卒業生の声

国際社会にインパクトを与える仕事がしたい――。海外経験ゼロだった私がアフリカの港湾プロジェクトに携わるまでの道のり

総合商社のプラント・プロジェクト部門に所属し、27年間にも及ぶ内戦があったアフリカのアンゴラという国で今、港湾の開発に携わっている岡根珠緒さん。政府関係者や国際機関、国際金融機関と交渉しながら、プロジェクトを進めています。幼少期から海外で働きたかったといいますが、実は大学入学まで海外経験はなく、英語はほとんど話せませんでした。そんな岡根さんが国際舞台で働く実力をつけた道のりを聞きました。

国際社会にインパクトを与える仕事がしたい――。海外経験ゼロだった私がアフリカの港湾プロジェクトに携わるまでの道のり
岡根 珠緒

2016年に国際社会科学部入学。
2020年国際社会科学部国際社会科学科卒業。

幼少期にディズニーアニメやスターウォーズなどの映画を見て海外に憧れを抱く。2017年9月~18年3月アメリカ・オレゴン大学に留学し経営学を学ぶ。大学では組織行動論のゼミに所属。2020年、豊田通商株式会社に入社。プラント・プロジェクト部に所属し、アンゴラ、エジプトなどの開発プロジェクトに関わる。

国際社会にインパクトを与える仕事がしたい――。海外経験ゼロだった私がアフリカの港湾プロジェクトに携わるまでの道のり

アニメや映画や音楽で海外に憧れを持った

両親が外国に行ったのは新婚旅行ぐらい。でも洋楽と洋画が好きで、家の中はよくビートルズや80年代の洋楽がかかっていたし、外国のアニメやハリウッド映画をよく見せてくれていたんです。そのおかげで、気づいた時には漠然と海外に行ってみたい、英語を喋ってみたいという思いを抱いていましたね。一番のお気に入りは、フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドでたくさんのキャラクターと子どもたちが一緒に歌いながら遊んでいるビデオで、「私もあの中に入って一緒に遊びたい」と憧れていました。

中学校の時の将来の夢は国際線の客室乗務員。高校の時には、どんな形でもいいから海外で仕事をしたいと思っていました。といっても英語を喋った経験はほぼなかったんですけどね。海外には中3の時に初めて母と2泊3日の韓国旅行に行ったくらいで、高校はソフトボール部で部活漬けの日々。それでも海外で働きたい思いは変わらなくて、大学は国際的なキャリアを歩めるようなプログラムがある大学をピックアップして受験しました。学習院の国際社会科学部は留学が必須で、法学・経済・経営などを広い分野を学べるカリキュラムに魅力を感じて進学を決めました。

留学では語学スクールで英語力をアップさせ学部に転入

留学は2年次の9月から3月まで半年間、アメリカのオレゴン大学に行きました。オレゴンを選んだ理由は、純粋にアメリカに憧れがあり、また日本人が比較的少ない環境を身を置きたかったから。カリフォルニアでもニューヨークでもなく田舎というのがよかったし、オレゴン大学は4クオーター制だったので、半年で2期分の勉強ができるという点が魅力的でした。実は私、留学の願書を出した時には英語資格・検定試験の点数が足りずに一般の学部に入れず、大学付属の語学スクールにしか入れなかったんです。だから1期目は語学を徹底的に向上させて、2期目で学部に入りたいと思って行きました。

大学付属の語学スクールには英語ネイティブの学生がおらず、アジアや中東からいろいろな母国語の学生が来ていて、日本人もたくさんいました。外国の友達ができることも楽しいんですが、ここでぬるま湯に浸かっていてはいけないと思って、3ヶ月必死に英語を勉強しました。その結果、規定の点数をクリアし、留学プログラムを変更して2期目から学部に入ることができたんです。ビジネス学部でビジネス入門とマネジメント、アントレプレナーシップの3つの授業をとり、アメリカ人の学生とも一緒に学ぶことができました。

ただ、そこからが本当の試練でしたね。やはりネイティブの先生の授業はものすごく早くて、ついていくだけで精一杯。グループワークでは議論のスピードについていけなくて、最初の頃は全く発言できず、すごく歯痒い思いをしました。ただ、せっかくの貴重な機会を無駄にはしたくなかったし、グループに貢献したいと思いました。深夜まで文献を読んで、伝えきれない自分の思いを整理して提案書を作り、プレゼンテーションの練習を重ね、グループワークでみんなにプレゼンしました。そうしたら、グループ発表の内容にみんなが私の意見を採用してくれて、最終的に私たちのグループはクラス内で高い評価を受けることができたんです。グループのメンバーとして認められたことが何より嬉しかったですね。

国際社会にインパクトを与える仕事がしたい

就職活動を始めたのは3年次の夏から。大学主催の就職フェアに参加したり、いろいろな会社の短期インターンシップに参加したり、大学の紹介でOBOGに話を聞いたりしました。そうするうちに総合商社に興味を持つようになりました。海外で働きたいという気持ちは変わらずあったのですが、自己分析をしていく中で、今まで、自分が何かをすることで人に影響を与えることにすごくやりがいを感じていたと気づいたんです。海外での仕事を通して、社会の広い範囲に大きなインパクトを与えられる仕事がしたい。その願いが叶えられるのが商社だと思ったのです。

