SPECIAL INTERVIEW
木村 光伯(きむら みつのり)
株式会社木村屋總本店
代表取締役社長
※本取材は2026年6月に実施、プロフィールは掲載時点(2026年8月)のものです。
木村 光伯(きむら みつのり)
PROFILE
1978年生まれ。初等科から学習院に学び、2001年に経済学部経営学科を卒業。木村屋總本店に入社し、新工場の立ち上げに携わる。幹部候補として米国製パン研究所(AIB)へ留学し、製パン技術ならびに安全衛生管理の国際認証基準を学んだ後、2006年に七代目社長に就任。老舗企業を導く若きリーダーとして経営再建に注力し、V字回復に導く。
将来像を見据えて、生きた経営を学ぶ。

2001年に学習院大学経済学部経営学科を卒業した木村光伯氏。弱冠28歳で木村屋總本店の代表取締役社長に就任し、以降、伝統と革新を融合させた新たな価値づくりで経営を牽引している。木村氏に当時の学生生活を振り返っていただくとともに、これから学習院大学経済学部を目指す方へのメッセージをいただいた。 

経済学部を志望された経緯について、教えていただけますでしょうか?

いずれ家業に関わっていくだろうと思っていたので、大学では経営を学びたいと考えていました。また、当時は内部進学する学生のあいだで経済学部経営学科が人気だったこともあり、進路として選ぶのは自然な流れだったのかもしれません。 

ゼミではどのようなことを学ばれたのでしょうか?

経済学部長も務められた杉田善弘先生(2022年ご退職)のゼミで、プロダクトマネジメントについて学びました。他大学とも交流しながら活発に活動しており、「スターバックス」のノベルティ戦略やブランディングなどを研究していました。

ゼミで学んだ「顧客の声を聞き、それをきちんと体系化する」というフレームワークは、経営の現場でも非常に参考になっています。木村屋では毎月新製品を発売しているので、毎回のように顧客の声を取り入れることは難しいのですが、年に1回は必ずアンケートを取っています。定期的に会社のイメージやブランドロイヤリティについて調べて分析していくことの必要性をゼミでは教えてもらいました。

卒業後も杉田先生とのつながりは続いており、ゼミで木村屋をケースにして新商品を考えてもらうということも数年前までやっていただきました。今の学生がどのような視点を持っているのかなど、世代間ギャップを知る良い機会をいただけたと思っています。 

人とのつながりが、今の自分を形成している。
学習院大学経済学部の良いところを教えてください。

経済学部では経営に関する全体像を一通り学ぶことができたのが大きかったですね。財務諸表の見方など、実務に直結する基礎力は大学時代に培ったものだと思います。

また、学習院では上の世代の方々が下の世代の手本になってくださるので、在学中からたくさん面倒を見ていただきました。教師と学生という関係以外にも、歳の近い先輩方からいろいろなことを学べるのは大変貴重ですし、相談しやすい環境が整っていたと思います。

学生生活で培ったものが、今でも役に立っていると感じるのはどのような時でしょうか?

私が社長に就任した当時、木村屋の経営は非常に厳しい状況にありました。大学の講義では「消費者にアンケートを取り、ペルソナを設定し、コンセプトを作って、マーケティングミックスで新製品を開発する」という一連の流れを学びましたが、その知識をそのまま現場に落とし込もうとても、ななかうまくいかですよ。やはり老舗企業なので、長年守ってきた部分や職人さんたちの思いなどもうまく掬い取っていかなければ「木村屋らしい商品」は生み出せません。

そこで学習院の先輩である中條高德さん(アサヒビール名誉顧問)にご助言を仰ぎました。その中で、木村屋がこれまで紡いできたストーリーを壊さないように対話によって変革していく姿勢の大切さに気づきました。ゼミでの経験はもちろん、親身になって相談に乗ってくださる先輩方の存在はなかなか得難いものですし、コミュニケーション重視の学習院ならではだと感じます。

経営再建の道中では、本当に多くの方から気にかけていただきました。経済学部の同窓会では、新美春之さん(昭和シェル石油名誉会長)から「歳の離れた兄だと思って、何でも相談してくれ」と気さくに声をかけていただいたことが心に深く残っています。当時、社内では気丈に振る舞っていましたが、やはり不安も大きかったので、そのような激励は心強かったですね。

また、私が座右の銘に掲げている「お天道様は見てござる」という言葉も中條さんから教わったものです。どんなに苦しい状況でも手を抜かずに誠実に仕事と向き合っていれば、いつか道は開かれる——。そのような経営者としての心構えも学ばせていただきましたし、自分の家族から直接指導されるよりも、社会でご活躍されている先輩方から間接的にご指導いただくほうがモチベーションにも直結していました。 

温かなコミュニケーションが息づく校風。
学習院ならではの強みなどについてお聞かせください。

やはり人とのつながりです。とくに卒業してからはより一層そのありがたみを感じるようになりました。米国製パン研究所で製パン技術や安全衛生管理を学んだり、グロービス経営大学院でMBAを取得したりと、技術や理論は着実に身につけてきたつもりですが、それだけで経営がうまくいくわけではありません。学習院には経営者の先輩が多くいらっしゃるので、ロールモデルとして大変勉強になっています。

料飲桜友会(食文化に従事する卒業生で構成される同窓会)の活動においても、最初は経営者だけで交流していましたが、初代会長の黒川光博さん(虎屋代表取締役会長)が「せっかくなら経営者に絞らず、飲食に携わる人なら誰でも参加できるようにしたらいいじゃない」とアドバイスをくださり、今は一般職の方も含めて広く交流しています。そのため、学習院の同窓会は他校と比較しても温かい雰囲気があると思います。もちろんビジネスの話になることもありますが、仕事に結びつけることが目的ではなく、仲間を増やすという意味合いが大きいのも特長です。 

近年はAIに代替されるような領域も増えてきましたが、人とのつながりやコミュニケーションの価値は揺るがないと考えています。学習院ならではのアットホームな校風の中で、そのような関係性を築くことができるのは一生ものの財産になると思います。 

これから経済学部を目指す方へ、メッセージをいただけますでしょうか?

少人数なので、縦のつながり・横のつながりが非常に密ですし、社会に出てからも「オール学習院」で協力し合える風土が根づいています。在学中に得られる学びはもちろんですが、卒業後のネットワークの深さという意味でも大変有意義な学生生活になると思います。 

「人とのつながり」を大切にし、豊かな人間関係を育む。学習院大学が目指す「コミュニケーション重視のゼミ改革」に通じる姿勢と、木村氏の柔和なお人柄が印象的だった。

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