2011年4月に学習院大学経済学部准教授に就任
2013年4月より学習院大学経済学部教授
2017年4月よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)Anderson Business School 客員研究員(2018年3月まで)
2018年4月より慶應義塾大学経営管理研究科(慶應ビジネススクール)訪問教授(2018年9月まで)
博士(経営学)
組織行動論(ミクロ組織論)・キャリア論・人的資源管理論
(主要論文(著書除く))
(学会受賞)
1.講義について
「経営管理論」を担当させて頂きます。企業の経営活動の現実を理解する為には、とても大事な科目だと思います。「経営管理論」では、経営学に関する基礎的な知識を理解することを第一の目標としています。その上で、規模の大小や業種の違いなどにかかわらず、どの企業にとっても重要な従業員のモチベーションや管理職者のリーダーシップの問題など、組織の中で働く従業員の態度や行動に関する知見について受講者の皆さんと考えていくことができればと思っています。
2.演習について
演習のテーマは、組織行動論(ミクロ組織論・組織心理学)です。具体的には、組織(企業)で働く従業員の態度や行動のメカニズムについて心理学的視点をもとに理解することを演習の目的としています。組織行動論は、行動科学(behavioral science)や産業・組織心理学(industrial/organizational psychology)の知見を踏まえ、学問的には体系化が試みられてきていますが、欧米の経営系の大学あるいは大学院を中心に必須の科目として、その重要性が指摘されています。皆さんもアルバイト経験などを通じて、仕事に対して意欲的になったり、リーダーとして仕事を行わなければならなかったりしたことがあると思います。また、昨今ではストレス社会といわれるように、個人がストレス(ストレッサー)にうまく対処し、適切にマネジメントしていくことの重要性が指摘されています。本演習では、そのような個人のモチベーションやリーダーシップ、ストレスマネジメントなど、組織行動論の重要なトピックについて理論的ならびに実証的検討を行っていきます。
4年次最後には、ゼミメンバー一人ひとりが、自らの関心に即して設定したテーマをもとに卒業論文を作成して頂きます。卒業論文では、各自の研究テーマに対して理論をもとに仮説を設定し、その仮説を実際のアンケート(質問紙)調査の実施とデータに対する統計解析をもとに検証を行う「仮説・検証型」の研究を行って頂きます。したがって、サブゼミなどを通じて、調査方法論や統計解析(統計学)、統計ソフト(SPSSやSTATAなど)の操作方法に関する知識もあわせて勉強していくことになります。以上のことを2年間のゼミ活動で行うことは、非常に大変なことだと思います。しかし、文系の大学生でこのような「仮説・検証型」の論理思考力と調査・分析の専門スキルを持っていることは、多くの会社で必要とされながらも、実際にそれら知識やスキルを持っている学生は非常に少ないため、就職活動の際、あるいは社会に出てから、必ず皆さんの大きな強み(武器)になると思います。
演習では、その他ゼミ合宿(これまでに台湾やセブ島などで海外ゼミ合宿を実施)やコンパ、学園祭出店などの課外活動も積極的に行ってきました。これら課外活動は、演習で学問的に学んだことを実践に活かす、あるいは学問的には学んでいないけれども実践の中から重要なテーマを見つけだす良い機会になります。残念ながらコロナ禍で一昨年度と昨年度は課外活動はほとんど実施できませんでしたが、終息後には是非とも積極的に行っていきたいと思っております。したがって、意欲的にゼミ活動に取り組める学生、他のメンバーと積極的にコミュニケーションを取り、協力し合うことのできる学生、ゼミ活動を通じて何か達成感を得たいと思っている学生の皆さんの参加をお待ちしております。
いくつかのテーマについて研究を行なっていますが、その中でも「組織社会化」研究について、ここでは紹介したいと思います。
企業に入社する新卒採用者の最初のキャリア発達課題は、組織の規範や価値観を内面化すると同時に、上司や同僚から組織メンバーとして認められることであり、円滑に組織に適応することが求められています。このような新卒採用者の初期キャリア発達課題を「組織社会化」と言います。しかし、実際に入社したばかりの新卒採用者が組織に社会化することはとても難しく、社会化がうまくできない結果、離転職をしてしまうことが多くあります。そこで、入社後の新卒採用者の離転職を抑制するために、新卒採用者に対するアンケート調査を企業に協力をお願いしながら実施し、組織への適応を促進する要因を明らかにする研究を行っています。
組織社会化研究は、欧米を中心に精力的に研究が行われていますが、要約すると大きく2つのアプローチからの検討が行なわれています。1つは、プロセスアプローチというもので、新卒採用者が組織に適応していくプロセスを明らかにすることを目的とする研究です。そこでは、組織適応を促進する企業要因と個人要因を明らかにすることが行なわれています。具体的には、企業要因では教育訓練施策やもう少し幅の広い人的資源管理施策、個人要因では新卒採用者の性格特性などの重要性が指摘されています。もう1つは、コンテントアプローチというもので、組織に適応する上で新卒採用者が学習すべき知識や内容がどのようなものであるかを明らかにすることを目的とする研究です。
しかしながら、上記のアプローチはそれぞれ個別に検討が行なわれており、2つのアプローチを統合した包括的研究は、欧米においても必ずしも十分な議論が行われていません。そこで、上記のアプローチを統合した研究枠組みを設定し、論文や学会発表という形でこれまで研究成果を発表してきました。研究に興味のある方は、遠慮なく是非一度研究室にお越し下さい。
経営学は、基本的に対象の学問であり、企業の経営活動をどのような視点から捉え、どのような分析方法論を用いるかについては、多様性が許容される学問です。逆に言うと、分析視点や方法論が一つに定まっていないため、経営学をより深く勉強していくためには、自分でそれらを選択し、学習していくことが求められます。是非、これから経営学を学ぶ皆さんには、どのような対象を詳しく学習していきたいかを探索すると同時に、その対象にどのような分析視点や方法論を用いて検討するのかについても探求するようにして下さい。