卒業生の声

交換留学で訪れた北欧での体験が海外大学院への進学を決意する原動力に

学部時代に交換留学でノルウェーに滞在した経験のある辻井杏さん。さらにグローバルな視点を身につけ、国籍を超えたコミュニケーション能力を磨くために、スウェーデンの大学院への進学を決めました。現地でどのような暮らしを送っているのか? 今後の目標は何なのか? お話を伺いました。

交換留学で訪れた北欧での体験が海外大学院への進学を決意する原動力に
辻井 杏

2020年に国際社会科学部入学。
2024年に国際社会科学部国際社会科学科卒業。
同年にスウェーデン・ウプサラ大学大学院に進学。

4年次から臼井哲也教授のゼミでマーケティングについて学び、卒業論文を執筆。現在はスウェーデン・ウプサラ大学大学院でデジタルマーケティングを学ぶ一方、週末はスキーなどのアクティビティを楽しむ。

交換留学で訪れた北欧での体験が海外大学院への進学を決意する原動力に

高校生の頃に芽生えた北欧への憧れ

海外への憧れが芽生えたのは高校生の時です。授業で自分が興味を持った国について調べたのですが、その際、北欧の国々の幸福度が高いことを知り、いつか行ってみたいと思っていました。

国際社会科学部に進学を決めた理由としては、やはり全員、海外研修が必須であるという点が大きかったです。これまでの留学先の実績として、北欧の国がリストに載っていたことも後押しになりました。

もちろん、留学以外のカリキュラムにも魅力を感じました。英語そのものを学ぶのではなく、英語を使って学問をする環境が整っていたことや、社会科学5分野を網羅的に学んだうえで自分が興味を持った分野を専門的に掘り下げられる仕組みは、私にとって理想的でした。

大学進学を楽しみにしていましたが、コロナ禍のせいで1年次はキャンパスで学べた日は1日もありませんでした。しかし、先生方がそれぞれ工夫しながらオンライン授業を実施してくれたため、学ぶことの面白さをちゃんと感じることができました。2年次には対面授業も始まり、キャンパスに通える日が増えました。落ち着いた雰囲気のキャンパスはとても居心地が良く、授業を通して友人もでき、思い描いていたキャンパスライフを送れることがとても嬉しかったです。学びに関しても充実しており、幅広い分野の授業を履修できたことで、多くの知識が身についただけでなく、専門的に学びたい分野が明確になり、その後の進路を考える指針にもなりました。

留学先で味わった苦労と得られたこと

ノルウェーに留学したのは、2年次の2学期からの1年間です。幸いコロナ禍も収まりつつある時期であったため、留学できて安心しました。現地の大学では、北欧の社会制度や企業文化、ジェンダー論などについて学びました。授業は英語で行われ、現地の学生も英語が話せると聞いていたので安心していたのですが、いざ行ってみると私の英語力では想像以上にコミュニケーションを取るのが難しく、最初はとても苦労しました。日常生活レベルの意思疎通はなんとかできたのですが、グループワークなどでアカデミックな議論になるとニュアンスを正確に伝えるのが難しく、学校が終わった後も家で独学により英語力を磨いていました。

苦労しながらも、得られたものも大きかったです。留学先には数十カ国から留学生が集っていました。それぞれ国籍も育ってきた環境も異なりますが、みんな自分の人生を主体的に選ぼうとする姿勢を持って学問に真剣に取り組んでおり、大きな刺激を受けました。また、「アカデミックライティング」という授業で学んだ英語で学術的な文章を書く方法は、今でもとても役に立っています。このように、留学先で英語に苦労した悔しい経験や、世界各国の友人たちとの出会いで視野が大きく広がったことが、海外の大学院進学に挑戦することを決めた原動力になりました。

卒業論文を書き上げたことが大きな自信に

3年次に留学先から帰国した時点では、ゼミにも所属せず、卒論も書かずに卒業する予定でした。しかし、海外の大学院への進学を志したのと同じタイミングでとても興味深い授業に出会い、その後のプランが大きく変わりました。マーケティングを専門とする臼井哲也教授が担当する「Global Marketing」と「Marketing Strategy」の2科目を履修したのですが、どちらもとても面白く、私がやりたいことはこれだと思いました。そこで、臼井教授のゼミに所属してもっと深く学びたいと考えました。

私は3年次の途中まで留学していたため、4年次から臼井教授のゼミに参加しました。しかし、通常は3年次から所属するため不安がありましたが、臼井教授も他のゼミ生も私を暖かく迎えて入れてくれました。卒論を書かなくても卒業はできたのですが、学生時代の学びを何か1つの形として残したいと思い、卒業研究をスタート。大好きなK-POPアイドルを売り出す際によく見られる"熱狂マーケティング"をテーマに、それにまつわる現象や戦略について掘り下げました。

