山本 大輔 (やまもと だいすけ)
金融庁 監督局銀行第一課
PROFILE
幼少期から古銭の蒐集(しゅうしゅう)に興味をもち、学生時代はゼミで国際金融論を学ぶ。「学習院大学新聞」の取材記者としても活躍。2018年、経済学科卒業後、金融庁に入庁。金融庁監督局銀行第一課にて大手金融機関の監督業務に従事している。 (取材当時)
山本 大輔 (やまもと だいすけ)

人との出会いが自分をかたちづくってきたという山本さん。大学時代は周囲の人たちからどんなことを吸収してきたのか? ゼミや部活で培ったスキルや考え方、現在のキャリアなどについて話をうかがった。 

まず、現在のお仕事についてお聞かせください。

金融庁監督局銀行第課にて、主に大手金融機関の監督業務に従事しています。所管法令やガイドラインに基づき業務を執行していきますがその他にも金融サービスを利用するお客さまの利便性を損なわないように丁寧に対話することもあります。例えば、テクノロジーの変革や社会的ニーズもあり、銀行の顧客接点支店窓口だけでなく、スマートフォンなどにも広がっています。一方で、デジタルチャネル拡大によって、対面でのサービスを必要とするお客さまが不便を被らないようどう講ずるべきかを金融機関と議論します。 

現在のお仕事に就かれたきっかけはありますか?

子どもの頃から昔のお金をコレクションすることが好きだったことや私の父が銀行員だったことから、自然と「将来は金融のフィールドで働いてみたい」と思っていました 

金融を学ぶために経済学部を選ばれたのですね。

はい。ただ、1年生の時は本当に基礎的なところを勉強するので、2年生になって初めて金融の分野を学ぶことになりました。金融のいろいろな歴史を学び、金融の動きによって経済情勢が大きく変わると我々の生活に直結するのだと理解していきます。当時外国為替市場の動向がよくニュースに取り上げられていたのでそれに関心を持ち、清水順子先生のゼミ(国際金融論に入りました。 

現在のお仕事にもつながる学びを得たのですね。

就職活動が視野に入るタイミングになったとき、地域金融機関の社会的役割を再考する動きがあり、さまざま議論が起こりました。我が国の経済が発展していくために金融の機能は不可欠であり、十分に機能発揮するにはどうしたらよいかと。金融庁には、金融機関に対してイノベーションを促していく「攻め」の側面と、金融システムの安定や利用者保護を確保する守り」の側面があるのですが、それらの機能が両立する組織にとても魅力を感じ門戸を叩きました 

今まさに、金融の歴史を見守っている山本さん。学生時代にはどのようなことを感じ、どのようなことに注力したのか? ゼミや部活について、さらに詳しく聞いた。 

学習院大学に入学した決め手を教えてください。

高校時代は理系だったので、当初は学習院大学の理学部数学科への進学を希望していましたが、入試をパスできず浪人生となってしまいました。1年で確実に浪人生活を脱するには、得意分野数学を生かすことが現実的な選択した。そこで、家族や塾の先生に相談したところ、「数学生かすなら、経済ではないか?」とアドバイスをもらったので、経済学部経済学科を受験し、晴れて合格することができました。 

経済学部には山本さんのように数学が得意な方が多いのでしょうか?

不得意とする学生もいたと思います。私は経済数学という授業でSA(※スチューデント・アシスタント)を3年間やっていましたが、いろいろな質問を受け、レクチャーしていたことを覚えています。

また、SA業務では、自分は数学が得意だと思っていても、人に教えるのはとても難しいことだと気付かされました。「何のために数学を使うのか?」という根本のところをあらためて学ばせてもらったと思います。数学はあくまでも道具で、その道具を使うのが苦手な人もいれば得意な人もいるという考え方ができるようになり、私にとって非常に価値のある経験でした。

※経済学部では、学部生によるSA制度と大学院生によるTA(ティーチング・アシスタント)制度を導入。講義を受けている際に分からなかった箇所を質問することができる。上級生が下級生をサポートすることで教育効果を高めるメリットも。

