教員紹介

和田 哲夫教授

Tetsuo Wada

研究分野
知的財産権の取得・取引・訴訟に関する企業戦略

メッセージ

累積的技術開発、つまり基礎技術の上に派生技術が積み重ねられたり、研究ツールから多数の応用技術が生まれたりする、という状況では、自社の技術的優位性の維持強化のほかに、他企業の持つ能力や成果の利用、技術流出の防止、訴訟危険に対する安全性の確保、など他企業・組織との関係の管理が重要となります。研究開発合弁や開発委託契約、ライセンスなど、技術を核としたアライアンスの数・種類が増大しているのは、その表れであることは論を待ちません。それだけでなく、特許出願手続における修正手段や、特許侵害訴訟など、以前は法的な意味での知財専門家だけが扱っていた領域が、経営戦略の一部として考えるべきであることも理解されるようになってきました。これら様々な法的手段がイノベーション戦略において持つ意味を理解するための研究は、戦略論・組織論などの経営学、契約・組織の経済学、知的財産法学などの複合領域となります。これら理論的な道具を利用して、定量的な検証結果を積み重ねることが必要であると考えています。その過程で、理論的な道具そのもの対する洞察や、実務に対する参考資料の提供もできれば、と願っているところです。

最近の研究テーマ

国際特許審査システムの整合性・効率性
特許出願分割の戦略的利用
企業アライアンス形態と企業間知識フローの関係

研究室

公式・非公式含めると、経営戦略専攻の経営学研究科学生のほか、経済学・法学分野など、イノベーションに関わる院生の幅広い研究スタイルへの指導に関わってきましたし、これからもその機会を大事にしたいと考えています。累積的イノベーションを観察し、法則性を発見する研究とは、それ自体が累積的であり複合的なイノベーションである、というわけです。

ただし、複数の学問分野にまたがる領域では、様々なアプローチの狭間で迷子になりがちなので、学問の基本スタンスを選択することが必要です。権利・契約・組織・訴訟などをめぐる経営学・経済学の融合領域の中で、私は反証可能か(”refutable”か)、を重視します。社会科学では実験が困難な場合が多く、「実証」方法には厳しい制約があります。しかし、現実に照らして反証可能かどうかを意識して考えることは、個人の分析的能力の修得・向上にとって、また建設的な議論にとって、重要だと考えます。そのための思考訓練の材料と場を提供し、院生自身の生み出す「知の創造」のお手伝いをして行きたいと願っています。