院生インタビュー 詳細
学習院大学での学びが日中の架け橋となる
教育は社会発展の礎。故郷での原体験が誘う開発経済学の道
王さんが向き合う研究テーマは「開発経済学」。発展途上国をはじめとする経済発展が十分でない国や地域が抱える貧困や格差といった問題に対し、その解決策を研究する経済学の一分野である。教育というテーマに強い関心を抱くようになった背景には、自身の原体験があった。
「大学の留学プログラムで来日した後、アジアの発展途上国に関する講義や文献に触れたことで、教育と開発という視点に深く魅了されました。私は中国の小さな町で育ち、教育を受けられるかどうかが人生に大きな影響を与える現実を見てきました。教育を通じて一人ひとりの人的資本の向上が社会全体を発展させ、人々の生活を豊かにします。教育と豊かさの繋がりを知ることに意義を感じ、本格的に研究したいと考えるようになりました」
強い問題意識を胸に、王さんが修士論文の研究内容として選んだのは「教育が女性に与える影響、特に生育に関する部分に焦点を当て、Stataを用いてラオスを対象国とする実証研究」である。ラオスは、東南アジアに位置する発展途上国の一つ。特に農村部では女性が教育を受ける機会が限られており、教育の普及が課題とされている。1996年には小学校の義務教育制度が導入され、教育が広がる兆しが見えてきた。その政策が社会にどのような影響を与えたのかは、これまで十分に分析されてこなかったという。
「ラオス社会指標調査の統計データ(Lao Social Indicators Survey III, 2023 )を用いて、人々の教育水準について義務教育制度の導入前後を比較分析しています。特に、もともと教育水準に格差があった地域ごとの違いや、男女間で政策の影響にどのような違いが見られるのかという点に注目しています」
地道なデータ分析から見えてきたのは、興味深い事実だった。政策導入後、男女ともに小学校の卒業率は向上したが、上昇幅は男性よりも女性の方が大きかったのである。
「もともとラオスでは、男性の方が女性よりも教育を受ける機会が多い傾向にありました。政策導入後、男性の卒業率の伸びに比べて、女性の卒業率の上昇幅は非常に大きくなりました。また、もともと教育水準や教育の質が低かった地域ほど、この政策による良い影響がより大きいことも分かってきました。小学校卒業率については、Lao Social Indicators Survey III, 2023 の調査データを用い、その中のサンプルをStataで分析した結果、1980年生まれの男性の小学校卒業率は約70%、1995年生まれの男性は約85%でした。一方、1980年生まれの女性の小学校卒業率は約50%にとどまりましたが、1995年生まれの女性では約75%まで上昇していました」
現在は修士論文の完成に向け、分析を進めている過程にある。一つひとつのデータを丁寧に読み解き、仮説を検証した先に、社会をより良い方向へ導くためのヒントが隠されているのかもしれない。データと向き合うことで社会の変化を客観的に捉える。王さんは今、データに向き合う研究の醍醐味を体験している。
決め手は先生との距離の近さ。安心して研究できる学習院大学の環境
王さんの学びの道のりは、日本への留学が大きな転機となった。中国の大連外国語大学で日本語を専攻し、大学3年生の時に交換留学プログラムで来日。そこで日本の社会に直接触れたことが、経済学への興味を深めるきっかけになったと語る。
「それまでの勉強は日本語そのものが中心でしたが、来日後は日本の文化や経済活動へと関心が広がりました。特にアジアの中でも日本の経済発展は早く、少子高齢化といった課題に対するさまざまな取り組みにも学ぶべき点が多くあると感じ、経済学という学問に強く惹かれるようになったんです」
学部卒業後、大学院で経済学の研究を深めることを決意した王さん。数ある大学院の中から学習院大学を選んだ決め手は、その充実した研究環境にあった。
「学習院大学は応用経済学の分野に強く、緻密で密度の高い研究指導が受けられるという話を聞いていました。特に、指導を希望していた増田一八先生の研究方法には以前から興味を持っていたため、是非指導を受けたいと思っていました。留学生へのサポートが温かい点も魅力的です」
期待を胸に初めて学習院大学のキャンパスを訪れたのは、大学院入試の面接の日。その時の印象が、入学への思いを決定的なものにしたという。
「面接の日に初めて目白のキャンパスを訪れた時、美しい佇まいと落ち着いた雰囲気に魅了されました。『この大学が大好きだ。もし機会をいただけるなら、ぜひこの大学で勉強したい』と心から願うほど、私にとって学習院大学は特別な場所に思えました」
