんの活動は多くの方々に支えられて成り立っています。感謝の気持ちを忘れることなく、実りある活動にしてくれることを願っています。」
硬式野球部OB・芦田泰志さん
大学4年間は硬式野球部に所属し、運動部常任委員会の運営局長としても尽力した芦田泰志さん(法学部法学科卒業)にご講演をいただきました。「体育会で過ごす4年間が、人生で何をつくるのか」というテーマで運動部の規律や心構えについて熱く語ってくださいました。
「人生の成果は『熱意×能力×考え方』。体育会では、この3要素すべてが磨かれるはずです。大学生活は人生の土台を作る時間です。"当たり前"を徹底できる人が社会でも信頼され、『素直さ』『向上心』『主体性』が成長を加速させると考えます。大切なのは、あるべき姿(be)から逆算して取るべき行動(do)を考え、結果が得られる(have)という"be do have"の流れです。"全盛期は常に未来にある"と考え、あるべき姿(be)やゴール(G)を設定した『G-PDCAサイクル』を回していってくれることを期待しています。」
柔道女子48kg級 角田夏実選手による実演・講演・質問コーナー
次にご講演いただいたのは、柔道女子の角田夏実選手。千葉県八千代市出身で、現在はSBC湘南美容クリニックに所属する柔道家です。2024年のパリオリンピックでは、女子48kg級で金メダルを獲得。世界柔道選手権女子48㎏級では3連覇(2021年~2023年)、国内の主要大会でも複数回優勝を果たしてきた日本柔道界のトップ選手です。そんな角田選手による柔道の実演と講演が行われ、質問コーナーでは学習院大学の"広報大使"である「さくまサン」も登場しました。まずは、学習院大学の柔道部員を相手に、得意技である巴投げの実演。金メダリストの技を間近で見られる貴重な機会となりました。
柔道部員は口を揃えて「さすがオリンピアン。豪快ながらも投げが非常に上手で、痛みをまったく感じませんでした」と感想を述べました。実演後は角田選手と柔道部員で記念撮影。記念撮影をより特別な思い出にしてほしいとの思いから、角田選手はパリオリンピックで獲得した金メダルも持参してくださり、「これからもぜひ柔道を続けてほしい」と温かい言葉を添えてくださいました。その後、サンボマスターの人気曲『できっこないを やらなくちゃ』が流れる中、角田選手の紹介動画を視聴し、講演がスタートしました。
角田選手は、小学校2年生で柔道を始められました。中学時代には県大会で優勝したものの、全国大会では1回戦敗退など、なかなか秀でた成績を収めることができませんでした。大学進学時には柔道を続ける意欲が持てず、東京学芸大学への推薦を受けて入学したものの、本気になれない日々が続きました。しかし、大学で出会った「柔術」に興味を持ち、勝てるようになったことで自信を深め、3年次には全日本学生体重別女子52kg級で優勝を果たしました。
その後、48kg級へ階級を変更しましたが、オリンピック出場は叶わず、一時は引退も考えたといいます。しかし、48kg級の日本代表2番手として出場した世界選手権で初優勝を飾り、その後2023年まで世界選手権で3連覇を達成しました。その背景には、階級変更後に徹底したリスク管理と準備を行い、物事が順調に進むよう環境や体制を整えた努力がありました。角田選手は、相手の強みや自分の不安要素をすべて書き出し、練習で一つずつ克服することで、自信を持って試合に臨む姿勢を築いていったそうです。
最後に紹介されたのは、「マスターマインド」という哲学用語でした。これは「人に助けを求め、力を借り、お互いの知恵と努力を組み合わせることで、個人の力では達成できないことを成し遂げる」という意味であり、角田選手の柔道人生を象徴する言葉だといいます。
講演の締めくくりに、角田選手は柔道の創設者であり師範である加納治五郎先生の遺訓「己を完成し、世を補益する」を引用し、「私は皆さんに支えられて金メダルを獲得することができました。今後は、自分の経験や工夫を多くの方々にお伝えしていきたいと考えています」と語られました。
講演後は質問コーナー。質問内容は、事前に学生から集められたものを運動部常任委員会がピックアップ。「さくまサン」も角田選手に質問しました。ここでは一部を抜粋して紹介します。
Q.試合前で緊張しているときは、どうやってリラックスしますか?
角田さん 試合前は緊張しますが、「全部やりきった。これで負けても仕方ない」という状況を作って試合に臨みますので、試合前は"気持ちいい緊張感"です。今日の講演はとても緊張しましたが、こういうときは人と話してリラックスしたり、音楽を聴いたりもします。音楽は試合前にも聴いて集中力を高めますし、試合前には試合後の楽しいことを思い浮かべることもあります。
Q.監督や先輩と意見が合わないときはどうしますか?
角田さん 自分が納得できないことをしていても伸びませんので、「私はこう思いますが、監督はどう思いますか」と話し合います。自分の意見だけではなく、複数の意見が混ざることで新しい考えが生まれますので、周囲の意見をシャットアウトするのではなく、自分の意見を持った上で話し合ってほしいです。
Q.夢や目標を維持するために意識していることはありますか?
