財務会計、組織の情報開示、企業分析
日本会計研究学会、ヨーロッパ会計学会
私は今、①企業はどのような情報開示を行っているのか、②企業が情報開示を行った場合の情報利用者への影響はどうなっているのか、③企業の情報開示のルールはどうであれば利害関係者にとって「フェア」なのかに関心があります。①については特に近年注目を集めている「統合報告」の枠組みにおける企業の開示行動の現状を調査しています。直近の研究では人的資本に関する情報を分析対象にしています。②については企業の開示した情報が投資家・経営者・従業員などの情報利用者にどのような影響を与えているかについての実証研究を行っています。特に非財務情報やキャッシュフロー情報が利害関係者の意思決定に与える影響に興味があります。③については非常に難しいテーマなので、様々な実証研究や理論研究を積み重ねて長期的に取り組んでいくつもりです。個々の研究は③に集約されていく過程で重要だと思います。
研究手法については、研究課題にあった方法をその都度選択したいので、実証か理論かというこだわりは特にありません(業績は今のところ実証が多いですが)。
私の講義は、私からのプレゼンテーション(インプット)と学生が取り組むワークシート(アウトプット)によって構成されています。テキストによる基礎知識の修得と、理解した知識を用いて自分の意見をしっかりと述べるトレーニングを繰り返します。ワークシートは毎回私が採点し、授業の冒頭でフィードバックを行うという双方向型の授業を心がけてます。学習内容は以下のように「財務会計Ⅰ」と「財務会計Ⅱ」で分けています。
「財務会計Ⅰ」:財務諸表作成に関する理論を学びます。日本の会計基準がどうなっているのかを知るだけでなく、なぜそうなっているのかを考えてもらう方針です。
「財務会計Ⅱ」:投資家の観点からの財務諸表分析に関する理論を学びます。また、受講者各自に日本の上場企業一社を割り当て、個人投資家になったつもりで投資判断を実践してもらいます。投資家の視点からの分析手法を身に着けるだけでなく、会計基準への理解をより深めてもらうという狙いもあります。
企業分析の学習や実践を通して考える力を鍛えることを目標にします。この目標を達成するために、演習では、以下のような機会を提供していきたいと考えています。
①. 基礎的な知識の取得
一般的にテキストとして用いられている教材を用いて、企業分析を行う上で必要な言葉の意味や概念の理解からスタートします。定義や基礎概念の学習は難しい反面、理解が進めば進むほど自ら考える力の骨格になるものです。基礎に立ち戻って考えるという習慣は、どのような場面においても生かすことのできる力になると考えています。
②. 自分の考えを発表
学習においてアウトプット面を教育することはしばしば軽視されがちですが、私はインプット面と同じくらい大事なものであると考えています。聴衆はどのような人々か、どのように工夫すれば相手が理解してくれるかを考えながら資料を作成することで自分の考えがまとまることもあります。「面白さ」も重要な要素だと考えています(私が大阪出身だから?)。
③. 意見の異なる人々との議論
自分の考えを広げる有効な手段として、多様なバックグラウンドを持つ人々との議論が挙げられます。
他者との意見の交換は、自分が思いもよらなかった考えをもたらすこともあり、非常に重要であると考えております。学外の様々な人達との交流の機会も積極的に設けたいと考えています。
「高校までは、おそらく確かだろうことを学びます。しかし、大学からは確かかどうか分からないことを学びます。」
これは、私が大学に入学した時のオリエンテーションで学寮長からかけられた言葉です。
そもそも、この言葉は確かでしょうか。
もし確かだと考えるなら、皆さんは大学で何をどう学びますか。