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【研究成果】戦争非当事国における旗下集結効果:ロシアのウクライナ侵攻の場合

2024.03.25

戦争非当事国における旗下集結効果:ロシアのウクライナ侵攻の場合

ポイント

  • ロシアのウクライナ侵攻前後で与党への支持率を比べたところ、日本では約3%、ウルグアイでは約6%増えましたが、チェコではほぼ変わりませんでした。

研究の概要

学習院大学法学部の福元健太郎教授と大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部の田淵貴大部長補佐(研究当時)は、戦争が起こると政治リーダーに対する支持が高まる旗下集結効果が、戦争非当事国にも見られるかを調べました。ロシアのウクライナ侵攻前後で、日本・チェコ・ウルグアイの首相・大統領が所属する政党への支持率がどれほど増えるかを分析したところ、日本では約3%、ウルグアイでは約6%でしたが、チェコではほぼ0でした。

本研究成果は20231218日に国際学術誌「Journal of Elections, Public Opinion and Parties」のオンライン版に掲載されました。本研究は、科学研究費補助金(15K19256, 18H03062, 19H00584, 20K10467, 20H00040, 21H04856)、厚生労働科学研究費補助金(19FA1005, 19FA1011, 19FA2001, 20EA1017, 20FA0501) 、国立環境研究所の運営費交付金、および科学技術振興機構共創の場形成支援プログラム(JPMJPF2017)から資金援助を受けています。本発表は、学習院大学グランドデザイン 2039「国際学術誌論文掲載補助事業」より掲載費を助成されています。

発表内容

研究の背景と経緯

戦争が起こると政治リーダーに対する支持が高まる旗下集結効果が、戦争当事国で見られることはよく知られていました。しかしそれが戦争非当事国にも見られるかはわかっていませんでした。図らずも、公衆衛生関係の世論調査を設計するにあたり、政党支持の設問を組み込んでおいたところ、調査中にロシアのウクライナ侵攻が起きたため、間接的な旗下集結効果を調べました。

研究の内容

戦争が起こると政治リーダーに対する支持が高まる旗下集結効果が、戦争非当事国にも見られるかを調べました。戦争の直前と直後で政治リーダーに対する支持率が変化するとすれば、その要因は戦争しかあり得ないため、厳密に因果推論できるという調査設計(「調査中の不測事態」*1と呼ばれる)を用いました。ロシアのウクライナ侵攻前後で、日本・チェコ・ウルグアイの首相・大統領が所属する政党への支持率を比べました。下図で、横軸は侵攻の何日前後まで分析に用いるか、縦軸は間接的旗下集結効果※2を表します。実線は推定値を、点線は95%信頼区間の上限と下限を示します。概ね、間接的な旗下集結効果は、日本では約3%、ウルグアイでは約6%でしたが、チェコではほぼ0でした。

図 横軸は、侵攻の何日前後まで分析に用いるかを表します。縦軸は間接的旗下集結効果を表します。実線は推定値を、点線は95%信頼区間の上限と下限を示します。

今後の展開

他の不測事態が他の国で起きた時に、同様の間接的旗下集結効果が見られるかを調べていきたいと考えています。

用語解説

※1 「調査中の不測事態」設計

世論調査中に起きた戦争などの不測事態の直前と直後で、支持率などの変化を比較して、その不測事態が支持率などに及ぼす因果的効果を厳密に推論する調査設計。

※2 間接的旗下集結効果

戦争が起きた時に、戦争非当事国で政治リーダーに対する支持が高まる度合いのこと。

論文情報

論文名:The rally 'round the flag effect in third parties: the case of the Russian invasion of Ukraine

雑誌名:Journal of Elections, Public Opinion and Parties

著者名:Fukumoto Kentaro, Takahiro Tabuchi

DOI:10.1080/17457289.2023.2293198

発表者

福元健太郎 学習院大学法学部・教授

田淵貴大  大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部・部長補佐:研究当時
      現:東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学専攻公衆衛生学分野・准教授

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