卒業生の声

好奇心の赴くままに。数学が苦手だった私が外資系半導体メーカーの経理職についた理由

「財務諸表が読めるとおもしろい」。そんな父の言葉を胸に、高校生で簿記3級を取得。生徒会の会計を担当し、大学では会計学と法律を学びました。高校の時の短期留学で言葉の壁によって好奇心が満たされないのが悔しくて、英語の勉強にのめり込んだといいます。会計と英語、この2つの軸をぶらさずに、好奇心の赴くままに生きてきたという小栗さんが辿り着いた場所とは。

好奇心の赴くままに。数学が苦手だった私が外資系半導体メーカーの経理職についた理由
小栗 弥一郎

2016年に国際社会科学部入学。
2020年国際社会科学部国際社会科学科卒業。

父の影響で幼少期から企業会計に興味を持つ。2018年2月~2018年8月にはニューサウスウエールズ大学に留学。大学ではガルシア・クレマンス教授ゼミ(会計学)、星明男准教授ゼミ(会社法)の2つのゼミに所属。2020年ソフトバンクに入社、会計を担当。2022年より米外資企業のテキサス・インスツルメンツ勤務。

好奇心の赴くままに。数学が苦手だった私が外資系半導体メーカーの経理職についた理由

小学生の時、財務諸表という言葉を知った

幼少期から、好奇心の赴くままに生きてきた気がします。池の中にいる生き物が気になったら、靴のまま構わず池に入ってしまうような子どもでした。そんな私が会計の道に進んだのは、株式投資をしていた父の影響なんです。父はいつも真剣に、業界を調べたり、企業を調べたりしていたので、私の好奇心も自然とそちらに向いていました。「企業はこうやって成長するんだ」というような父の話を聞くのが好きでした。小学生高学年ぐらいの時、どうやって企業を調べているのかと聞いたら、「財務諸表にお金の流れが書いてある。読めるようになったらいい」と父に言われたんです。その時はもちろん何かわからなかったんですけどね。

中学生になっても私の好奇心は膨らんだままでした。会計の本を買って少しずつ勉強を始め、高校生の時に簿記3級を取得しました。そうなると実際に会計をやりたくなって、生徒会の会計担当になって文化祭の予算配分を決めたり、部活の予算の振り分けをしたり、寄付金の使い道を決めたりしていました。面白かったですね。

高校の時にもう一つ熱中したのが英語の勉強でした。高校1年の夏に2週間、カナダのバンクーバーにサマースクールに行ったのですが、英語が全く話せなくて、あまりいい記憶がないんです。好奇心がいくらあっても言葉が通じないと何もできないのがもどかしくて、悔しくて、それから英語ばかり勉強をするようになりました。高校時代は英語だけ成績が上がってきましたね。実は数学は昔から苦手で。「それで会計職が務まるの?」とよく聞かれますが、会計は、四則演算ができて、エクセルが使えれば務まるので、難しい数学は必要ないんですよ。

新しいものはたいてい面白い。一期生になれるこの学部を選んだ

学習院の国際社会科学部を選んだ一番の理由は、新しく設立された学部だということ。新しいものってたいてい面白いじゃないですか。ゲームでもショッピングセンターでもレストランでも。その法則が私の中にあって、だから学部も新しいものは面白いはずだと。それに、社会科学を英語で学ぶというのが魅力的でしたね。大学でも英語の勉強はしたいけど英文科に行ってシェイクスピアを読むというのはちょっと違うと思ったし、会計や経営、法律など実務的な分野を英語で学べるのがいいと思ったんです。しかも一期生になれる。絶妙なタイミングだったんですよね。

大学時代で思い出深いのはやはり留学ですね。オーストラリアのシドニーにあるニューサウスウェールズ大学に、大学2年次の2月から同年の8月までの半年間、トビタテ留学JAPANという国の奨学金制度を利用して協定留学で行きました。留学生クラスではなく、普通の大学生に混ざって一緒に授業を受けるので大変でした。課題も多いし、テストも頻繁にあるし、「来週までに40ページ読んできてね」みたいなことはしょっちゅうでした。


学生はみんな真剣で、授業では活発にディスカッションに飛び込んでいくし、すごい熱量で、そこに追いつくことがまず困難でした。何より大変だったのは、オーストラリアは移民の国なので、イギリス人やインド人、中国人など、さまざまな国の先生がいて、英語のアクセントがみんな違うんです。今、グローバル企業に勤めていていろいろな国の人と喋るので、あの時の経験がすごく生きています。

