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大学院進学を選んだ卒業生からの期待 ― 国際社会科学研究科(仮称)設置計画に寄せて ―

大学院進学を選んだ卒業生からの期待  ― 国際社会科学研究科(仮称)設置計画に寄せて ―

学習院大学は令和8(2026)年4月、大学院に「国際社会科学研究科国際社会科学専攻(修士課程)」(仮称)を設置することを計画しています。

本研究科では、SDGsなどに代表される地球規模の課題解決に向け、現代の国際社会において必要とされる人材として、「経済学・経営学・社会学・地域研究・法学に関する専門知識」「データ分析能力」「課題設定・解決力」「論理的思考力」「創造力」「国際的視野」「英語コミュニケーション能力」を備え、社会の様々な変化に主体的かつ柔軟に対応できる専門家やリーダーシップ層を養成します。

大学院進学というキャリアとは。そしてそれを選んだ卒業生が国際社会科学研究科(仮称)へ寄せる期待とは何か。国内・海外の大学院進学というキャリアを選んだ卒業生2名からお話を伺いました。ぜひインタビューをご覧ください。

※内容は設置届出申請中のものであり、今後変更となる可能性があります。
※所属は掲載時点の情報です。

浅井 クレイトンさん


アメリカ・ジョージタウン大学大学院 Department of Government / Democracy and Governance在学中。2019年度 学習院大学国際社会科学部入学、2023年度卒業。アフリカ地域研究・国際開発を専門とする3年次ゼミを経て、経済学や実証分析を主とする伊藤匡教授ゼミにて卒業論文を執筆。題目は"FDI Matters for Democracy" 。卒業論文優秀賞を受賞。

大学院に進学しようと思ったきっかけや理由を教えてください。

高校で留学した時、そして学部在学中に抱いていた「世界」についてもっと知りたいという気持ちのそのままの延長です。僕は特に、政治の枠組みで世界について勉強したいと考えたので、世界政治の中心であるワシントンDCで学ぶ機会を与えてくれるジョージタウン大学には非常に惹かれました。

大学院での学びの面白さや、難しさはどんなことでしょうか。

その道のエキスパートから直接話を聞き、様々なバックグラウンドの学生と議論できる点が何より興味深く、面白いです。授業や研究を行いながらインターンとバイトも掛け持ちで行っているのですが、自由時間がもう少しほしいなとはいつも思っています。

修士課程修了後のキャリアは、どのようなものを考えていますか。

国際社会科学部では主に国際開発を学び、興味を持ち続け大学院に進学したこともあって、USAID(アメリカ国際開発局)などの関連した仕事に就くことを目指していました。ただ、アメリカ国内の情勢により、それらの国際開発に関する仕事や機関の先行きが極めて不透明となってしまいました。そのため、現在はデジタル・ポリティカル・キャンペーン (マーケティング系の会社を選んでインターンをしており、就職もこちらでと考えています。

大学院での学びが最も活きると考えていた就職先の状況が変わってしまったことは大変残念ではありますが、自分で思ったよりも様々な職種や選択肢を抵抗感なく受け入れることができました。このあたりは、国際社会科学部で4年間幅広く社会科学に触れ、新しい学びに前向きに取り組んできた経験が生きているような気がします。

大学院進学を志す/迷っている後輩へのメッセージをお願いします。

リーディングやペーパー(論文執筆)などの課題に追われ、苦労するのが怖いと思う方も多いかもしれませんが、その分終わった時の喜びは格別です。学問、そして仲間との時間を通し、大きく視野の広がる一生涯の経験につなげることも可能だと思います。

設置計画中の国際社会科学研究科(仮称)に期待することはなんでしょうか。

学際的で多角的な学びを得られる国際社会科学部は、自分の好みや適性を見極める上でも適しています。そのような土壌が整った上で、より高度に深く学ぶ環境に身を置くということは、学部から大学院に渡る学びを通して、人としての厚みを大きく高めるチャンスだと思います。国際社会科学研究科(仮称)では、実際にこのような成長を実現することができると期待しています。

