意思決定論、システム科学、経営科学
所属学会:日本オペレーションズ・リサーチ学会、経営情報学会、日本経済学会
「意思決定」を研究の対象としています。意思決定とは、単純に言えば、いくつかある選択肢の中から一つを選ぶことです。
こう考えると、私たちの人生は、意思決定の連続とも言えるでしょう。例えば、今日のランチはどこで食べようか、大学でどのサークルに入ろうか、どの会社に就職しようか…
企業経営においても意思決定は重要です。どのような経営戦略を取るか、商品の価格をいくらに設定するか、どのようなパートナーと提携するかなど、これらは詰まるところ意思決定の問題です。著名な経営学者のハーバート・サイモンは、「マネジメントとは意思決定である」と述べ、意思決定研究の重要性を説いています。そもそも私たちはどのように意思決定しているのか、あるいはするべきなのかを明らかにして、そのような観点から様々な問題を捉えてみましょう、というわけです。
意思決定の問題は多岐にわたり、分野や領域を問いません。世の中の問題の多くは、たいてい、何らかの意味で意思決定の問題と見なせるでしょう。自らの興味関心に応じて、広範なテーマを扱うことができるのが、意思決定研究の魅力だと思います。問題の種類に応じて、様々なフレームワークや方法論があります。
私自身は、研究の方法論として、主に数理モデルやシミュレーションを用います。対象とする意思決定問題の本質的な要素とそれらの関係を見定め、それを演繹的に操作可能な「モデル」として表現します。ここには、「対象をシステムとして見る」というシステム科学の考え方が反映されています。最近の主な研究テーマとして、企業経営の諸場面における知識と意思決定の関係を研究しています。例えば、企業の競争環境の認識のしかたが戦略行動にどのように影響するか、企業内・企業間の知識共有や移転はどのように達成されるのか、といった問題を、ゲーム理論などを用いて研究しています。21世紀は知識社会の時代とも言われます。知識が私たちの意思決定にどのように関わるのか、より良い意思決定を行うために知識をどのように捉えていけばいいのか、これからますます重要なテーマになると考えています。
講義は、主に経営科学やシステム科学を担当します。いずれも、経営上の様々な問題を、意思決定やシステムの観点からどのように捉え、改善・解決につなげることができるかを学習します。数理的・論理的な考え方が重要な分野ですが、講義では、不必要に数学的な内容は避け、それよりも、これらの理論や方法論が、ビジネスに限らず広い場面でのマネジメントに様々に応用可能であることを実感してもらえればと思います。分析ソフトウェアの活用やグループワークも取り入れて、実際に手や頭を動かすことで理解を深めます。
演習では、関連書籍の輪読や、グループでの調査・研究を行います。関連分野の知見を深めることはもちろんですが、議論や発表を通じて、社会に出てからも役に立つコミュニケーション・スキルを修得することも目的にしています。高校までの勉強では、正解がある問題がほとんどだったと思いますが、現実の社会の問題は、むしろ正解が一つではない問題の方が多く、多様な背景や価値観を持つ人たちと関わることになります。そのような問題へ取り組む際の姿勢も学んでほしいと思います。また、与えられた問題を解くだけでなく、自ら課題を見出し、設定する力を身に付けることも目指します。
上述の通り、経営科学的な手法や考え方は、ビジネスのみならず、日々直面する様々な問題のマネジメントに役立ちます。皆さんの人生がより豊かなものとなるよう、有益な視点を提供できればと思います。