渡邉 真理子(ワタナベ マリコ)教授

渡邉 真理子 教授

渡邉 真理子(ワタナベ マリコ)教授
経営学科:応用ミクロ経済学(実証的産業組織論、法と経済、契約理論、企業行動と経済発展に関する実証)、中国その他発展途上国の企業、産業、経済の実態調査。

略歴

  • 1991年3月:東京大学経済学部卒業
  • 1991年4月:アジア経済研究所入所
  • 1996年3月-1998年8月:香港大学商学院(1999年12月 M.Phil取得)
  • 2006年3月-2009年3月:北京大学光華管理学院 訪問学者
  • 2011年11月:東京大学経済学研究科 博士号取得
  • 2013年9月:学習院大学経済学部経営学科教授

連絡先

E-mail:add_mariko_watanabe.png

研究分野

応用ミクロ経済学(実証的産業組織論、法と経済、契約理論、企業戦略と経済発展に関する実証)、中国その他発展途上国の企業、産業、経済の実態調査。

学外での活動

アジア政経学会、中国経済学会、中国経営管理学会、日本経済学会, Asian Law and Economic Association, Econometric Society その他政府、研究機関などでの政策研究活動。

講義・演習の運営方針

 私が研究をはじめ、とりあえず現場を見てみようと向かった中国では、ちょうど歴史的な経済体制の転換が始まっていました。
制度やしくみが変わると、人間の行動も、社会全体もここまで大きく変化できるのか、ということを目の当りにし、これをきちんと理解する仕事をしていこうと決めました。人間の社会をうごかすメカニズムを直接的に理解する手段として、経済学はとても有益ですし、とくにミクロ経済学は人間の行動のいろんな側面に応用できます。こうした面白さを身に着けてもらうことを、講義と演習のテーマとします。

演習では、特に発展途上国でおきている経済現象を対象とし、現地で何が起きているのか、現地の視点をもつ必要性と、経済学的に分析する手法を学ぶようにしたいと考えています。2018年から途上国とかかわりながら、価値を生むというプロジェクトを動かしながら学ぶ活動として、学内でシェアモバイルバッテリプロジェクトを始めました。新興国はデジタルの面で先進国を抜きはじめました。それを体感してもらいたいと思っています。

自分自身の研究について

私自身の研究には大きく3つの柱があります。何か興味ぶかいテーマを設定したら、第一に、そのテーマに関連する現場に赴いたり実態に関する情報を集め、何が起きているのか、どういう枠組みで人々は活動しているのかを把握すること。第二に、そこで目にし、耳にした行動を、経済モデルというかたちに書き出すことで、その現場のロジックを抽出すること。そして、第三に、最後にケーススタディや計量分析というかたちで、自分が書き出してみた現場のロジックが正しいのか、条件が変化すればどのように変化するのかを検証する作業です。

第一の実態把握をするための手法には、現場のフィールドワーク、統計や新聞、その他の文献情報の収集などがありますが、何よりも現場のフィールドワークが一番難しく刺激的です。いろんな問題にぶつかった人間が試行錯誤を重ねた内容を聞き、どのように解決していったのか、どんな要因が人々の行動に影響しているのか、を把握します。事実は小説よりも奇なり、事実は既存の理論よりも強し、を痛感するプロセスです。第二のロジックの抽出に当たっては、私は応用ミクロ経済学とよばれる分野の手法をいろいろと試してきました。ゲーム理論という分野が確立されつつある今、人間の複雑な行動を単純化するツールがつまった道具箱は、それぞれの分析者の問題意識にあわせた分析が可能になり、使いでがよくなっています。第三の検証作業には、第一のフィールドワークで記録した事例、既存の統計や文献、もしくは自分自身で新たに蒐集したデータをもとに行います。事例と事例の対比、十分なデータがあればそのデータの性質の観察、ニュースや文献に現れている事例との対比といったかたちで、観察したと考えている現場のロジックが本当に生きたロジックなのか、を確認していきます。データの分析については、実証産業組織論という分野がゲーム理論と計量経済学を融合させ、より使いでのある手法が確立されつつあり私もこの手法を利用しています。

現在進行中の研究テーマは、中国の産業メカニズム発展のひとつの特徴と私が考えています「プラットフォームの利用」の効果の評価、中国の国有、民営、外資の多様な所有制度が混在する混合競争市場での、企業の競争戦略、イノベーションの効果、過剰生産能力発生への分析、日本、中国、タイ、インドを中心に市場メカニズムを用いて省エネ機器を普及させる制度の評価、ベトナム、インドネシアなどの二輪車産業での企業戦略の分析など多岐にわたっています。個々の作業量の膨大で、時間がかかっていて、仕事が遅いのが悩みです。
この実態把握、ロジックの抽出、検証という3つのステップは、社会人としての仕事を進める際にも、絶対不可欠の作業です。それぞれのステップを極めるのも大変ですが、どんな仕事をしようと一連の作業が必要になってきます。そうした作業の大変さと面白さをお伝えできたらと考えています。

メッセージ

私が研究を始めたころ、いわゆる発展途上国の情報は、私が就職した研究所の図書館に送られてくる新聞というかたちぐらいでしかアクセスできませんでした。インターネットの網が世界中を覆った今、世界中でおきている事象について情報へのアクセスは格段に楽になりました。しかし、依然としてものの見方は多様です。経済活動をテーマに、こうした多様なものの見方に触れるための情報収集をし、それを分析する作業を行う能力を身に着ける作業をみなさんとしていきたい、とおもっています。

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