角田さん 夢が遠い先にあるとくじけてしまうことが多いので、小さい目標を持って階段を一段ずつ登るように日々を過ごすようにしています。そのとき、一人で突っ走ろうとすると心身が疲れて限界も来ますので、一緒に夢や目標に向かって頑張ってくれる人を見つけると、その人のためにも頑張れますし、「この人が頑張っているから私も頑張らなきゃ」というモチベーションにもつながります。
Q.最後に学習院大学の学生に向けて一言お願いします。
角田さん 私が金メダルを取れたことや、今ここに立って話をしていることは、オリンピック前には考えられなかったことです。目標や夢に向かって諦めなければ何かが起きるということを身をもって感じました。日々自分の心に正直に、いろいろなことに挑戦して、失敗を恐れずに生活していってほしいです。
角田夏実選手 単独インタビュー
質問コーナー終了後は、運動部常任委員会から感謝の気持ちを込めて花束を贈呈、写真撮影も行いました。さらにその後、広報センターが別室で単独インタビューをさせていただきました。その一部を紹介します。
Q.古豪・強豪よりも、女子の強化を始めた東京学芸大学の柔道部が角田選手に合っていたのでしょうか?
角田さん 「練習に何を取り入れるか」と自分で考えながら強くなる楽しさを見つけられ、あの環境があったから社会人になってからも頑張れたと思います。指導者に指示されてがむしゃらに練習するのではなく、どうすれば強くなれるかを主体的に考えられました。ただ、きつい練習は"やらされている"と思うと嫌ですが、それをする意味を考えて、「次の試合で勝つために今きつい練習をしている」と思えれば乗り越えられますし、試合でも「あれだけきつい練習をしたのだから頑張れる」と思えるはずです。
Q.引退を考えたことが何度かあったようですが、それでも続けてこられたのは、柔道が好き、楽しいという思いが揺るぎないものだったからでしょうか?
角田さん 「もうできない」と思ったときでも、一方では「本当にこれでよいのか」と考えましたし、出会った方々が私の知らない柔道の楽しさに気づかせてくれたことも大きかったです。「つらい」「嫌だ」「やめたい」など、思っていることをありのまま口に出して話すことで、自分ではたどり着けなかった考え方や対処方法を教えてもらうことができたので、本当に出会いに恵まれたと思います。
Q.角田選手には柔道家としての理想像のようなものがあるのでしょうか?
角田さん 理想像というか、私にとって楽しくて突き詰めたいと思えるのが柔道なのですが、まだ自分でもわかりきれていない柔道の魅力もあると思います。ですから今後は、競技者としての視点だけではなく、柔道をさらに普及させるための視点や、柔道の歴史をつなげていくための視点を持って、柔道に携わっていきたいです。
Q.インスタグラムやYouTubeなどで情報発信する際に意識されていることはありますか?
角田さん オリンピックで金メダルを取ってからは、少なからず影響力が高まったと思いますので、自分が発信した情報で少しでも気持ちが明るくなってくれる方がいてほしいと思っています。私は柔道以外だと多くのスポーツが不得意で、例えばYouTubeのサッカー動画でもしっかりとボールを蹴れていませんし、体育の授業でも決して中心になって活躍するタイプではありませんでした。オリンピック選手は別の世界の人間だと思われがちですが、誰にでも苦手なことはありますので、私は自分をさらけ出すようにしています。
講評 スポーツ・健康科学センター 羽田 雄一 所長
スポーツ・健康科学センター所長の羽田雄一先生による講評で前半の部をしめくくりました。「皆さんも角田選手のように、考えられるリスクすべてに対策をして試合に備えてほしい」と学生を鼓舞しました。また、角田選手が講演で触れた柔道の創始者・加納治五郎先生についても言及。「加納先生は学習院で講師をされ、学習院にゆかりのある方。『自分の力を世のため人のためにしっかり使いなさい』という教えも、ぜひ心がけていただけたら嬉しいです」と話しました。
体育館でのレクリエーション
講演プログラムが終わると、後半の部は体育館に移動し、"大玉送り"のタイムレースやビンゴゲームを行いました。ビンゴが出るたびに歓声が上がり、最後まで笑顔と熱気に包まれ、大いに盛り上がりました。
運動部常任委員会の学生より1年生へのメッセージ
小山美玖さん 経済学部経営学科3年
(男子バスケットボール部 マネージャー)
東京都・私立学習院女子高等学校出身
フレッシュマンキャンプでは実行委員長を務め、言いたいことを言い合える仲間と協力して企画を進めてきました。レクリエーションでは1年生に楽しんでもらえたと思いますし、所属する部の垣根を越えた交流も見られたので大成功だったと思います。私自身もとても楽しくて充実感があり、フレッシュマンキャンプの企画・運営をとおして成長できました。
小林亜結子さん 経済学部経営学科3年
(空手部)
東京都・私立品川女子学院高等学校出身
私は講演プログラムの責任者を務めました。卒業生や先生方、そして角田選手から運動部員としての心構えなどを聞くことができ、1年生にとっても、運動部常任委員会の学生にとっても貴重な時間になったと思います。