教員紹介

宮川 努教授

Tsutomu Miyagawa

研究分野
マクロ経済学、国際マクロ経済学、日本経済論
担当科目
マクロ経済学特論Ⅰ、経済成長論特殊研究

略歴

1978年 東京大学経済学部卒業
1978年〜1999年 日本開発銀行(現日本政策投資銀行)勤務
2006年 経済学博士号修得

主要業績

著 書
『インタンジブルズ・エコノミー』(淺羽茂氏、細野薫氏と共編)東京大学出版会、2016
『Intangibles, Market Failure and Innovation Performance』(Bounfour氏と共編)Springer、2015
『世界同時不況と景気循環分析』(浅子和美氏、飯塚信夫氏と共編著)東京大学出版会、2011年
『グラフィックマクロ経済学 第2版』(滝澤美帆氏と共著)新世社、2011年
『生産性と日本の経済成長 JIPデータベースによる産業・企業レベルの実証分析』(深尾京司氏と共編著)東京大学出版会、2008年。
『長期停滞の経済学』東京大学出版会、2005年
『日本経済の生産性革新』日本経済新聞社、2005年
『失われた10年の真因は何か』(岩田規久男氏と共編著)、東洋経済新報社、2003年
論 文
“Comparing the Management Practices and Productive Efficiency of Korean and Japanese Firms: An Interview Survey Approach”(with Keun Lee, YoungGak Kim, and Edamura Kazuma)Seoul Journal of Economics 29, 2016
「社会資本の生産力効果の再検討(川崎一泰氏、枝村一麿氏との共著)『経済研究』」第64巻第3号 2013
“Estimates of Intangible Investment by Industry and Productivity Growth in Japan” (with Shoichi Hisa) The Japanese Economic Review 64, 2013, pp.42-72.
“Market Competition, Differences in Technology, and Productivity Improvement: An Empirical Analysis Based on Japanese Manufacturing Firm Data” (with Tomohiko Inui and Atsushi Kawakami) Japan and the World Economy 24, 2012, pp.197-206.
“Productivity in Japan, the United States, and the Major E.U. Economies: Is Japan Falling Behind?” (with Kyoji Fukao) in Chin Hee Hahn and Sang-Hyop Lee eds., Reforms for Korea's Sustained Growth, Korea Development Institute, 2011, pp.241-260.
“Estimates of Multifactor Productivity, ICT Contributions, and Resource Reallocation Effects in Japan and Korea,” (with Kyoji Fukao, Hak K. Pyo, and Keun Hee Rhee) in Matilde Mas and Robert Stehrer eds., Industrial Productivity in Europe: Growth and Crisis, Edward Elgar Publishing Chetlenham. 2011. pp.264-301.

講義・演習の運営方針

[講義の考え方]
経済学をどうして学ぶのか、経済学って何の役に立つのという疑問をしばしば耳にします。最初の質問に対して私は、「大げさに言えば、それは民主主義を維持するための必修科目の一つだから」と答えます。皆さんの多くはすでに選挙権を持っています。国政や地方自治体の選挙に参加するということは、国や地域の経済運営に対して理解をした上で、自らの判断を下すということが前提になっていると思います(勿論これは理想論ですが)。その意味ではできるだけ多くの人に経済学を学んで欲しいと思います(同様のことは政治学にも言えるかもしれません)。

後者の質問に対しては、一応社会人を経験した者の個人的な考え方を述べさせてもらうと、現在の日本社会では、経済学に限らず他の学問の多くは、直接社会生活に「役立つ」ものではありません。もし大学での生活を通して「役に立つ」ことがあるとすれば、それは学業であれ、スポーツであれ、自分が選び取った課題に対して向上心を持って取り組む姿勢でしょう。この姿勢は、どの職業でも「役に立つ」と思います。

[演習の考え方]
21世紀は、情報化とグローバル化の時代です。日本は、情報化はともかく、グローバル化については、まだ戸惑いがあるようです。しかし人口減少の時代を迎えて、日本がこれからの時代を生き抜いていくには、否応なくグローバル化への対応が求められます。

私は、2006年から07年にロンドンに滞在していましたが、イングランドのプレミア・リーグは世界で最もグローバル化が進んだフットボール・リーグと言ってよいでしょう。選手の国際化は言うまでも無く、経営者もイギリス人だけでなく、アメリカ人、ロシア人などが参加しています。そうした国際的な激しい競争の中で、イングランドの選手自身も切磋琢磨し、国際的な評価を高めています。
フットボールにおいて、日本が国際的にどのように位置づけられるかは、ワールドカップでの戦いぶりを見れば明らかです。しかし、日本代表がワールドカップで見せた、タフネスの無さと自ら状況判断する姿勢の欠如は、日本代表に限ったことではなく、日本社会の様々な側面でも見られます。こうしたことが続けば、日本はフットボールだけでなく、経済社会においても、国際化に優秀な人材を輩出することができなくなるでしょう。
したがって演習では、何よりも体力だけでなく精神的にもタフな学生に来てもらいたいと思っています。ただ指示を待っているだけの学生は、社会で活躍することはできません。多少の摩擦はあったとしても、自ら判断したことを実行に移していくことで障害を乗り越えていくような学生に期待したいと思います。

メッセージ

大学生にとって何が重要なことか、と尋ねられれば、私は「好奇心」と答えます。何事にも興味をもち、それを自由な発想で実行に移せる時期は、人生でそう何度もありません。

私くらいの年になると、目前の経済問題について、頭で考えることはできても、それを論理的な文章に組み立てたり、人に説明することに体がついていきません。粗削りでもよいので、フレッシュな発想で、現実の経済問題に対し率直な意見を聞かせてもらいたいと思います。

最近の研究テーマ

マクロ経済学の主要テーマは、景気循環論と経済成長論です。マクロ経済学特論では、この二つのテーマを半期ずつ講義します。このうち特に経済成長論については、経済成長論演習で、経済成長で重要な役割を果たす生産性について、その基礎的な概念を学ぶとともに、企業レベルの生産性格差に関する専門論文を読んでいきます。

この生産性については、私の研究テーマとも深く関連しています。私は現在科学技術研究費(基盤研究(S))で、日本の無形資産投資に関する実証研究を行っています。

この研究テーマについては、http://www.erii.jp/ で随時研究成果を報告しています。