教員紹介
眞嶋 史叙 教授

眞嶋 史叙 (マジマ シノブ) 教授

経済学科:イギリス経済史・消費社会論

略歴

  • 1998年:慶應義塾大学 経済学部 卒業
  • 2005年:マンチェスター大学 社会文化研究所 専任研究員
  • 2006年:オクスフォード大学 社会経済史学科 博士課程修了 D.Phil. 取得
  • 2007年:現職
  • 2007 年-2019 年
          オクスフォード大学グローバル史研究所客員研究員(存外研究)

研究分野

グローバル経済史、消費文化論、(特に、イギリス近現代史を中心に)


主要業績

  • Fashion and the Mass Consumer Society in Britain: An Economic History, Vdm Verlag(2009).
  • 'Have there been Culture Shifts in Britain?: A critical encounter with Ronald Inglehart', Cultural Sociology, vol. 1, no. 3, pp. 293-315(November 2007)co-authored by Mike Savage.
  • 'From Haute Couture to High Street: the role of shows and fairs in twentieth-century fashion', Textile History, vol. 39, no. 3(May, 2008).
  • 'Affluence and the Dynamics of Spending in Britain, 1961-2004', Contemporary British History, special issue on affluence edited by Shinobu Majima and Mike Savage, vol. 22 no. 3(November, 2008).
  • 'Elite Consumption in Britain, 1961-2004: results of a preliminary investigation' in Sociological Review Special Edition(2008), co-authored by Alan Warde.
  • 'Fashion and frequency of purchase: Womenswear consumption in Britain, 1961-2001', Journal of Fashion Marketing and Management vol. 12, no. 4,(September, 2008).
  • 「女性の就労と嗜好形成──日・英における被服消費行動をめぐって」『学習院大学経済論集』第44巻第3号(2007年10月).
  • 『なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか』ロバート・C・アレン著 グローバル経済史研究会訳(訳者代表) NTT出版社(2012年)
  • 『欲望と消費の系譜』(監修) NTT出版社(2014年)

学外での活動

  • 日本ファッション協会助成研究「日・米・英におけるファッションと消費サイクルの経済史的考察−過去4半世紀の概観と現状分析−」、日本ファッション協会(東京)、2004 年度。
  • 英国NCDS/BCSコホートパネル調査 調査票利用諮問委員会委員、2006 年-2008 年
  • マンチェスター大学 社会文化研究所 准研究員

所属学会:社会経済史学会、経営史学会、Economic History Society, Social History Society,Association for Business Historians, European Business History Association


メッセージ

あなたはスノッブですか、それとも他人に流されやすいですか?あなたは流行に関心がありますか?

アメリカ経済学者ハーヴェイ・ライベンシュタインは、流行現象を説明するために、消費者需要形成におけるバンドワゴン効果・スノッブ効果を提唱しました。バンドワゴン効果とは他者の消費が増えるほど需要が増加する現象で、スノブ効果とは反対に他者の消費が増えるほど需要が減少する現象です。流行は、他人の消費行動に同一化したいという欲求から形成されると考えるわけです。

いいかえれば、どれだけ多くの他人が「ある商品」を購入するかという期待と実際の購入行動がスパイラルに展開していく様子がバンドワゴン行動で、その「ある商品」を購入し始める最初の少数の消費者がスノッブです。スノッブ行動は、商品の購入者が増えるにつれて、差異化する欲求が強まり、新しい商品・スタイルへと転換する行動であると考えられます。

さて、皆さんはどちらの行動をとりがちですか?学生時代には、他人の意見に流されず、自分のニッチを見極める眼力を養ってください。そのためには、過去の教訓・先人の知恵から学ぶことが大事です。歴史的な視野から物事をみることで、長い年月を経ても色あせない「リアリティ」を一緒に探していきましょう。


講義・演習の方針

一般経済史の講義では、まず第1に、皆さんにマクロ・ミクロ経済学の応用編としての経済史学に取り組んでもらいたいと思います。経済学部に進学して、ミクロ・マクロ経済学にはじめて接すると、その理論的抽象性を難しく感じてしまうかもしれません。この講義・演習では、日常的で身近な事象を織り交ぜながら説明します。経済的に捉えることの面白さを感じてもらいたいと思うからです。経済理論を歴史というコンテクストの中で学び、また新たな歴史的コンテクストヘと戻していくという作業を通じて、経済理論の理解を深めていきましょう。

