海で繋がる世界が舞台。日本を支える海運業界で働く
掲載日:2025/10/9
世界第4位の貿易大国、日本。島国であることから、近代化して以降、海運事業が大きな発展を遂げてきました。この国の輸出入の99%を担っているのが、船を使った海上輸送です。まさに日本の経済と生活を支えていると言っても過言ではない海運業界。この業界のグローバルさとダイナミックさに惹かれ、川崎汽船株式会社で働く鈴木朝子さんにお話を伺いました。

2018年に国際社会科学部入学。
2022年国際社会科学部国際社会科学科卒業。
在学中は、NYでの短期インターンシップと、アメリカ・オレゴン大学での半年間の海外研修に参加。日本の中高生と海外の学生をオンラインで繋ぎ、国際交流の授業を提供する企業での長期インターンも経験。50回を超える授業において英語による司会進行を務め、国際交流の活発化に取り組んだ。2022年より川崎汽船株式会社に勤務。

自動車船事業でのオペレーション業務という仕事
グローバル企業を軸に就職活動をしていましたが、海運の仕事を知って"こんなにグローバルでダイナミックな業界があるのか!"と驚きました。それから海運業界を第1志望に就職活動を行い、川崎汽船から内定をいただくことができました。就職を決めた一番の理由は社員の方々がとても魅力的だったからです。文字通り"世界を舞台"に仕事をしていることに誇りを持ち、生き生きと働かれている。その姿に憧れて、自分もこの会社で社会人として成長したいと強く思っていたので、内定をいただいたときはとても嬉しかったです。
船の運航には、船長、船主、管理会社、国内外の代理店、顧客や社内関係者など多数のステークホルダーが携わります。入社してすぐに担当したオペレーション業務の役割は、顧客の大切な貨物を安全かつ遅延なく届けるため、彼らと連携して船が滞りなく運航できるように管理することでした。業務の範囲は多岐にわたり、船のスケジュール管理、積載貨物のリスト・寄港地の展開、天候を考慮した航行ルート・速度の指示、燃料の手配、さらには月次収支業務も手がけます。
私は中近東アフリカおよび中南米カリブ航路を運航する自動車専用船のオペレーション業務に従事しました。川崎汽船は1970年に日本で初めて専用船を導入して自動車の輸送を行ったパイオニアです。4000台以上が積載される1隻の船の2~3か月にわたる航海の安全運航を、メインオペレーターとして月に4~6隻担当しました。船のサイズ・扱う金額の規模感から、若手社員でありながら、広範なスケールのビジネスに携わることができるため大きな責任感・やりがいを感じられます。船の安全性や顧客の要望等あらゆる観点を踏まえ、コストを最小限に抑えることで利益の最大化に努めてきました。
航海は長期間にわたるため、トラブルはつきものです。船・車のトラブル、海賊や密航者の出現など思わぬ事態も起きます。オペレーターは、現状を把握して関係各所と情報を共有し、問題解決まで主導することが求められるため責任は重大です。船は24時間365日運航しているので、日本と時差がある地域でトラブルが起きると、昼夜を問わず緊急対応を迫られることもあります。
大変な業務ですが、あらゆる関係者と密なコミュニケーションを取りながら問題を解決できたときの達成感は格別です。対応を重ねたことで即座に判断、応用できた際には、成長を実感しました。
国際社会科学部と留学先で得たグローバル人材の資質
「国際的に活躍する人材を育成する」というスローガンに惹かれて国際社会科学部に入学しました。元々興味があった経済学、経営学や地域研究といった社会科学を幅広く英語で学べる点、海外研修が充実している点が決め手でした。
社会科学の学びの中で、特に印象に残っているのは地域研究分野の講義です。フェアトレードに中高生の頃から関心を持っていたので、専門的な講義を日本語と英語で受けることができたのは嬉しかったですね。また、選択した国際経営のゼミでは、海外進出した日本企業のケーススタディを学びました。文化や商習慣の違いなど、どのような障壁があるのか、それらをどのようにして乗り越えてきたのかを調査しましたが、それによりグローバルな仕事をするうえで大切な視点も身につけられたと感じています。
全員必須の海外研修では、1年次の夏休みにニューヨークにて日系企業のインターンシップに参加しました。2年次にはオレゴン大学に半年間留学して国際ビジネスや環境学を学びました。現地では大量の課題があり、寝る間もないほど勉強する日もありました。乗り越えられたのは、国際社会科学部で、日々アカデミックな英語に触れ鍛えられてきたことや、英語による社会科学の講義を受け学んできた経験があったからだと思います。ハードな日々ではありましたが、空き時間には現地で仲良くなった友人と大学のアメフトチームの試合を観戦したり、スキーをしたり、充実した時間を過ごすことができました。異文化に触れることに加え、母国語以外の言語で学び、議論し、海外の人と深いコミュニケーションを取れるようになったこと。この経験が、グローバルな舞台で働きたいという気持ちをさらに強くしました。
「何事も経験」。モットーを胸に更なる成長を目指す
自動車船のオペレーション業務を1年半担当した後、同じ部署の業務プロセス・システムの統括を行うチームに配属されました。現在は内外地のニーズをグローバルに標準化した新システムの構築に取り組んでいます。業務の効率化、社員の生産性を高めることで新たな価値を生み出すための時間を創出することが狙いです。
地域特性・業務習慣・積載貨物等の各航路の違いを一律に統合するのは難しいですが、プロジェクトを率いるHQ(本部)として関係各所とミーティングを重ねながら最適解を模索しています。会社に大きな変化をもたらすプロジェクトに携われることに、やりがいを感じています。
直近の目標は、自分のアイデアを形にして業務システムに反映させること。そのためにも業務の全体像を把握すべく、業務フローやシステムに関する知見を深めたいと考えています。また、将来的には入社以来所属している自動車船以外の部署も経験し、よりスキルアップしていきたいと思います。
学生時代を振り返ってみると、国際社会科学部には学生の挑戦を後押ししてくれる環境がありました。授業や留学を通して、私もその恩恵を受けた学生のうちの一人です。また、プレゼンテーションやディスカッションの機会が多く、社会に出てからも大切なスキルである「自身の意見を持ち、わかりやすく伝え、他人と意見交換をする」訓練ができました。このような大学での学びを通して、ビジネスのシーンにおいても海外の人とも抵抗なく、対等にコミュニケーションを取れる力を養えたと思っています。
トラブルや不得意に思える業務も、自分を成長させるもの。「何事も経験」だと捉え、楽しさを見出し、新しい知識やスキルを吸収していきたいと思っています。
※所属・仕事内容など掲載内容は取材当時のものです。
4年間の流れ
国際協力に興味を持ち入学。夏休みに渡米し日系企業のインターンシップに参加。
アメリカのUniversity of Oregonに半年間留学し、国際ビジネスや環境学を学ぶ。帰国後に国際経営のゼミを選択するきっかけに。
オンライン国際交流を行う企業の長期インターンに参加。正解がない中で相手の立場になって考え抜くことの重要さを学ぶ。
グローバル企業を軸に就職活動を行う。世界を舞台にダイナミックに活躍できる海運業界に魅力を感じ、現職へ。