演習(ゼミ)

「自由な発想と創造力を培おう」伊藤教授ゼミ(国際経済などの実証研究)

掲載日:2025/03/19

「自由な発想と創造力を培おう」伊藤教授ゼミ(国際経済などの実証研究)

国際社会科学部―学習院ISSにおける魅力の1つ、ゼミ。ISSでは「専門演習」「卒業演習」という名称でゼミを開講しており、2年生までに学んだ社会科学の基礎知識をベースに、興味のある分野の専門家のもと研究に取り組みます。
ゼミとは何をするものなのか?個性豊かな各ゼミの魅力とは?

今回は、国際経済学を専門とする伊藤教授と、そのゼミ生にお話を伺いました。

伊藤先生のゼミ(専門演習・卒業演習)で扱うテーマは何ですか。

専門演習Iでは、統計及び計量経済分析の基礎をグループにて主体的に学習します。その際には、完璧に理解できるまで履修者間で質疑応答を繰り返します。10~15名程度の履修者数ですので、皆和気あいあいと質疑応答を通じて学んでいます。専門演習IIでは、グループもしくは個人単位でテーマを決めてデータ分析を実施します。データ分析の際には、統計ソフトを使用することよって大量のデータを処理し(テーマによる)、因果関係などのメカニズムを見出す方法を身に付けます。ISSの在学生は他の大学・学部に比して英語運用能力に秀でており、そのことは社会も認知しています。同英語能力に加えて、データ分析を身に着けて就職活動や更なる進学に向けて実力を高めることが私のゼミの目標というわけです。扱うテーマは各グループ、個人が自由に決めています。

卒業演習では、約10か月をかけて個人による単著論文もしくはグループによる共著論文を作成します。

専門演習II、卒業演習におけるテーマは個人もしくはグループが自由に設定します。データ分析であれば、私の専門である国際経済に限りません。これまでのテーマで幾つか例を挙げると、国際経済の分野では、「英国のEU離脱が英国の貿易に与える影響に関する実証分析」、「第一次トランプ政権の対中国貿易戦争が米中貿易に与えた影響に関する実証分析」、「インバウンドの増加と日本からの輸出の増加との因果関係に関する実証分析」、「外国直接投資に対して権威主義は負の影響を与える一方で民主主義は正の影響を与えることを示した実証分析」、「映画など文化財の貿易の要因に関する実証分析」、「急激な円安が日本の産業の輸出入に与えた影響に関する実証分析」、「日本の自由貿易推進が日本の食品産業の高付加価値化に与えた影響に関する実証分析」、「ロシアのウクライナ侵攻に対する西側諸国による貿易制裁の効果に関する実証分析」、「長期にわたり日本市場に定着する対日外国直接投資企業の特性について明らかにした実証分析」、などがあります。一方で、その他の分野においては、「男女雇用機会均等法などの政策が男女の賃金格差是正に与えた影響に関する実証分析」、「韓国アイドルグループの成功要因に関する実証分析」、「アルペンスキーにおいてルールが選手の成績に与える影響についての実証分析」、などがあります。

ゼミではどのような活動を行っているのでしょうか。

上記の通り、専門演習Iでは統計学及び計量経済学の基礎をグループで学び、専門演習IIでは専門演習Iにて学習したことを使って、グループまたは個人で設定したテーマについて主にデータ分析を実施します。専門演習I、専門演習II共に、1~2回ゲスト講師として、ビジネス界で活躍する方をお招きして、企業が求める人材像について考えます。

卒業演習では学術研究を実施し、論文を執筆します。毎年平均3-4名の履修者がそれぞれ別のテーマを扱いつつも、統計ソフトの使い方や計量分析手法について教え合いながら、研究を推進しています。もちろん、指導教員である私と毎回の授業で進捗具合を確認し議論を重ねて、研究を進めていきます。

「専門演習」「卒業演習」の魅力、醍醐味とはなんでしょうか。

演習の醍醐味は、自由に主体的に考えて試行錯誤を繰り返すことによって、新たな知の世界を切り拓くことです。特に、卒業論文は、大学教育の集大成です。大学での学びの真骨頂は、知の創造です。高校までは学生は先人が築き上げてきた知の「消費者」であり上手に消化し自身の糧とすることが目標でしたが、高等教育機関である大学の最終目標は知の「生産者」になることです。アニメを楽しむ消費者からアニメを作る側にまわるようなものです。作品(論文)という新たなものを生み出すには、産みの苦しみが伴いますが、それまでの受け身の学習とは桁違いの学びの量と質です。

 

ゼミ生インタビュー(2021年度入学・鵜飼ひかるさん)

私は3年次の後期頃から、卒業演習について考えていました。当時履修していた伊藤先生の授業がきっかけで、対日直接投資に関する研究を行いたいと思い、伊藤ゼミを志望しました。

伊藤ゼミはとても少人数であるため、一人ひとりが先生から丁寧な指導を受けることができます。卒業論文を執筆するのは私たち学生ですが、壁にぶつかった時はすぐ先生に相談できます。また、ゼミ生の研究テーマはそれぞれ異なりますが、困ったときはお互いに助け合っています。特に、私は3年次に他のゼミに所属していたということもあり、助けてもらうことが多く、とても感謝しています。

このような環境のおかげで、根気強く一つのことを続けていくことができるようになりました。卒業論文では、地道な作業が多く、仮説を検証できるようになるまで、長い時間がかかります。しかし、地道な作業を終えてから、仮説を検証していく過程はとても達成感があり、楽しいです。思うようにいかないことも多々ありますが、その時は他の角度から考えることで、研究を進めていきます。

今後は、卒業論文を完成させることが第一の目標です。ただ完成させるだけではなく、質の高い卒業論文を完成させたいと思っています。

ゼミ生インタビュー(2021年度入学・並川詩歩さん)

私は現在、伊藤ゼミにて、ロシアのウクライナ侵攻における貿易規制を回避するための迂回貿易について卒業論文を執筆しています。国際問題に関心があり、それを統計分析の観点からアプローチしたいと考えていたため、国際貿易やデータ分析を扱う伊藤ゼミを志望しました。また、3年生前期までの1年間留学していた私にとって、後期からゼミに参加することに不安はありましたが、伊藤ゼミ(専門演習)は人数が多く、様々な背景を持つ人が所属していたことも魅力の一つでした。

卒業演習には、現在4人所属しており、アットホームな雰囲気が特徴です。年度の初めには教授やゼミ生とともに研究テーマについて議論を重ね、考えを深めました。伊藤先生は日常の会話や気づきから生まれるアイデアや疑問を大切にされており、その影響で私自身も日々の発見を意識するようになりました。研究は個人で進めていますが、行き詰ったときには互いに相談し、新しい視点やアイデアを共有しています。このような協力は研究の質を高めるだけでなく、精神的な支えにもなっています。研究では統計分析ソフト「STATA」を使用しており、データ構築のスキルや批判的思考力が培われていると感じています。卒業論文の提出が近づいているため、ゼミ生全員で協力しながら完成に向けて取り組んでいこうと思います。

※掲載内容は取材当時のものです。