第2点としては、従従来の経済史上重要とされてきた歴史的転換点を理解し、歴史的な知識をつけ、広い視野を持ってもらいたいと思います。そのため、この講義は先史時代から現代までの人間と経済のかかわりについて、時代を追って概説していく構成となっています。現代の情報化社会では、知識の蓄積よりも、豊富な情報をどう分析しプロセスするかが重要になってきています。歴史という情報の蓄積を解釈する手段として、経済学を利用する方法を学んでもらいたいと思います。

第3点としては、経済理論の普遍性と歴史的事象の固有性・特殊性の間に生ずるギャップをどう埋めるかという問題にも関心を持ってもらいたいと考えています。今日の欧米経済史学は、特に、経済的合理性では捉えきれない、過去の経験・蓄積への依存(path dependency)を、行動原理のひとつとして提唱してきた点において貢献するところが大きいと考えるからです。その例として「QWERTY」の経済学、つまり合理性を求めた技術革新が進む中で、パソコン・キーボードの文字配列が、既存の配列に依拠した形で残されてきたというような事例
に注目します。経済的合理性では捉えきれない行動原理のもうひとつとして、人間どうしの相互依存関係(interpersonal dependency)、換言すれば、ゲーム理論的な考え方を組み込むことも、経済史の新しい視角として認識してもらいたいと思います。

市場経済の進展を考える上で、これらの新古典派経済学の前提を批判的に検討することは、経済理論を歴史理解のために補完的に利用していく過程で重要となってきます。というのは、第4点としてあげるように、経済が社会・文化に与える影響、反対に社会・文化が経済に与える影響を考えるうえで、キー・コンセプトとなってくるからです。講義・演習では、経済・社会・文化的変化を動態的にとらえる際に、ポイントとして市場経済の進展・消費文化の爛熟・そしてグローバル化の3点を特に重視したいと考えています。従来の経済史学が生産(生産力と生産関係)を重視してきたのに対し、消費の動向、とくに個人の趣向のありようが経済にいかに影響しているかを考え、その中で人間のミクロ・レベルでの行動原理を問い直しつつ、経済発展および「グローバル化とは何か?」という問題について、考えてもらいます。そのような理解を進める中で、現代の急速な市場経済化の現象が招いている多くの弊害、すなわち自然環境への負荷や道徳的退廃などの深刻な危機的状況を理解し、皆さん一人一人に「経済人」としての認識・自分なりの意見を持っていってもらいたいと考えています。


研究テーマ

私はこれまでの研究の中で、経済史の方法的な試みを探究し、新たな問題意識を開拓していくことに関心を持ってきました。この研究関心は、過去30年間に欧米の社会経済史学が著しく変容してきたという経験的認識に基づくものです。ひとつにはポスト・モダニズムからの哲学的影響で文化史的な視覚が拡大してきたこと、一方では経済学の理論的柔軟化が進み応用経済学の手法が浸透してきたということ、そしてIT技術の進歩と共に統計技術が普及し数量的な実証研究が飛躍的に進んできたという傾向の3点があげられます。これらの方法的な進展は、従来の経済史の問題意識に大きな転換を余儀なくしてきたといえると思います。ひとことで言えば、それは「生産から消費へ」という問題意識の転換であり、新しい問題視角へと経済史の中心課題が移行してきたということです。

私の研究では、具体的には、ファッション・流行消費行動の問題に注目してきましたが、それは、市場経済化の進展とグローバル化をミクロ・レベルの行動原理から考える上で、個々人の消費行動とその関係性が中心的な問題となってきたと思うからです。

学習院大学に着任する前は、英国マンチェスター大学の社会文化研究所で、研究員として学際的な研究活動に従事してきました。この研究所で行ってきた実験的な試みとしては、ブルデュー社会学の分析方法やアクセルロッドのシュミレーションを用いて行った消費行動の分析などがあります。今後は、講義や演習などを通じて、皆さんと一緒に研究テーマをさらに広げていきたいと願っています。

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