特色のあるゼミ教育

Introduction of Seminars

企業課題に挑む、実践型事業戦略の学び

実際に企業で働く方々から現場の声を聞き、リアルな事業戦略について学ぶ。仮説を立て、データで検証し、失敗から学ぶ。学生たちが掴んだ"リアル"とは?(経営学科 渡邉真理子ゼミ)
新進気鋭の企業とコラボレーション

渡邉ゼミでは、モバイルバッテリーのシェアリングサービスを展開している株式会社INFORICH(インフォリッチ)の協力のもと、2018から事業領域で産学連携を行っている。同社の課題や戦略についてヒアリングし、その解決策を企画・提案を学生が行っている。実際に学内で調査を行い、その結果を担当部署の方々にプレゼンし、評価をいただく機会は、学生たちにとってかけがえのない経験だ。 

INFORICH社について

設置台数日本一(※)のモバイルバッテリーシェアリングサービスCHARGESPOT™(チャージスポット9エリアで展開するグローバルカンパニー2022年に東証グロース市場に上場Bridging Beyond Borders〜垣根を越えて、世界をつなぐミッションに掲げ、CHARGESPOT」のほか、シェアリングエコノミープラットフォームアプリ「ShareSPOT」、推し活アプリ「CheerSPOTデジタルサイネージ広告、コンテンツ連携など、リアルな接点を起点とした多用途展開を進めている
2025年6月時点 

学生自ら「課題」を見つけ、アイデアを生み出す

毎年、年度の初めに渡邉教授が学生を引き連れ、INFORICHを訪問する。同社が展開するCHARGESPOT」の現状の課題についてヒアリングし、学生主導で解決策を立案・実施するのが3年次のメインの活動だ。

メディア事業部門 谷口 慎太郎さん

2024年度に見えてきた課題モバイルバッテリーの偏在”。「CHARGE SPOT」はどこでも借りられて、どこでも返せることが一番の特長だが、それゆえ場所によって在庫が偏ってしまうことが少なくない。そこで渡邉ゼミでは、ユーザーの行動変容を促す施策を4つのグループに分かれて行った。今回、グループリーダーからそれぞれどんな取り組みを行ったのか話を聞いた。 

(左から)森田彩葵那さん、小田瑞葵さん、齋藤菫さん、高橋柊継さん
施策① 広告による行動変容

第1グループは「そもそもモバイルバッテリーの返却場所に偏りがあることをユーザーは知らないのではないか?」と考えた。現状を周知することで、たとえ数パーセントでも行動してくれるユーザーがいれば、モバイルバッテリーの偏在を解消することができるのではないか。そんな仮説のもと、学習院大学の構内6ヶ所に設置されている「 CHARGE SPOT」のモバイルバッテリーに「バッリーが少ないスポットに返却してください」と書かれたステッカーを貼り付けた。 

実際に貼付したステッカー。デザインは学生たちが考案

約120台のモバイルバッテリーの動向を追い、学外に返却された分はINFORICHの協力を得て、返却場所を特定。ステッカーの効果測定を行った。想定していたような結果は得られなかったが、「わざわざ空いている設置場所を調べるのではなく、返却スポットを見つけたときに返す人が多いこと」が分かり、「設置台自体にも返却場所を示す何らかの処置が必要」という次につながる学びを得た。

リーダーの高橋柊継さん(経営学科4年)は「毎日のようにチャットツールでINFORICHの担当者の方と連絡を取っていましたが、返信の速さに驚きました。ベンチャー企業ならではのスピード感の中で、一緒に働くことができたのは良い経験です」と充実感をにじませる。 

高橋柊継さん
施策② 価格による行動変容

第2グループでは価格設定に着目。モバイルバッテリーの偏在を解消するためには回転率を上げることが必要だと考え、学内3ヶ所の「 CHARGE SPOT」で短時間利用を促す「期間限定セール」を行った。 

実施概要

結果は「価格を下げても人は動かない」という厳しいものだった。しかし、ここから見えてきたものもある。単に値下げをするのではなく、大学生がCHARGE SPOT」に出費してもよいと思わせることこそが根本的な解決につながるのではないか。あるいは、学割などの価格差別が必要なのではないか。施策を経たからこそ見つけた新たな解決策は、フィードバックの場で一定の評価を得、実際に翌年の価格改定の施策につながったという。