海外の大学院への進学を視野に入れていたため、卒業論文は英語で執筆しました。4年次から研究を始めたため、スケジュールは非常にタイトで投げ出したいと思ったことが何度もありましたが、臼井教授に親身になってサポートしていただいたこともあり、なんとか最後まで書き上げることできました。卒論の執筆を通して、自分で課題を見つけることが習慣化したこと、苦労しながらも最後までやり遂げた経験は、現在の大学院での学びでもとても役に立っています。いま振り返ってみても、臼井ゼミでの1年間は非常に充実したものでした。

理想の学びを得るべくスウェーデンの大学院を選択

帰国したばかりの頃は就職活動をしようと考えていましたが、本当にやりたい仕事は何なのか考えれば考えるほど分からなくなってしまいました。そこで選択肢を広げて将来を考えた結果、大学院に進学してもっと学問を続けたいという結論に至りました。

日本の大学院に進学する選択肢は最初からありませんでした。学問を続けるだけでなく、英語での実践的なコミュニケーション能力を身につけることや、さまざまな国籍の学生たちと共に学ぶことで視野を広げることも目標としていたからです。留学先としてスウェーデンを選んだのは、単純にスウェーデンという国に興味があったのと、学部時代にノルウェーに留学した経験から、北欧の教育システムが自分に合っていると感じたからです。

私が進学したウプサラ大学の大学院は筆記試験がなく、書類審査のみの選考でした。私は必要書類と共に英語で執筆した卒論を提出した結果、合格できたのですが、やり取りをする中で担当の先生から"面白い論文だ"というコメントをいただいたことがとても嬉しかったです。

私が進学したのは、「デジタルメディア&ソサエティ」という学部です。選んだ理由は、学部時代にデジタル技術を使ったマーケティングについて十分に学べていないと感じたからです。今後、さらに重要性を増し、必要不可欠になる分野であるため、しっかり学んでおきたいと考えました。現在は、企業がAIを活用している事例や社会に与える影響などについて、社会科学的な視点から研究しています。主体的に学ぶ姿勢が求められるため、グループワークやプレゼンの機会が多く、忙しくも刺激のある日々を送っています。

オフの日もできるだけ充実したものにしようと努力しています。スウェーデンは日が沈むのが早く、暗い時間が長いため、冬季鬱になりやすい傾向があるため、なるべく人と会うことで精神を健康に保つように気をつける必要があるのです。スウェーデンはあまり娯楽もないため、人と会ってすることといえばパーティーです。休みになると友人たちと誰かの家に集まってパーティーを開きます。それぞれ料理を作って持ち寄るのですが、出身国が違うのでいろいろな国の料理を味わうことができるのが醍醐味です。私はよく手巻き寿司を作って振る舞うのですが、いつも人気ですぐになくなります。また、どこでもスキーを楽しめるのもスウェーデンの魅力ですね。車で少し走れば良質なゲレンデがあり、たっぷりスキーを満喫できます。日本にいた時よりも運動する機会は増えたかもしれません。

ウプサラ大学の修士課程はユニークなカリキュラムを採用しており、1年間で修了することができます。そのため、進学したらすぐに次の進路を決めなくてはなりません。私は修了後、日本の企業に就職する道を選ぶ予定です。海外で就職することも考えましたが、日本の企業で社会人として必要なスキルを身につけることも必要だと考えたことが理由の1つです。もう1つの理由が、日本の製品やサービスを世界に広めたいという目標ができたからです。日本にいた時は海外への憧れが強かったのですが、留学先では逆に日本に暮らしていることを羨ましがられたり、日本の製品や文化が大好きだと言われたりすることが多く、日本人であることをもっと誇りに思っていいと感じました。現在、就職活動に取り組んでいますが、グローバル展開に力を入れている企業に就職し、大学で学んだマーケティングの知識を使って日本発の優れた製品やサービスを海外に広く紹介することが目標です。社会に出ても学び続ける姿勢を忘れずに、MBAの取得などにも挑戦していきたいと思います。

※所属・仕事内容など掲載内容は取材当時のものです。

4年間の流れ

1年次

社会学の5分野を広く履修して基礎的な学びを深めつつ、専門的に学びたい分野を模索する。

2年次

2学期から1年間、ノルウェーの大学に留学。グローバルな環境で、北欧の社会制度や企業文化について学ぶ。

3年次

2学期に帰国してから受けた授業に感銘を受け、マーケティングを学ぶべく臼井教授のゼミに入室を希望。

4年次

臼井ゼミで熱狂マーケティングに関する卒業論文を執筆。スウェーデンのウプサラ大学大学院への進学が決まる。