動物生理学(安達研究室)

研究テーマ

昆虫を用いた高次機能発現機構の解析

一般に、ヒトは最も高等な動物であり、その他の哺乳類、爬虫類、両生類、魚類・・・と分岐点を遡るに従って下等になる、という認識がされることがあります。すると、"昆虫などは取るに足らない、あらゆる性質が劣った下等な生物か"と当然のように思っている人もいますが、実際にはそんなことは全くありません。どの生き物も、生命の誕生から同じだけの時間を経過してきており、系統樹のそれぞれの枝で高度に進化し得ます。実際、昆虫の方がヒトより優れている機能は無数にあり、逆にヒトが他の生物より優れている機能も、実はなかなか無いことにも気付けます。昆虫は哺乳類と同様、陸上に進出した比較的新しいグループであり、発生・生殖・行動・老化などの高次機能が様々な意味で共通した同じ仲間であると考えることも可能です。そんな昆虫を巧みに用いれば、多くの多細胞動物に共通した隠された原理を解き明かすことができます。以下の3つは、本研究室で行っている研究の例です。

ショウジョウバエの附属腺の発生と機能

附属腺はヒトの前立腺に相当するオスの内部生殖器官で(図1)、生殖の際に精子と共にメスへ送り込む様々な物質を産生しています。その物質が交尾の際にオスからメスへと送られる仕組みと附属腺の細胞形態および発生の様式は、見事に連携して、その結果としてオス同士のあるいはオスとメスの間の競争に勝つための生殖戦略を進化させています(図2)。その仕組みを、遺伝学的な研究材料として高度なテクニックを駆使できるショウジョウバエによって解き明かしています。

【図1】ショウジョウバエの附属腺(マゼンタ)
【図2】附属腺の2核細胞

ショウジョウバエの消化管による老化制御

口から肛門へとつながる消化管(図3)は、単に食べ物を消化して吸収する役割をもつだけではなく、免疫・内分泌・共生細菌など様々な仕組みを通して全身の機能を制御するため、第2の脳などと呼ばれることがあります。我々は、ショウジョウバエの腸が産生する2種類のホルモンが、腸自身や他の器官の老化に加え(図4,5)、全身性の個体寿命にも強い影響を与えていることを明らかにしました。それらの仕組みと意義を解明しつつあります。

【図3】ショウジョウバエの消化管
【図4】細胞が整然と並ぶ若い消化管
【図5】細胞の構成が乱れる老化した消化管

シュモクバエを用いた生殖と行動の遺伝子解析

【図6】シュモクバエの縄張り争い

シュモクバエは、複眼の眼柄が著しく発達したハエの類で、眼幅を競い合うことによって縄張り争いすることが知られています(図6)。長い眼幅は、縄張り争いの性質によって意味もなく外見が進化してしまったのか、それとも眼幅よりも大事な内面の性質のアピールなのか、という議論は、ランナウェイ説 vs ハンディキャップ理論の好例として、しばしば進化論の題材になります。我々は、これらの説を裏付ける遺伝子の探索を進めていますが、このシュモクバエを扱える研究室は、日本ではここだけです!

活動実績

論文等発表

Binucleation of male accessory gland cells in the common bed bug Cimex lectularius.
Takeda K., Yamauchi J., Miki A., Kim D., Leong X.Y., Doggett S., Lee C.Y., Adachi-Yamada T.
Sci .Rep. 9(1):6500 (2019)

Binucleation of Accessory Gland Lobe Contributes to Effective Ejection of Seminal Fluid in Drosophila melanogaster.
Taniguchi K., Kokuryo A., Imano T, Nakagoshi H., Adachi-Yamada T.
Zoolog Sci. 35, 5 (2018)

Nutrient conditions sensed by the reproductive organ during development optimize male fecundity in Drosophila.
Kubo A., Matsuka M., Minami R., Kimura F., Sakata-Niitsu R., Kokuryo A., Taniguchi K., Adachi-Yamada T., Nakagoshi H.
Genes Cells. 23,7 (2018)

Drosophila peptide hormones Allatostatin A and Diuretic hormone 31 with complementary gradient distribution in posterior midgut antagonistically regulate midgut senescence and adult lifespan.
Takeda, K., Okumura, T., Terahata, M., Yamaguchi, M., Taniguchi, K., and Adachi-Yamada, T.
Zool. Sci., 35, 1 (2018)

GATAe regulates intestinal stem cell maintenance and differentiation in Drosophila adult midgut.
Okumura, T., Takeda, K., Kuchiki, M., Akashi, M., Taniguchi K., and Adachi-Yamada T.
Dev. Biol., 410, 1 (2016)

Isoform-specific functions of Mud/NuMA mediate binucleation of Drosophila male accessory gland cells.
Taniguchi K., Kokuryo A., Imano T., Minami R., Nakagoshi H., and Adachi-Yamada T.
BMC Dev. Biol., 14, 46 (2014)

βν integrin inhibits chronic and high level activation of JNK to repress senescence phenotypes in Drosophila adult midgut.
Okumura, T., Takeda, K., Taniguchi, K., and Adachi-Yamada, T.
PLoS One, 9, e89387 (2014)

Mathematical modelling and experiments for the proliferation and differentiation of Drosophila intestinal stem cells II.
Kuwamura, T., Maeda, K., and Adachi-Yamada, T.
J. Biol. Dyn., 6, 267-76 (2012)

The homeodomain protein defective proventriculus is essential for male accessory gland development to enhance fecundity in Drosophila.
Minami, R., Wakabayashi, M., Sugimori, S., Taniguchi, K., Kokuryo, A., Imano T., Adachi-Yamada T., Watanabe, N. and Nakagoshi, H.
PLoS One, 7, e32302 (2012)

