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日本経済史(近現代)
社会経済史学会 経営史学会
日本経済史の授業は、19世紀後半から1970年代までの日本経済の歴史を取り上げます。できるだけ図表、映像などを交えながら、「歴史的に思考する方法」を身につけてもらうことを目ざします。高校までの歴史とは異なり、細かなことを覚えるよりも、歴史の複雑な因果関係を理解することが目標です。
演習では、学生どうしでディスカッションをしたり、資料収集、プレゼンテーションの手法を磨きながら、現代の日本のさまざまな社会問題・経済問題を取り上げ、歴史的に理解し、考えることを目ざします。
私は、近現代日本の経済史を専門としています。
経済史は、歴史学と経済学の間にあり、実際の歴史の経済的な側面を解明したり、歴史の流れを経済学のツールを使って解釈したりすることで、時代を超えた長期的な視点、社会全体を包括するような大きな視点から、人類のさまざまな営みについて理解することを目ざしています。
経済史研究の具体的なテーマはとても多様で、私も大学院生の時以来、さまざまなテーマを取り扱ってきましたが、最近は特に、「知識は、社会をどのように豊かにするのか?」、あるいは、「知識は、社会を豊かにし得るのか?」といった問いを立てています。
このような問いを発するようになったきっかけは2つほどあります。一つは、日本は技術開発立国だと言われ、さまざまな研究開発に継続的に取り組んで来ているにもかかわらず、20世紀末頃から、経済が停滞しているように見え、社会的にも閉塞感が蔓延しているように感じられるからです。世界的にも、格差が広がり、アメリカでは「分断」が進行しているといわれるように、多くの人々が経済的な豊かさを享受できていないように思われます。原始・古代以来、人類は多くの知識を蓄積してきたにもかかわらず、また、近現代には研究開発が加速してきたにもかかわらず、なぜ、このような事態が生じてしまっているのか。そうしたことをあれこれ、考えています。
問いのきかっけのもう一つは、2011年3月の東日本大震災の時の、東京電力・福島第一原子力発電所の事故です。この発電所は、アメリカや日本の重電機メーカーの設計によって、その時々の先端的な技術を駆使することによって建設されました。しかし、巨大地震・津波に対しては安全性が十分でなく、津波襲来時にはさまざまな問題が複合的に重なり、人類史上最悪の事故の一つを引き起こしてしまいました。原子力発電そのものの技術だけでなく、それを取り巻く安全管理の技術、バックアップ体制、ヒューマンエラーを防ぐためのノウハウなどさまざまな技術を総合的に取りそろえ、全体として合理的なシステムを築く必要がありましたが、それが十分にできていませんでした。原子力発電によってつくられた電力によって、社会は豊かになってきたかも知れませんが、爆発によって、多くの人々の生活や思い出が奪われてしまいました。そして、事故の影響はまだまだ続いています。
技術や知識の蓄積が、経済的な豊かさに結びつかなかったり、深刻な事故を引き起こしてしまったりした背景の一つとして、関係者の間で知識の共有が不十分であったり、知識が不適 切に利用されたりしていることが挙げられます。日本経済や企業 経営の歴史をたどりながら、このような、知識の蓄積と活用をめぐる課題を常に念頭に置いて、研究をしています。
研究以外では、音楽活動をしています。クラシック・ピアノ演奏、地元の小学生・中学生たちと楽しくバンド活動などやっています。
みなさんが社会に出て、企業や組織に属するようになったとき、ただひたすら組織内のマニュアルやルールを覚え、組織の論理に従うことを求められることがあると思います。だいたいの場合は、組織に従うという行為に問題はないでしょう。しかし、時として、組織の論理に従った行動が社会的な害悪をもたらす場合もあり得ます。そのときは、なんとかして組織の論理に従わないで、生き抜く方法を見つけ出してください。
大学では、何も考えずに企業や組織に従う生き方ではなく、人類や社会にとって何が有益なのかという基準で、徹底的に考える習慣を身につけてください。