リーダーの小田瑞葵さん(経営学科4年)は「INFORICHのみなさんが私たちと同じ目線で協力してくださったのがうれしかったです。未熟な私たちの意見も受け入れていただき、一方では施策の実現可能性について丁寧に検討していただき、本当に感謝しています」と話す。 

小田瑞葵さん
施策③ 通知による行動変容

第3グループは、CHARGE SPOT」アプリ内のお知らせ欄で適時適切なメッセージを配信することにより、ユーザー心理に影響を与えられるのではないかと仮説を立てた。学内6ヶ所の設置台でモバイルバッテリーを借りたユーザーを識別し、4種類のメッセージを配信して対照実験を行った。 

4つの観点からメッセージを作成

結果として、メッセージによってモバイルバッテリーの偏在が解消されたかどうか判断できるほどのデータは集まらなかったものの、通知を受け取ったユーザーはそうでないユーザーに比べて「利用時間が短い」ということが分かった。本来得たい結果とは別のデータではあるが、この傾向がつかめたことも、マーケティング施策として価値あるも経験になっただろう。

リーダーの森田彩葵那さん(経営学科4年)は「大学では先生方の講義を受けることがメインになりがちですが、渡邉ゼミではアウトプット学習に取り組めるのが魅力です。個人的に広告業界に興味があったこともあり、就職活動にも役立つ経験ができました」と、手応えがあったようだ。

森田彩葵那さん
施策④ 感情による行動変容

第4グループでは、近年流行している「推し活」を応用できないかと考えた。そこでキャラクターがユーザー与える印象に着目。校内2ヶ所の設置台にのみ学習院大学の広報大使「さくまサン」の装飾をあしらい、ユーザーの感情を意図的に操作することができないかを確かめた。 

実際の装飾

結果として、装飾をした設置台のほうが貸出・返却ともに利用率が上がっていることが分かった。さらに、モバイルバッテリーの偏在を縮小させられるというデータも。特別な演出によりユーザーの感情を動かすことで、意図的に貸出・返却場所を誘導できるという今回の結果は、INFORICHの抱える課題に直結する大きな発見になったと言えるだろう。

リーダーの斎藤菫さん(経営学科4年)は「アイデアとして『こんなことをやってみたい』という気持ちはあっても、根拠がないと人の心は動かせません。事前に結果を予想し、仮説を立てないと施策の意味がないことを学べました」と言う。「渡邉ゼミはどこよりもアットホームで、良い意味で先生と距離が近いのも魅力です」と、後輩にも薦めているそうだ。

斎藤菫さん
2025年度のゼミ生の取り組みにあたってのキックオフ(INFORICH社にて)

INFORICH と学生の取り組みについて渡邊教授はこう話す。「わたしの個人の研究テーマは、企業戦略や産業発展に関する実証分析で、メインのフィールドは中国です。

現在、デジタル化が世界のイノベーションの中核にあり、中国や新興国が日本と異なる展開を見せています。しかし、技術進歩は、社会のありかたとうまく融合することで、初めて真のイノベーションになります。ですので、このデジタル化を日本社会に埋め込むにはどうしたらいいのか、学生たちと考える機会にしたいと考え、このプロジェクトに着手しました。ちょうど、INFORICHさまがシェアバッテリープロジェクトを日本でスタートしたというプレスリリースを拝見して飛び込みでお願いしたところ、ご快諾いただき、それ以来継続的にご協力いただいています。

このプロジェクトの実施にあたって、イノベーションをめぐる理論的な考え方に基づいて仮説を設定し、統計的な因果推論の手法で分析するかたちを取っています。社会科学の知識を現実に応用する場となるように設計していて、このプロジェクトの実験を学術的な研究として仕上げることも可能です。こうして、学問と社会がダイレクトにつながっていることを体感してもらいたいと思っています。」 

 

学問と社会をつなぐ実践型の取り組みは、学生の今後の未来にとても意義ある場となっている。

※学年は2025年9月時点のもの。 

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