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多彩な科目群からデータサイエンスの知識やスキルを習得 学習院大学の副専攻「データサイエンスプログラム」

2024.12.12

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学習院大学では2023年度から、三つのプログラムからなる副専攻制度を導入した。その一つ「データサイエンスプログラム」は学部・学科を問わず参加でき、多彩な科目群から各自のキャリア設計に沿って履修科目を組み合わせ、受講できるのが特徴だ。カリキュラムや教材の開発に携わった学習院大学計算機センターの申吉浩教授に、データサイエンスを学ぶ意義やプログラムの特徴などを聞いた(写真は、計算機センター実習室の申教授)。

データサイエンスを学ぶことで、将来の可能性とキャリアパスが広がる

学習院大学では、学部の専攻分野に加えて特定のテーマに取り組める全学共通の「副専攻制度」を2023年度から導入した。「日本語教師養成プログラム」「ジェンダー・スタディーズ」、そして「データサイエンス」の3プログラムである。「データサイエンス」が副専攻に採用された経緯を、申吉浩教授は次のように話す。

AI(人工知能)の登場後、その技術は急速に進展し、あらゆる業界でAI・機械学習のツールを創造的かつ効果的に使いこなせる人材が求められるようになっています。そうした人材の育成には、データサイエンスの知識やスキルの習得が必須であることから、このプログラムを採用しました」

申吉浩(しん・よしひろ)/学習院大学計算機センター教授。博士(工学)、理学修士。東京大学大学院理学系研究科にて数学を専攻。富士ゼロックス総合研究所では情報セキュリティ、暗号理論の研究に従事。東京大学先端科学技術研究センター移籍後は、機械学習理論の研究にも携わる。米カーネギーメロン大学日本校教授、兵庫県立大学応用情報科学研究科教授などを経て、2018年より現職

副専攻は学部の専攻分野に加えて、特定のテーマを追求できる制度である。新たな視点を身につけて専攻分野を補強する、柔軟な発想力や応用力を養う、他学科の教員や学生と触れ合えるなど、副専攻にはさまざまなメリットがある。「データサイエンスプログラム」は、文部科学省のMDASH(数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度)の「リテラシーレベル」「応用基礎レベル」の両方で認定済み。プログラムを修了すると、その専門性や資格を就職活動や卒業論文への活用、資格取得などにつなげることが可能だ。

文系が関わる職業領域でもデータサイエンスの知識とスキルは重視される

同プログラムは学部・学科を問わず、全学部生が参加できる。データサイエンスというと理系の領域と考えがちだが、申教授は「そうではない」という。

「今後、さらに社会のデジタル化が進み、AIツールが人々の生活に浸透すれば、あらゆる商品やサービスが『デジタルありき』『AIありき』で開発、制作、提供されるようになります。もちろん、商品やサービスをつくる企画、開発、デザインなど、従来は文系の職種とされていた分野も例外ではありません」

データ分析はAIの得意分野だが、そのデータを実社会で役立てるためには、「データを見る目」が必要不可欠だ。そのデータのどこが重要で、何が新たな需要やサービスにつながるか。そうした判断には、文系の領域である経営・経済などのバックグラウンドも必要になってくる。

「これからは理系だけでなく、文系でAIやデータサイエンスの地力を持つ人材を育てることが日本の産業界にとって重要になります。すでに文系の学生のなかにも、これからは自分たちにもデータサイエンスの知識やスキルが必要だと感じている人は多いと思います。しかし文系の学生には、データサイエンスに苦手意識を持っている人が多いのも事実です。そのハードルを取り除き、文系の学生にもAIリテラシーを普及させるために、できるだけ学びやすいカリキュラム作りが重要だと考えました」