同級生と分からない箇所などを一緒に確認し合う山本さん
大学生活において、力を入れられていたことをお聞かせください。

1つはゼミの活動です。清水ゼミでは他大学との合同発表会のほかに、日本銀行主催の「日銀グランプリ」への出場準備を行っていました。これは学生の中で政策を1つ考え、それを提出して見事選出されれば、日銀本店で副総裁らを前に発表できるというイベントです。

私は情報収集を得意としていたのですが、集めてきたデータをまとめる力が弱かったので、その部分を清水先生にたくさん補っていただきました。結果として、決勝には進めませんでしたが、他大学との合同発表会では高い評価を得ることができました。研究内容や着眼点だけでなく、人に伝える上できちんと整理する力を評価していただいたのは、清水先生のもとでトレーニングを重ねられたおかげだと思っています。 

山本さんから見て、清水先生はどのような方でしょうか?

清水先生は本当に卓越した研究者だと思います。私が言うのは大変恐縮ですが金融機関での実務経験を踏まえた研究で結果を出され、さらに中央省庁の様々な審議会の委員も務められていますそのような豊富な知見や経験を有する先生から直々に厳しくも温かい指導をいただけ、充実した大学生活となりました私は猪突猛進タイプだったので、いつも清水先生に正しい方向へ導いていただきながら、ライアルアンドエラーを積み重ねていましたね。 

部活などにも所属されていたのでしょうか?

学習院大学新聞社の活動にも力を入れていました。入部を決めた理由は、成績優秀者として学内で表彰を受けるような先輩から直接指導を受けられることに加え個性豊かでユニークな部員がたくさん在籍していたことです新聞への興味よりもむしろ、人に魅力を感じた部分が大きいです。 

すてきな出会いがあったのですね。具体的な活動内容もお聞かせいただけますか?

「学習院大学新聞」は学内のニュースや社会的な要請に基づく議論など、4つくらいのテーマで構成されています。私は運動部の記事を担当していたのですが、試合だけを取材するのではなく、毎日の練習を取材して、どれだけ努力しているかを伝えられるよう心がけていました。

また、体育会の方々と普段のコミュニケーションの中で接点を持つようにするなど、取材前の準備は入念に行っていました。いろいろな思いを背負った選手一人ひとりの熱量をできるだけ文字に落とし込む作業はとても面白かったです。そして何より、写真や文章に秀でた部内のメンバーからたくさんの刺激を得て、自分の中で吸収して、とても楽しい時間を過ごせました。部活で一緒に汗を流した仲間とは今でも頻繁に連絡を取りますし、ゼミのメンバーと食事に行くこともあります。 

これから学習院大学を目指したいという人に、メッセージをお願いします。

学習院大学はワンキャンパスであることが魅力です。大学には理系、人文系、社会系など多様な学問分野がありますが、他大学であればそれぞれの分野で棟が分かれていることも多く、似た者同士の中でコミュニケーションが完結してしまう側面もあります。しかし、学習院大学なら、出会えなかったかもしれない人たちと接点を持てる機会が増え、自分の見えていなかった分野まで関心が広がる可能性があると思います。

また、学習院大学の学生は「静かな人」が多いと言われやすいのですが、それは決して「大人しい」という意味ではなく、「静かなる野心」を燃やしているという意味で捉えていただけたらうれしいです。自分のやりたいことがはっきりしている学生が多く、1つの分野に突き進んで、エキスパートになる人がとても多いと感じています。勤勉で努力家な学生が多いことも特徴で、一人ひとりの能力が高く、社会に出てからも活躍されている方ばかりです。

もし勉強について苦手意識を持っている受験生がいるとしたら、素晴らしい先生・学生たちとの出会いからさまざまなことを吸収して、克服しようという目的で学習院大学を選んでみてもよいと思います。 

幼少期からの興味や得意分野を、ゼミでの学びで社会的なスキルへと見事に昇華させた山本さん。「周囲に導かれた」と謙虚に語るその裏には、貪欲に学ぶ姿勢とたゆまぬ努力があった。 

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