卒業生の声

異国の地での暮らしで大きく広がった視野。 社会人生活を送った後、ドイツの大学院に進む。

ヨーロッパの在日商工会議所に勤務した後、ドイツの大学院へ進学するという道を選んだ上條瑠子さん。その選択の背景には、学部在学中に留学したエストニアでの経験があったといいます。学びの原動力となったものは何だったのでしょうか?

異国の地での暮らしで大きく広がった視野。 社会人生活を送った後、ドイツの大学院に進む。
上條 瑠子

2018年に国際社会科学部入学。
2022年に国際社会科学部国際社会科学科卒業。

卒業後は4年次からインターンをしていたヨーロッパの在日商工会議所に就職。フランスの企業のサポートを担当。2年半勤務した後、一念発起して退職し、ドイツの大学院に進学。

異国の地での暮らしで大きく広がった視野。 社会人生活を送った後、ドイツの大学院に進む。

馴染みのない国だからこそ味わえたワクワク感

エストニアという国をご存知でしょうか? 北欧にある人口130万人ほどの小さな国です。私はこの国にまったく馴染みがなく、何の知識も持ち合わせていませんでした。しかし、国際社会科学部在学中に留学してからとても大好きな国になりました。

国際社会科学部では、全員が海外留学を経験しますが、私は大学全体として実施している交換留学制度を利用しました。その理由の1つが、提携しているパートナー校が多く、馴染みのない国に行けると考えたからです。誰でも知っているようなメジャーな国に留学するという選択肢もありましたが、私はみんなが知らないような国に飛び込み、一生の話のネタになるような経験をしてみたかったのです。そこで、選択肢に挙がってきた留学先がエストニアでした。エストニアには日本人がほぼ住んでおらず、インターネットで検索しても情報はわずかです。自分で行って、体験してみないとどんな国か分からない。そこにとてもワクワクしたのを覚えています。

実際に留学して滞在してみると、期待以上の楽しい日々が待っていました。現地で仲良くなった友人から聞くことで初めて、どんな食文化があって、どんな名所があるのか分かりました。事前情報が無いからこそ、毎日新しい情報に接することができ、とても刺激的でした。

国民性についても知識がなかったのですが、現地の人と接しているうちに、小さな国だからこそ国民としてのアイデンティティが強く、自国の文化に誇りを持っていることが分かってきました。多様性が叫ばれている時代ですが、国家というものを強く感じる貴重な経験をすることができました。

『学ぶことを諦めない』を大切に

大学のカリキュラムのおかげで、留学の下準備ができていたため、不安を感じることなく渡航することができました。1年次から日本語と英語のバランスをとりながら、社会科学の基礎知識を学んでいたことで、留学先でもただ英語を学ぶのではなく、英語を道具として一歩先の学びを得ることができました。また、留学先ではグループワークでプレゼンをすることが多かったため、1年次からプレゼンテーションの手法に関する授業を受けていたことがとても役に立ちました。

エストニアの大学では英語で授業が行われましたが、日常会話と違ってアカデミックな内容を聞き取るのは大変でした。初期の理解度は50%程度だったのではないでしょうか。専門用語が1つ分からないと、その後の内容も全部理解できなくなってしまいます。図書館にこもって独学もしましたが、自分の力ではどうにもならないことがわかり、友人に質問したりしながら何とか授業についていきました。最初の1週間で挫折しそうになってしまいましたが、1学期間、努力を続けてきた結果、少しずつでも成長できていることを実感。その時に得た『学ぶことを諦めない』という考え方を今でも大切にしています。

留学中は、他の学生からもたくさん刺激を受けました。日本にいた時は、正直なところ、積極的に学ぶ姿勢ができていなかったように思います。しかし、留学先では、学生たちがみんな積極的に意見を述べ、分からないことがあればすぐに先生に質問します。その姿を見て、間違っていてもいいからとにかく自分の意見を表明する姿勢が身につきました。