学生の多様な志向に寄り添う柔軟なカリキュラム

カリキュラムでは、インターネットの基本スキルや倫理、セキュリティなど情報社会と上手につきあうための知識を得る「情報リテラシー科目」、プログラミングや人工知能、データ分析など、情報技術や情報社会の知識とスキルを習得するための「情報教養科目」、情報理論、機械学習、ニューラルネット、アルゴリズムなどの専門知識と技術を学ぶ「データサイエンス専門科目」という三つの科目群がある。学生はその中から自身の適性やキャリアパスを考えて受講する科目を選択、自分に合ったカリキュラムを設計していく。

修了には、基礎的な知識から専門的な内容まで、データサイエンスの幅広い範囲をカバーする「指定科目」と、指定科目の中でもとくに重要とされる「コア科目」から、修了条件を満たす単位を取得する必要がある。

数理・データサイエンス・AIに関する基礎的な能力育成をめざす「リテラシーレベル」では、指定科目から8単位以上、そのうちの4単位はコア科目から選択する。さらに実践的な能力を育成する「応用基礎レベル」では、指定科目から16単位以上、そのうち8単位はコア科目から選択することが修了条件となる。応用基礎レベルを修了すると、データサイエンス副専攻の修了認定を受けることができる。

オンラインで発行される修了証明バッジ

体験型学習を取り入れた多彩な科目群で、学生のニーズに対応

授業では初めてデータサイエンスを学ぶ学生にもわかりやすいようにハンズオン(体験型学習)を多く取り入れている。座学で理論から理解したい人、理論よりもまずは手を動かしてみたい人など、各自の学びのスタイルに応じて選択できるわけだ。もちろん、アルゴリズムや機械学習、情報理論、ニューラルネットなどの専門的な科目は、理論と実践の両面から学べるよう、2科目構成(タンデム講義)になっている。より高度な学びを求める学生には、授業で教える以上の内容が学べる教材も用意している。自分が興味を持った内容については、その教材を使って自主学習し、知識や興味を深められる。

こうした多彩な教材は、一般にAIやデータサイエンスの教育の必要性が叫ばれる以前から、申教授をはじめとする学習院大学の教員が考案、制作したものだ。そのなかにはデータサイエンス専門科目の「基礎の機械学習」のように、AI技術にいち早く関心を抱いた学生たちと一緒に作り上げた教材もある。申教授が作った教材サンプルで学生たちが"試し学習"し、彼らの意見を取り入れて改変を重ね、完成までに2年を要したという。

「学生がデータサイエンスを学ぶなかで、どんなふうに感じ、どこでつまずくのか、どこに興味を持つのか。学生たちと勉強会を開きながら、制作しました。このようなかたちで教材を作ったこと自体、非常に意義深いことだと思っています」

当時の学生は卒業したが、勉強会は現在も他大学の学生を交えて継続。AI技術の進歩に合わせて、教材は常にブラッシュアップしているという。

学生と一緒に作った教材も。勉強会は今も継続している

先入観や苦手意識を捨てて、まずはトライしてみよう

申教授は、AIを適切に使いこなせる知識と技術、倫理観やセキュリティについて学ぶのに、「大学は最も適した場所」と語る。

「『なぜそうなるの?』『どういう仕組みになっているの?』と疑問を持つ知的好奇心はとても重要です。ところが現代では、サービスやデバイスがあふれていて、一つひとつ全ての原理を知ることはほとんど不可能です。こういう時代に若い時期を過ごす学生さんにとって、知的好奇心を維持し続けることは大変だと思いますが、どんなテーマでもよいので、『なぜ』『どういう仕組みで』と思う気持ちは持ち続けてほしいと思います。データサイエンスは非常に幅広い学問です。本学のデータサイエンスプログラムは、科目数が多くバラエティ豊かで、かつ専門性の高い教員から学べるところが強み。苦手意識をもっている人は『今こそ苦手を克服するチャンス』と考え、まずはトライしてみてほしいと思います」

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学習院大学 副専攻
学習院大学 データサイエンスプログラム

取材・文/出村真理子 撮影/今村拓馬 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