演習(ゼミ)

「とにかく、自分の頭で考える」 柏木教授ゼミ(金融論・国際金融論)

掲載日:2025/07/17

「とにかく、自分の頭で考える」 柏木教授ゼミ(金融論・国際金融論)

国際社会科学部―学習院ISSにおける魅力の1つ、ゼミ。ISSでは「専門演習」「卒業演習」という名称でゼミを開講しており、2年生までに学んだ社会科学の基礎知識をベースに、興味のある分野の専門家のもと研究に取り組みます。
ゼミとは何をするものなのか?個性豊かな各ゼミの魅力とは?

今回は、マクロ経済学および国際マクロ経済学を専門とする柏木教授と、そのゼミ生にお話を伺いました。

柏木先生のゼミ(専門演習・卒業演習)で扱うテーマは何ですか。

金融論と国際金融論を中心テーマとして運営しています。私の専門のマクロ経済学や国際マクロ経済学は経済全体を考える分野なのですが、そのうえで金融は外せないトピックの1つですし、さらには学生が将来に向けて金融への理解を深める機会を設けたいという思いもあり、このようなテーマ設定をしています。

3年次向けの専門演習では、学期ごとにトピックを決めて関連文献の輪読を中心に進めています。ここ数年は第1学期に国際金融論の基本書を読んで基礎理論を学び、第2学期には各国の金融危機の事例を、様々な文献を使用して理論を踏まえながら追いかけています。この専門演習で学んだことを足がかりに、4年次向けの卒業演習では各自でテーマを設定して論文を作成します。

ゼミではどのような活動を行っているのでしょうか。

上で述べた通り、専門演習では文献の輪読を中心に行っています。具体的には、

(1) 担当者による文献報告
(2) その文献に関わる問題(チュートリアル・クエスチョン)への取り組み
(3) 問題に対する各自の考えについて議論(ランダムに分けたグループで→最後に全体で)

という3部構成で毎回進めています。ここで、「問題」といっても決まった正解があるようなものではなく、批判的な観点から文献を読んだり、自分の考えや解釈を説明したりすることを求めるようなものを課しています。そして学生各自がよく考えて取り組んだ上で、それぞれの見解について話し合います。このような形で、ゼミ生が主体的に学ぶことができるように設計しています。

これに対し、卒業演習では自ら設定したテーマで論文を仕上げるということを最終目標とし、それに向けて段階的に作業を進めていきます。教員として論文指導するにあたっては学生の自主性を大切にしており、話を聞いたり、草稿を読んだりした上で、そこからの方向性を提案するというスタイルをとっています。論文のテーマは人によって様々ですが、例えばアート作品の資産としての側面に着目し、その価格と株価との関係について研究したゼミ生がいます。

柏木ゼミの様子

「専門演習」「卒業演習」の魅力、醍醐味とはなんでしょうか。

学生同士が議論することを通じ、互いに学びの質を高めることができる点がまず挙げられると思います。特に私のゼミでは個人作業を中心に据えていることもあってか、自分のペースで取り組み、自分で納得するまで打ち込みたいという学生が多く、そのような主体性のある人たちが金融という共通の関心のもとに集まり、充実したディスカッションができています。そのうえ、毎回ランダムに作ったグループ内で話し合うなかで、比較的早くにゼミ全体が打ち解けた雰囲気になり、ゼミ生がさらに積極的に参加するようになることも付言しておきます。

もう1つは、このゼミで最も重視していることでもあるのですが、自分の頭でしっかり考えるということをトレーニングできる点です。生成AIの台頭もあって情報がますます氾濫し、ともすればそのような情報に流されやすい社会状況にあるなかで、あえて立ち止まって考えてみるという場を教員としては提供しているつもりです。ゼミ生には当ゼミで身につけた思考様式を様々な場面で活かしてもらいたいですし、希望する学生にはぜひ、論文という形で自分の主張を説得的に展開してほしいと考えています。

柏木ゼミの様子

ゼミ生インタビュー(2023年度入学・天池 夏妃さん)

この柏木ゼミは、とことん自分の頭で考えを深めることを主軸としてデザインされています。ただ理論を学ぶだけでなく、それをどのように応用するかまで考えることができるのが1つの特徴だと思います。

私はこのゼミに入るまで金融論や国際金融論を学んでいなかったので、最初の頃はチュートリアル・クエスチョンの議論に満足に参加できませんでした。それでも、どうしてもこのゼミで金融について学びたくて、自分なりにできることを頑張ってみました。

私はゼミと並行して柏木先生の他の講義も履修しているのですが、授業とゼミが補完的な役割をしてくれて、だんだんと考え方がつかめてくるようになりました。ここで、柏木先生ならではの講義スタイルに、新聞記事をもとにした時事問題の解説があります。この時間のおかげで、少しずつ蓄えていた知識の点と点が線となって繋がり、今起きていることの結果だけでなくそのプロセスも併せて理解することができました。このゼミ内でも、教科書的知識と実際の世界を照らし合わせて考える機会が多く設けられており、机上での学習に留まらず世界の出来事まで視野を広げられるのが柏木ゼミの特徴で良い所だと思います。

そうして学習を重ねるごとに、私はゼミ内のディスカッションで自分なりの言葉で議論に参加できるようになりました。私はこのゼミを通して、自分に合った方法で考えを深め、そして金融を通して世界の動きを自分事として見ることができるようになってきたな、という成長を感じます。これからも日常と地続きの学習として頑張りたいです。

ゼミ生インタビュー(2023年度入学・服部 亮さん)

私は2年次に柏木先生の「国際金融論」を履修したことがきっかけで、金融の学びを深めたいと感じ、柏木ゼミを志望しました。柏木先生は金融の複雑な事象を明快に解説してくださるので、難解に感じていた内容もすっと腑に落ち、金融という学問が一層面白く感じられるようになりました。現在ゼミでは、株式や債券といった基礎から、オルタナティブ投資やFinTechなどの先端的な分野まで、幅広く学んでいます。

柏木ゼミの魅力の1つは、「分からない」ことを大切にする空気がある点です。それぞれが文献を読み、疑問に思った点を持ち寄りながら、一緒に仮説を立てて試行錯誤したり、自分の考えを共有したりする時間が、とても面白く刺激的です。

発表やディスカッションを通じて、物事に対して「自分なりの解釈を持ち、自分の言葉で説明できるようになる」という理解の型と、目の前の情報を鵜呑みにせず、一度立ち止まって考える習慣が身につきました。また、金融リテラシーも高まり、ゼミに参加する前と比べて、経済ニュースから読み取れる情報の量が増えたことを実感しています。学問としてだけでなく、人生を豊かにするために必要な力が、このゼミを通じて身についています。

柏木ゼミの様子

※掲載内容は取材当時のものです。