現地の大学院生やPh.D.(日本における博士)と交流したことも私の人生に大きな影響を与えています。彼らは年齢が上ということもありますが、知識量が圧倒的でいろいろなことを教えてくれました。ずっと学び続けてきた結果、高い専門性を身につけているのですが、かつては私と同じような立場だったからこそ優しく手を差し伸べてくれるのです。留学するまでは、大学院に進学することは想像もしていませんでしたが、彼らと接したことで卒業後の選択肢として考えるようになりました。

学びたい気持ちが高まり大学院進学を決意

留学生活は充実していましたが、後半からコロナ禍が発生し、授業はすべて寮からのオンラインになってしまいました。帰国後も、ステイホームが続いていたこともあり、積極的にオンライン授業、3年次に単位を全て取得しました。就職活動にも力を入れました。当初は日本の専門商社や外資系の企業などに就職して、海外に駐在したいと思っていたのですが、縁あってヨーロッパの在日商工会議所でインターンをすることになり、4年次からフランスの企業のサポートを担当、そしてそのまま就職しました。日々、英語を使う仕事だったため、勤めている期間にこれまでで最も英語力が伸びたと実感しています。しかし、大学院で学び続けたいという気持ちはずっとどこかで持ち続けていました。

思い切って大学院に進学することに決めたのは、在職中に海外旅行をしたことがきっかけでした。フランスの企業であったため、バカンスを長めに取ることができ、それを利用してエストニアに留学中にできた友人たちを訪ねる旅に出たのです。ヨーロッパや南米なども回ったのですが、そうして世界の広さを知れば知るほど、もっと世の中について学んでみたいという気持ちが強くなり、もう一度、学業に戻ることを決意しました。

海外の大学院を選んだ理由の1つは英語が世界共通語であるため、アクセスできる情報や資料が多く、学問をするうえで大きなメリットがあると感じたこと、もう1つはさまざまなバックグラウンドを持つ先生から学ぶことで視野を広げたいと思ったことです。ドイツの大学院を選んだのは、エストニアに留学した際にヨーロッパを身近に感じていたことと、私が専攻する「ヨーロッパの文化と経済」の分野において核となる国の1つだったことが主な理由です。

国際社会科学部はまだ見ぬ世界への扉

大学院では、国際社会科学部と似たプログラムが用意されており、「ヨーロッパの文化と経済」に関して幅広い角度から学ぶことができます。学部時代に学んだ基礎知識はここでも大いに生かされています。進学して間もないため、修了後の進路についてはまだ具体的に考えていません。以前はヨーロッパの企業に就職するのもいいと思っていましたが、現在はせっかく日本人として生まれたのだから日本の企業に就職して、海外と繋ぐような仕事をするのも楽しそうだと思っています。

私にとって国際社会科学部は、まだ見ぬ世界への扉でした。自分の知らない世界に飛び込む勇気のある人や、さまざまなチャンスを生かしたいと考える人にとって、国際社会科学部には理想的な環境が整っていると思います。授業、セミナー、留学など、大学にはさまざまな世界に繋がっている扉がたくさんあるので、学生の皆さんにはそうした環境をぜひ存分に活用してほしいと思います。また、国際社会科学部に進むとすでに英語が堪能な帰国子女も多く、焦りを感じる人もいることでしょう。実際、私自身もそうでした。しかし、入学してから授業で大きく英語力が高まりましたし、それを留学という実践の場で使うことで、自分でも想像していなかったほどの英語力が身につきました。『学ぶことを諦めない』という気持ちで努力を続ければ、入学前の経験は問題にならないほど飛躍的に成長することができるはずです。

※所属・仕事内容など掲載内容は取材当時のものです。

4年間の流れ

1年次

英語でのライティングやプレゼンテーションなどを通して、海外留学に必要なスキルを身につける。

2年次

2学期から1年間エストニアへ留学。ビジネスや経済など、学部で基礎を学んだ科目を中心に履修。

3年次

コロナ禍のため、留学先の授業はすべてオンラインで履修。帰国後は履修量を増やして単位取得を完了。

4年次

秋からヨーロッパの在日商工会議所でインターンを開始。そのまま就職してフランス企業のサポートを務める。