ゲーム理論、数理経済学
日本経済学会会員、日本オペレーションズリサーチ学会会員
和光ゼミでは、ゲーム理論に関する文献を輪読し、勉強して行きます。ゲーム理論の特徴は、考察対象とする経済現象をゲームと見なして分析することです。ゲーム理論という名前は、我々の知る経済現象の多くには、ゲームと同じ構造が見いだせるという考えから付いたものです。興味ある経済・経営問題では、複数の主体(つまり、いくつかの企業、部門、或いは、いく人かの個人)が、相手の行動を考慮しながら、自分の行動を決めています。相手の行動を互いに推察しながら、自分の利得を考えて、可能な手の中から行動計画を立てる。ゲーム理論では、このような状況をゲーム的状況と考えます。そして、その状況での合理的意思決定とは何か、また、合理的と考えられる意思決定はどのような結果を導くのかを研究します。さらに、ゲームのルールをどのように設計すれば、どの程度まで、目的とする結果を導くことができるのか、という研究も活発になされ、経済政策や制度の研究にも応用されるようになっています。
ゲーム理論が取り組もうとする社会的ゲームの状況は、遊戯ゲームよりもずっと深刻であることは言うまでもありません。ゲーム理論において数学が用いられる理由は、このような状況にみられる相互依存関係をできるだけ厳密に表現して分析しようという態度のあらわれです。
演習では、ゲーム理論を基礎から学びます。入門書から始めてゆっくりとレベルアップして行きます。時おり出てくる数式については、丁寧な説明を加えながらゼミを進めます。参加者が自由に質問をしたり、あるいは、誰かが気軽に自分の意見を言って、それが他の人の質問やアイデアを生み出したりするような雰囲気を作りたいと思います。「理解するために他の人と話す。更に、それを通じて、今まで気付かなかった問題や考え方を探る」、これがゼミの存在意義であると思います。私もみなさんと話をするためにゼミに“参加”します。
授業やゼミに関することで皆さんが研究室に訪ねて来たときは、なるべくその場で話を聞きたいと思います。(できないときもあるかもしれません。)皆さんからの質問やコメントはきっと何か新しいことを私に教えてくれるはずです。躊躇せずに来てください。
マッチングの研究
人がどの学校に入学するのがよいか、どの会社に就職するのがよいのか、更には、誰から腎臓移植を受けるのがいいのかという問題における最適な組み合わせを研究しています。これも、需要と供給の市場活動の一つですが、ガソリンを買うにはどの商店から買うのがよいかという問題とは異なっています。それぞれの人が規格で分類された商品ではないからです。この問題の基本形は、Gale教授とShapley教授(Shapley教授は2012年ノーベル経済学賞受賞)が開発したDeferred Acceptance Algorithmと呼ばれる方式で一つの解決が得られることが知られています。しかし、この方式が導入されていない現実問題は沢山あり、私は、社会実装するにはどのような状況が整っていなければならないのか、どのような追加的問題を解決することが必要なのかを、実例を調査して研究しています。
Q 経済学・経営学を学ぶのに数学はどのくらい必要ですか。
A ミクロ経済学もマクロ経済学も初級のテキストで勉強しているうちは、経済学特有なグラフの読み方に熟達すれば、中学生程度の数学的知識でも間に合うかもしれません。しかし、2年次以降の授業を、丸暗記ではなく、考え方も含めてきちんと理解するには、少なくとも「経済数学Ⅰ・Ⅱ」を履修して、偏微分や行列の演算に関する基礎知識を付けておく必要があります。
実は、「日経新聞を開いても、数式なんか出てない!」のです。しかし、1つの記事を書くためにも、その筆者は統計的データ処理をしたり、数学的モデルを用いた論文を読んだりすることがあります。積極的に経済学を理解して、自分から経済学の観点に立った意見を述べようとする人は、大学で数学を勉強する必要があると思います。
大学では、是非、興味を持って勉強してください。しかし、何が自分の興味なのかが分からないことがあります。もしそうならば、実はチャンスです。広い視野を持ちながら、自分の興味を絞り込み、深く勉強できるようになるかも知れません。その為には、まず、自分に張り付いている得意不得意のラベルを剥がすことが必要です。そして、片寄り無く授業に出て、そこで解説されるものの考え方を素直に受け入れながら、毎回質問をしましょう。講義に追いつけず、分からなくなると、誰でも焦ります。そこで、1週間後に落ち着いて質問をします。「この点はこう理解したが、間違いはないか?でもその次が......」という、少しだけ確認を含む質問をするのです。これによって、自分の考えを見つける知的活動が始まると思います。つまり、興味を持って勉強をするようになると私は思います。