中でも豊田通商に惹かれたのは、現場主義を徹底しているところ。お客様の現場は今どんな状況で、どんな気持ちで、何に困っていて、何をすればその解決に近づけるのか。それを自分で足を運んで現場を見てお客様と一緒に考えるという会社のポリシーが徹底されているんです。実際に先輩たちが現場で考えて発想して新しいものを作っていくのを何度も目の当たりにしています。

入社後、私はプラント・プロジェクト部に所属し、インフラが十分に整備されていない開発途上国に向けて、エネルギーやインフラ関連の設備を供給する事業部にいます。アンゴラ、エジプトといった国のプロジェクトに関わっていますが、入社時からメインで担当しているのは、アフリカ中央西部のアンゴラに新たに港湾を建設するプロジェクトです。

2019年に正式にスタートしたプロジェクトでしたが、私が入社した2020年は新型コロナウイルスが流行して、入社後半年ぐらいは先輩社員のサポートをフルリモートで行っていました。資料を読み込んで、事業として成立するのか検証するのを手伝ったり、資金調達に必要な書類の作成を行ったり、会議の議事録を書いたりといった業務です。インフラ開発の国際プロジェクトと聞くと響きは華やかですが、実際にやることは地道な業務が多いんです。

相手国の政府機関の担当省庁、国際機関とも連携しながら、どれくらいの規模の港湾を作って周囲にどんな設備を作るのか。輸送網はどうするのか。建設にはどの建設会社とパートナーリングをするのか。機器の調達は、どのような機器をどのメーカーから調達するのか、といった詳細な計画を詰めていく。同時に、資金調達も行わなければいけません。国際的な金融機関や、国際協力銀行、日本の銀行、保険機関に掛け合い、プロジェクトを実現するためのファイナンススキームを作っていく。そうした仕事に携わって2年半もの間、現地に行けないことが辛かったですね。アンゴラという国の人も文化も全く知らないし、現地の状況が想像もつかないし、お客様の顔も画面越しでしか見たことがない中で、正直、モチベーションを保つのが難しかったんです。早く現地に行きたいという思いばかりが募っていきました。

現地を見ることで理解できることがたくさんある

2022年11月に初めての海外出張でアンゴラに行くことができました。アンゴラは1975年から2002年まで内戦があった国で、それから20年経っているとはいえ、いろいろな不安がありました。街の中心は思ったよりきれいで、食事が美味しいんです。でも車で5分も離れるとスラム街があります。街の外は内戦で不発弾がまだ残っているので移動の時は気をつけなければいけません。武装集団による戦闘やテロのリスクは少ないけれど、強盗や窃盗といった犯罪はあるので夜は出歩いてはいけないといったこともわかりました。インフラはまだまだ整っていません。この国でやらなければならないことはたくさんあると身をもって知ることができました。それからは複数回、必要に応じて海外出張に行っています。

現地の移動で飛行機が飛ばなくて、代わりに車で半日~1日移動したり、何もない一本道で車がエンストして助けを待ったり、食中毒を起こしたり......トラブルは多いですが、ある程度は慣れて、強くなりました。会話は全て英語です。大学入学まで一言も英語を話したことがなかった私が、アフリカの政府や国際機関や金融機関を相手にプレゼンしたり交渉したりしているのですから、驚きですよね。本当にこの大学には感謝しています。

国際社会科学部に入ってよかったと思うことは、まず自分のツールとして英語が身についたこと。また、さまざまな専門分野を座学でただインプットするだけでなく、プレゼンテーションやディスカッションを通じてアウトプットする機会が多かったのもよかったですね。あの経験は本当に自分の実力になっているなと実感しています。

大学入学までに具体的なやりたいこと、進みたい道を見つけることができない人でも、4年間の学生生活を通し、自分の道を見つけることができるような学習カリキュラムが整っています。入学後も食わず嫌いすることなく、さまざまな授業や学びに対して、前向きな姿勢をもって取り組んでほしいですね。多種多様なバックグラウンドを持つ人がいる学部なので、良い点は吸収しつつ、自分自身を見失わずに、何か一つでも熱中して取り組めることを見つけてほしいと思います。

※所属・仕事内容など掲載内容は取材当時のものです。

4年間の流れ

1年次

グローバルに活躍したいと考えISS入学。英語力を高めるため週6コマの英語科目で自らを鍛えた。

2年次

オレゴン大学へ留学し日本人の少ないエリアで英語だけで生活。語学力に加え行動力や計画性も鍛えられた。

3年次

入学時からTOEIC換算で290点語学力UP。リーダーシップをテーマとしてゼミでグループ研究を行う。

4年次

勉学、海外研修、部活と全てに力を注いだ4年間。初志貫徹でグローバルに活躍することを目指し総合商社へ。