統計学
(論文)
所属学会:日本統計学会、日本数学会
統計学の数理的側面を研究する数理統計学という研究分野で、ノンパラメトリック推定に関する研究を行っています。統計学の推定手法は、標本(データ)が従う確率分布やパラメータ(母数)で表されるモデルをあらかじめ仮定してパラメータを推定するパラメトリック推定と、特定の確率分布やモデルを仮定せずに推定するノンパラメトリック推定に大別できます(中間的なセミパラメトリックという手法もあります)。パラメトリック推定では仮定した確率分布やモデルが正しければノンパラメトリック推定より推定精度は良いのですが、その仮定が間違っていた場合に誤った推定をしてしまう可能性があります。それに対して、ノンパラメトリック推定は、パラメトリック推定ほど強い仮定を置かなくても機能する推定手法です。連続型確率変数の確率分布を確率密度と呼びますが、ノンパラメトリックに確率密度を推定する手法の1つであるカーネル密度推定では、確率密度の台の境界(確率分布の端)で偏り(バイアス)があるという境界問題が知られていて、その境界問題の対処法の1つに非対称カーネル密度推定という手法があります。これまでは、非対称カーネル密度推定について、新たな推定量の提案や推定精度の改善といった研究をしてきました。また、非対称カーネル密度推定を応用した確率密度の比の推定の研究も行いました。現在は、その確率密度の比の推定を利用した仮説検定に関する研究を行っています。
「統計学 (経済学科)」の授業では、基本的な統計分析手法を理解し、それによりデータを分析して、その分析結果を正しく解釈できるようになることを目的とします。そのために、講義だけでなく、PCを使用した実習も取り入れ、講義で学んだ統計分析手法を実際に使い、理解を深めていきます。統計分析ソフトウェアがあればデータの分析結果を得ることは簡単ですが、データや目的に対して適切な統計分析手法を選ぶこと、および分析結果を正しく解釈することは、正しく統計分析手法を理解していなければできません。統計学、特に仮説検定などは独特な考え方の下に成り立っているため、理解しづらい面があります。わからないことがあれば、些細なことでも積極的に質問してください。「統計学(上級I)」や「統計学(上級II)」では、発展的な統計分析手法に関するテキストを輪読し、学んでいきます。
演習では、主に統計学に関するテキストを輪読しながら、PCを使って統計ソフトウェアの使用方法を学んでいきます。事前にテキストの該当箇所を読んでからゼミに臨み、その該当箇所について議論も行います。演習では講義と違い、主体的に参加することが必要になります。また、実際に統計分析を行い、それをレポートにまとめたり、分析結果をゼミで発表してもらうことも考えています。「演習(2年生)」では標準的な統計学のテキストを、「演習(3年生)」では計量経済学のテキストを輪読する予定です。
いずれも、統計学を理解し、正しく統計分析が行えるようになることが目標です。積極的に授業に参加してください。
なにかを主張したいとき、その主張を裏付けるデータや統計分析結果は、説得力を増すための重要なエビデンスになります。現在、統計分析ソフトウェアが充実しているため、ソフトウェアの使い方さえ覚えれば、簡単に統計分析をすることができます。しかし、統計分析手法というのは、確率・論理に基づいた独特な考え方の下に成り立っていて、統計分析結果解釈というのは単純ではありません。近年は様々なデータが増え、巷にデータやそれを基にした表やグラフがあふれていますが、正しい統計学の知識がないと、それらを見ても間違った解釈をしてしまう危険があります。学習院大学経済学部経済学科には「統計学(経済学科)」以外にも「統計学入門I」、「統計学入門II」、「計量経済学」といった統計分析を扱う授業があります。ぜひそれらの授業を履修して統計学の正しい知識を身に着け、今後に役立ててください。