院生インタビュー
濃厚な学びの先に見据える
研究者への道
迷い無く飛び込んだ学習院にあった恩師との出会い
「3年次のゼミで、ちょうど世間でも気運が高まっていた働き方改革についての議論がありました。そこで参考資料として提示された文献がとにかく面白い。一気に企業組織の働き方や人材マネジメントに引き込まれてしまいました」
斉藤さんと人材マネジメントとの出会いは、学部3年次のゼミにまでさかのぼる。
あまりひとつのことに打ち込む経験がなかったという斉藤さんは、資格取得支援講座で簿記会計を選択。学問としての会計に興味を抱き、管理会計のゼミを選択した。
研究の一環として行われるゼミ生同士のディスカッションにおいて、あるとき人材マネジメントがテーマに選ばれた。このときに参考資料として提示された文献に触れたことで、斉藤さんの価値観は一変。研究対象としてのHRM(Human Resource Management=人的資源管理)に魅了され、大学院への進学という進路が浮かび上がってきたという。
「大学院という選択肢を意識しはじめましたが、どこにいけばいいのかは見当がつきませんでした。そこで担当教授に相談をしてみたところ『この分野なら学習院大学の守島基博教授が偉大な先生だ』と教えていただきました。一応、他の大学院も受験はしましたが、自分の気持ちは守島先生の下で学ぶことにしかありませんでした」
当時を振り返り「本当に一生懸命勉強しました」という受験勉強期間を過ごし、晴れて学習院大学大学院の門を叩いた斉藤さん。念願の守島教授の研究室で2年間の博士前期課程(修士)を終え、今は博士課程後期に在籍している。
”中途半端”な自分が手に入れた、研究に熱中する日々
現在、斉藤さんは労働人材のキャリア自律意識の観点から、企業のHRMの研究を行っている。近年では労働者自身によるキャリアの選択の重要性が叫ばれているが、その背景には企業と労働者間の関係の大きな変化が影響していると斉藤さんは指摘する。
「近年では組織や人材のニーズ上などの要因から、働き手のキャリア自律意識が高まりつつあります。
私は研究を通じて、キャリア自律意識の高まりに伴って求められるHRM施策と、その実践の効果について研究をしています」
現時点では道半ばであるという斉藤さんだが、すでにひとつの仮説にたどり着きつつあるという。
「働き手の意思を把握し、企業としてどのようにサポートしていくか考える必要があるでしょう。当然自社では実現が難しいというケースもあると思いますが、お互いにミスフィットを起こさないためにも、相互理解を前提としたマネジメントの実践が肝要であると考えています」
かつては自身を"中途半端"と評した斉藤さんだが、今では大学院での研究に熱中する毎日を過ごす。そのスケジュールは「朝早くから夜遅くまで一年中作業をしています」というほど過密なもの。余暇らしい余暇がなくてもまったく苦に感じないという理由に、大学院ならではの学習ペースがあるという。
「頭の回転が速くないので、短時間で物事を考えるのがどうしても苦手なのだと思います。その点、研究は自分が提唱したい説を実証するために比較的じっくり考えることができるので、性格に合っているのかもしれません」
上質な知見に触れる毎日は、贅沢で幸せな時間
水を得た魚のように研究へ没頭する背景を語るには、やはり守島教授の存在は避けられないだろう。人材マネジメント分野の第一人者である守島教授の研究は机上に留まらない。人事系のイベントへの登壇や政府審議会の委員を務めるなど、人材マネジメントの現場との繋がりが強い守島教授の指導は、斉藤さんにとってこれ以上ない学びであり、何物にも代えがたい刺激となっている。
「守島先生は企業の経営者や人事担当との繋がりが広く、現場でどのような人材マネジメントが行われているのか、大変よくご存じです。その豊富な知見は、私たちへの指導にも惜しみなく注ぎ込んでいただいていると感じます。組織の具体的な課題に対し、アカデミックな理論がどう生かされていくか。実務と学問がハイレベルに融合する現場に立ち合うたびに、とんでもない研究室にきたなと実感しています」
思わず”とんでもない”と口にした斉藤さんだったが、そう評すべき環境は研究室のみに留まらない。斉藤さんは優れた研究者から少人数で指導を受けられる学習院の講義を「とても贅沢な時間」と表現する。
「組織行動論や人的資源管理論、経営組織論などを横断する私の研究テーマにとって、学習院はこれ以上ない環境です。優れた研究成果を残す先生方のもと、少人数で学べる環境に身を置けるのは、本当に恵まれていると日々実感しています。偉大な研究者である守島先生、竹内倫和先生、武石彰先生のお三方から指導をいただけるのは、本当に贅沢で幸せな時間だと思います」
斉藤さんは主査に守島教授、副査に竹内教授、武石教授を迎えて修士論文「ハイ・インベストメント型HRMとエンゲージメントの関係性―自律的なキャリア形成意識を調整変数として―」を書き上げた。少人数の学習院大学大学院だからこそ得られる上質な知見の数々。かけがえのない学びを胸に、斉藤さんはこれからも研究の道を歩むという。
「人的資源管理がストラテジック・ヒューマンリソースマネジメントとして議論されるようになったのが1980年代。まだまだ人的資源管理は他の商学分野に比べて歴史が浅いからこそ、研究のしがいがある分野であると考えています。
大学院は、博士課程前期・後期合計で5年ほどの時間しかありませんが、私は非常に濃厚な時間を過ごしてきました。修了後どのような形になるかはわかりませんが、将来も何らかの形で研究に携わっていこうと思っています」
贅沢で幸せな時間は、これからも続いていく。
取材: | 2023年9月21日 |
インタビュアー: | 手塚裕之 |
文: | 手塚裕之 |
身分・所属についてはインタビュー日における情報を
記事に反映しています。
取材:2023年9月21日/インタビュアー:手塚裕之/文:手塚裕之
身分・所属についてはインタビュー日における情報を記事に反映しています。