Binucleation of Drosophila adult male accessory gland cells increases plasticity of organ size for effective reproduction.
Taniguchi, K., Kokuryo, A., Imano, T., Minami, R., Nakagoshi, H. and Adachi-Yamada, T.
Biol. Syst., 1, e101 (2012)

Cell death and selective adhesion reorganize the dorsoventral boundary for zigzag patterning of Drosophila wing margin hairs.
Takemura M. and Adachi-Yamada T.
Dev. Biol., 357, 336-346 (2011)

著書

Adult Intestine Aging Model.
Takeda K., Okumura T., Taniguchi K., Adachi-Yamada T.
Adv Exp Med Biol. 1076 (2018)

学会等発表

【国外学会】

2016.1~2016.12
GATAe regulates intestinal stem cell maintenance and differentiation in Drosophila adult midgut
安達, 武田, 朽木, 赤石, 谷口, 奥村
57th Annual Drosophila Research Conference (2016.6.13-17, アメリカ, オーランド)

2014.1~2014.12
Analysis of βν integrin mutant showing a premature aging phenotype in Drosophila adult midgut
奥村, 武田, 谷口, 安達
55th Annual Drosophila Research Conference (2014.3.26-30, アメリカ, サンディエゴ)

Isoform-specific functions of Mud/NuMA mediate binucleation of Drosophila male accessory gland cells
谷口, 國領, 今野, 南, 中越, 安達
55th Annual Drosophila Research Conference (2014.3.26-30, アメリカ, サンディエゴ)

【国内学会】

2017.1~2017.12
ショウジョウバエのオス附属腺に見られる二核細胞の形成機構と存在意義
谷口,國領,今野,南, 中越,安達
研究集会「ショウジョウバエの生殖システムと生殖戦略」 (2017.2.7-8, 三島)

シュモクバエの生殖戦略とインスリンシグナル
八木,千島,谷沢,武田,谷口,安達
研究集会「ショウジョウバエの生殖システムと生殖戦略」 (2017.2.7-8, 三島)

2016.1~2016.12
ショウジョウバエ雄附属腺における近遠軸成長因子Dachsous,Four-jointedの役割
若松,岡田,坂田,谷口, 安達
第39回日本分子生物学会年会 (2016.11.30-12.2, 横浜)

Binucleation of male accessory gland cells elevates reproductive capacity in Drosophila
谷口, 安達
第12回日本ショウジョウバエ研究会 (2016.9.9-11, 東京)

2015.1~2015.12
ショウジョウバエ中腸から分泌されるホルモンによる寿命制御
武田, 奥村, 山口, 朽木, 谷口, 安達
第38回日本分子生物学会年会・第88回日本生化学会大会合同大会 (2015.12.1-4, 神戸)

ショウジョウバエ雄蛹期附属腺における二核化とcell cycle arrestの関係
越田, 谷口, 岡田, 中越, 安達
第38回日本分子生物学会年会・第88回日本生化学会大会合同大会 (2015.12.1-4, 神戸)

ショウジョウバエ雄附属腺の細胞二核化におけるDppシグナルの関与
若松, 谷口, 岡田, 中越, 安達
第38回日本分子生物学会年会・第88回日本生化学会大会合同大会 (2015.12.1-4, 神戸)

ショウジョウバエ組織における生理的アポトーシス耐性の解析
谷口, 中越, 安達
第38回日本分子生物学会年会・第88回日本生化学会大会合同大会 (2015.12.1-4, 神戸)

ヒメシュモクバエを用いたハンディキャップ理論の遺伝学的検証
武田,安達
むさしのバイオ研究会 Fish & Fly 2015 (2015.8.29, 三鷹)

ショウジョウバエ組織における生理的アポトーシス耐性の解析
武田,安達
むさしのバイオ研究会 Fish & Fly 2015 (2015.8.29, 三鷹)

2014.1~2014.12
ショウジョウバエ各種器官の近遠軸成長におけるDachsousの役割について
岡田, 坂田, 安部, 谷口, 安達
第37回日本分子生物学会年会 (2014.11.25-27, 横浜)

Isoform-specific functions of Mud/NuMA mediate binucleation of Drosophila male accessory gland cells
谷口, 國領, 今野, 南, 中越, 安達
第11回日本ショウジョウバエ研究会 (2014.6.4-6, 金沢)

2013.1~2013.12
Acquisition of apoptosis-resistances in Drosophila accessory gland exocrine cells
谷口, 安達
新学術領域研究「上皮管腔組織形成」第1回国際シンポジウム (2013.6.22-23, 札幌)

Mud/NuMAはショウジョウバエ雄生殖器附属腺において細胞二核化を制御する
谷口, 國領, 今野, 南, 中越, 安達
第65回日本細胞生物学会大会 (2013.6.19-21, 名古屋)

プロフィール/メンバー

教授

安達 卓

北海道大学理学部生物学科卒
名古屋大学大学院理学研究科生物学専攻博士後期課程修了(理学博士)

愛知県がんセンター研究所研究員、名古屋大学理学部生物学科助手、米ミネソタ大学在外研究員、神戸大学理学研究科生物学専攻准教授を経て、2009年より学習院大学理学部生命科学科教授


助教

武田晃司

学習院大学理学部化学科卒
学習院大学大学院自然科学研究科生命科学専攻満期取得退学(博士[理学])

2017年より学習院大学理学部生命科学科助教


学生

  • M2 伊川雄一朗 Yuuichiro Igawa
  • M1 守屋 綾乃 Ayano Moriya
  • B4 伊藤 伸貴 Nobutaka Ito
  • B4 直井 陸 Riku Naoi
  • B4 浜野 晴加 Haruka Hamano
  • B4 福田 梨紗 Risa Fukuda
  • B4 山口 翔 Kakeru Yamaguchi