学び続けてきた会計と、法律という2つ目の軸

大学では1年生の必修授業「入門演習」で会計学のガルシア先生に出会い、本格的に会計を選考のメインにしようと決めて4年間会計学をメインに学びました。4年次の卒論も会計に関するものでしたが、同時期にもともと興味のあった法学もゼミに所属して学んでいました。一見あまり関係がないように見える2つの分野ですが、企業会計は法律に則って行わなければならないなど、強いつながりがあります。会社に関する法律を学び、企業会計を法律の側面から理解していくのは面白かったですね。過去の企業の不祥事についてケーススタディで学んだりして、会計と法律の橋渡しのような部分を学ぶことができたのは、とても貴重な経験です。

会計の仕事にしか就きたくなかった。経理のサマーインターンに参加

就職活動は少し難しい面がありました。私は経理の仕事につきたかったのですが、文系は一括採用して入社後に配属が決まるというのが一般的で、新卒で経理職を採用している会社は多くないんです。企業の中で経理部門というのはそもそも人員が少ないですし、大量に採用する大手に就職活動して経理配属を希望したところで、何百人という新入社員の中で経理配属を約束させるのは至難の技だなと。困っていろいろ探したところ、ソフトバンクのサマーインターンシップに経理コースがあったので、これはチャンスかもしれないと思い応募しました。

インターンシップは2週間あり、資金調達や、収益管理、固定資産などさまざまな部門を回って業務体験をさせていただきました。インターンが終了した直後に早期選考で経理として採用してくれるというお話をいただいたので、入社を決めました。ソフトバンクには2年在籍しました。


その後転職した理由は、仕事で英語を使うことができなかったからです。せっかく4年間必死で英語が使えるようになったのに、使わずに錆び付いていくのがもったいないと思いました。次は自分で英語を使える環境を選ぼうと外資系企業に絞って転職活動をしました。


2022年夏から勤務しているテキサス・インスツルメンツはアメリカのダラスに本社がある、世界的な大手半導体メーカーで、私は今、その日本支社に勤務しています。主な仕事は日本にある固定資産の管理です。当社には福島や茨城に、設計した電子回路(IC)を半導体ウエハ表面に形成する前工程の工場があるほか、営業拠点も複数ありますので、そうした拠点の機械設備やサーバーといった固定資産の管理をしています。


固定資産の管理をしていると設備投資の状況がわかるのが面白いですね。ただの数字の動きだけではなく、実際にモノが動くので。市況や売上が変動するよりも前に、世界の半導体市場が今どういう状況にあり、これからどうなっていくのかということが見えてきます。どういう産業で今どういう半導体が必要とされていて、今後どんなテクノロジーが伸びていくのかといったことも考えられるのも面白いです。また英語を活かし、国を超えて人脈を広げ、互いに学びあうことで、自分の成長を感じています。

好奇心の赴くままに、自由な自分でいられる学部

大学時代を振り返れば、この学部は本当に自由で、やりたいと思ったことはなんでもできたので、自分に合っていましたね。新設された学部で、先生方も事務の方も私たち学生も、みんな手探りだったので、手を挙げればなんでもできる。オープンキャンパスもほぼ学生主体で進めていました。好奇心が満たされる学部というのでしょうか。これほど多彩な専門の先生がいる学部は多くないと思います。先生との距離はすごく近いし、質問すればなんでも答えてくれる。専門に学びたいことは中に入ってからでも見つけて学んでいけるし、世界のどこでも働ける英語力がついてくる。好奇心がある人にとってこんなにいい場所はないんじゃないかなと思います。

※所属・仕事内容など掲載内容は取材当時のものです。

4年間の流れ

1年次

入門演習で会計学のガルシア先生に出会い本格的に会計をメインで学ぼうと決めた。

2年次

ガルシア先生のもとで会計学への理解を深めた。オープンキャンパス運営に初参加し、留学への準備も進めた。

3年次

2年次下期からシドニーに留学し、主に国際会計を学ぶ。国内通信業のインターンにも参加し、冬に内定。

4年次

卒業演習テーマは「監査と人工知能」。並行して星先生の法学ゼミも履修し、会計を法律的な側面から分解して理解を深めた。