その願いは叶い、学習院大学大学院での研究生活がスタートした。入学前に抱いていた「落ち着いた雰囲気」のイメージは、良い意味で裏切られることになる。少人数教育を掲げる学習院大学ならではの、人と人との繋がりを大切にする環境は、賑やかで充実したものになった。
「私の所属する研究室は、修士1年生が2人、2年生が3人の計5人です。そのうち日本人の学生は1人で、残りの3人は私と同じ中国人留学生です。研究室は、データ分析や論文執筆に集中するだけでなく、院生同士で研究の進捗や将来について語り合う大切な場でもあります。励まし合える仲間がすぐそばにいることが、何よりの支えになっています」
研究室で交わされるのは、学問的な議論だけではない。「今日の昼ご飯は何にする?」といった会話も弾み、日常を明るく彩った。日本人学生とは日本語で、中国人留学生とは中国語で。自然に言葉を使い分けながら、和やかな雰囲気の中で互いに切磋琢磨するアットホームな環境こそ、学習院大学の大きな魅力の一つだ。
安心して学べる環境を求めるなら学習院大学がベスト
多くの院生が学習院大学大学院の最大の特長に挙げるのが、教員による手厚い指導である。王さんもまた、指導教員の増田先生から丁寧なサポートを受けながら、研究に没頭している。
「増田先生は、開発経済学の分野で最先端の研究をされている素晴らしい先生です。私の研究に対しても、厳密かつ丁寧な指導をしてくださいます。経済学の専門用語の理解に詰まっていると、先生が紙に漢字を書いて意味を丁寧に説明してくださった日のことは、特に印象に残っています。細やかな気配りで私の理解を促してくれる、本当に丁寧な先生です」
さらに深井太洋先生、清水大昌先生といった副指導の先生からも多角的な視点で指導を受けることで、研究の視野が広がるという。深井太洋先生の授業では、日本語と英語を交えた形で進められており、清水大昌先生はいつも優しく授業の難しい部分を丁寧に説明してくださいました。清水順子先生の授業からも多くのことを学び、たくさんの励ましと支えをいただきました。こうした一人ひとりの学生に真摯に向き合う指導体制は、留学生である王さんにとって、大きな安心感に繋がっている。
そして、その安心感は学問の世界だけに留まらない。留学生が充実した大学生活を送るためのサポート体制も王さんの学びを支える。
「大学には、留学生向けの奨学金や学費減免の制度が用意されています。また、国際センターが中心となって、日本人学生と留学生が交流する『チャットルーム』という活動や、染め物などの文化体験、日帰り旅行といったイベントを定期的に開催してくれます。学問だけでなく、生活面、精神面でも十分なサポートを受けられるので、何も心配する必要はありません」
学部での学びが知識を「教わる」ものだったとすれば、大学院での学びは、データを集めて自らが立てた仮説を検証する、いわば「探求する」学びである。そのプロセスは決して平坦な道ではないが、確かな成長を実感できると王さんは語る。
「自分で問題を発見し、ツールや検証方法を選びながら答えを探すことは、自分自身の能力への挑戦といえます。データ処理や回帰分析といったスキルはもちろん、論理的に考える力や粘り強さなど、個人的な能力も精神面も大きく成長できたと感じています」
来春に修士課程を修了した後は、一度中国に戻る予定だという王さん。大学院で培った専門知識と分析能力、そして高度な日本語能力を活かして日本と中国を繋ぐ仕事に就きたいと、未来への展望を語る。
「中国の日系企業か、あるいは日本と取引がある会社で働きたいと考えています。院生時代に身につけた分析の知識や語学力を活用し、日中間の交流の架け橋となるようなコミュニケーションを図る仕事で、会社をしっかりと支えていきたいです」
「もし大学院進学を考えている方がいれば、学習院大学を強くお勧めします。落ち着いたキャンパス環境、先生方との距離の近さ、研究を進めるための書籍や設備、そして留学生への専門的なサポート。自分の研究テーマを深めたい、安心して充実した環境で学びたいと願う方にとって、学習院大学は最適な場所です。ここでなら、皆さんの知的好奇心を満たし、自らを大きく成長させることができるはずです」
| 取材: | 2025年10月2日 |
| インタビュアー: | 手塚 裕之 |
| 文: | 手塚 裕之 |
身分・所属についてはインタビュー日における情報を
記事に反映しています。
取材:2025年10月2日/インタビュアー:手塚 裕之/文:手塚 裕之
身分・所属についてはインタビュー日における情報を記事に反映しています。