染谷 伊蓉子さん


東京大学大学院 経済学研究科 経済専攻 経済史コース在学中。2020年度 学習院大学国際社会科学部入学、2024年度卒業。経済学を専門とする乾友彦教授のゼミに所属し、卒業論文を執筆。題目は"The Impacts of Colonial Institutions on Gender Parity"。卒業論文最優秀賞を受賞。

大学院に進学しようと思ったきっかけや理由を教えてください。

大学に入学する前から、「学部の先にもっと高度な勉強があるらしい」ということを知っていたので、自分の学びは学部だけでは終わらないはずだと考えていました。また、世界に存在する戦争や貧困、経済格差をはじめとする様々な課題の解決に、自分なりに貢献したいと思っていたのですが、まずは、その貢献をするためのツール、すなわち自分が研究に打ち込める専門分野が必要だと考えました。
そのため、学部1年次時は社会科学5分野の科目を可能な限り幅広く履修しました。その中で興味を持った経済学や地域研究を軸に学びを進め、経済成長の歴史というテーマに出会いました。卒業論文でも過去の出来事や制度によって現在の社会のあり方が規定されることを指す概念である「歴史的経路依存性(historical path dependency)」に着目して、開発途上国における女性の社会的地位が過去からどのような影響を受けたのかを検証するよう試みています。こうした経路依存の議論は、経済史の分野で盛んに議論されてきたので、大学院でも経済史を学ぶことに決めました。

大学院での学びの面白さや、難しさはどんなことでしょうか。

現在、所属しているコースでは経済史を専門に学んでいます。大学院での学びの面白さは、私が選んだコースに関して言うと、今まで知らなかった学説や様々な一次史料に触れられることです。また、計量分析で使えそうな歴史的データを探したり、それをどう使うか様々な学説に照らし合わせて考えたりするのはとても楽しいです。

その反面、学部では歴史をあまり勉強してこなかったので、経済史(人々の経済活動がどのような変遷を遂げてきたか、今日の統合された市場はどのように形成されたのかなど)や日本史に関して学び直さなければいけないのが大変でしたが、とてもやりがいがあります。また、歴史の勉強をしているとはいえ、経済学の視点から数量的に分析をするため、経済学と計量経済学の知識をさらに深めるために様々な科目を履修してきました。勉強自体は楽ではありませんが、自分の成長を感じることができ、充実した日々を過ごしております。

修士課程修了後のキャリアは、どのようなものを考えていますか。

博士課程へ進学し、研究者になることを目指しています。

大学院進学を志す/迷っている後輩へのメッセージをお願いします。

実は進学が決まってからも、大学院のことが未知の世界のように思えて、しっかりついていけるのか心配していました。しかし、実際のところ、そんなに怖くはありませんでした。大学院は、学部で築いてきた学びの基礎を生かしてもう少し難しいことを勉強し、研究する場です。自分のやりたい研究ができ、新たな知識にたくさん触れられます。また、独特な視点や発想をもった研究仲間とのコミュニケーションを通して新たな気づきを得ることも稀ではありません。ここまで読んで、少しでもワクワクする気持ちがあったら、ぜひ進学に向けてチャレンジしてほしいです!

設置計画中の国際社会科学研究科(仮称)に期待することはなんでしょうか。

私が進学した大学院では経済学や計量経済学といった講義がすべて英語で行われます。進学してから改めて、学部の時から英語で専門科目を学んできたという国際社会科学部出身者ならではの優位性や強みに気づきました。また、国際的な研究の場では、自分の研究内容を英語で発表する場面もありますが、国際社会科学部出身者は、きっと海外の研究者の中でも渡り合えるはずだと感じています。

社会科学5分野を有する国際社会科学部の強みを活かし、学部時代の学びを研究につなげられる環境が整うことを楽しみにしております。また、英語で高度にアカデミックな議論を重ねていくことによって国際的に活躍できる研究者や様々な人材が育てられることを期待しています。