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【研究成果】2020年春の日本における小中学校の臨時休業、 新型コロナウイルス感染症の蔓延を抑制する証拠は見いだせず

2021.11.05

2020年春の日本における小中学校の臨時休業、新型コロナウイルス感染症の蔓延を抑制する証拠は見いだせず
No causal effect of school closures in Japan on the spread of COVID-19 in spring 2020


グラフ

休業の有無別の新型コロナウイルス新規感染者数
出典:Fukumoto, McClean, and Nakagawa, Nature Medicine, 2021, DOI 10.1038/s41591-021-01571-8 
※図や元データを転載・転用なさる場合は、出典を明記してください。


学習院大学法学部福元健太郎教授をはじめとする研究グループは、2020年春に日本で行われた小中学校の臨時休業が新型コロナウイルス感染症の蔓延を抑制する効果あるという証拠は見いだせないことを報告しました。

本件に関する論文が、20211027()1800(日本時間)に、生物医学に関する専門誌Nature Medicineに掲載されました。


【本件のポイント】

  • 2020年春の日本における小中学校の臨時休業が、新型コロナウイルス感染症の蔓延を抑制したという効果は見いだせない
  • 本研究は休業と感染者数との間に因果関係がどれほどあるかを厳密に推定した
  • 感染症対策で学校を休業するかを判断するにあたって、国や地方自治体が、感染症の状況や学校の休業状況を、市区町村単位で日ごとに監視することが重要

【背景】

 2020年の春に日本でも新型コロナウイルス感染症が蔓延し始めると、蔓延緩和のため小中学校の臨時休業が断続的に行われました。しかし学校の休業は、学習の損失など、問題も多くあります。これまでの研究では、因果関係を明らかにする方法に不備があったこともあり、休業が新型コロナウイルス感染症の蔓延を緩和する効果があるか否かがわかっていませんでした。そのため因果関係を厳密に調べることが求められていました。


【概要】

 学校の休業は、新型コロナウイルス感染症に対する政策の代表的なものの1つです。実はこれまでの研究では、休業が新型コロナウイルス感染症の蔓延を緩和する効果があるとするものと、ないとするものとが、およそ半々で、どちらが正しいか分かっていませんでした。その一因は、因果関係を明らかにする方法に不備があった点にあります。
 本研究は、2020年春の日本における小中学校の臨時休業が、新型コロナウイルス感染症の蔓延を抑制する効果があったのかを、マッチングという手法を用いて調べました。まず休業を実施していない各市区町村に対して、過去のコロナ患者数、生徒数、病院数など40個以上の要因が似ていて、かつ休業を実施している市区町村を1つあてがいました。そして休業を実施していない各市区町村がもし仮に休業を実施していれば感染者数がどれほどだったかを推定しました。結果として、休業を実施した市区町村の方が、実施しなかった市区町村よりも、新型コロナウイルスの新規感染者数が少ないという証拠はほとんど得られませんでした。学校の休業の副作用を考えれば、本研究の結果は、学校の休業を慎重に再検討する必要があることを示唆しています。
 なお本研究はJSPS科研費 JP19K21683の助成を受けたものです。また、学習院大学学校長裁量枠「研究力強化事業(国際学術誌論文掲載補助)」より掲載費の助成を受けています。


【政策的含意】

 研究対象は新型コロナウイルス感染症が蔓延し始めた2020年春であるので、感染がより悪化し変異株も出現した2021年以降も、学校の休業が同感染症を抑制しないかはわかりません。ただし、本研究が示唆するのは、感染症対策で学校を休業するかを判断するにあたって、国や地方自治体が、感染症の状況や学校の休業状況を、市区町村単位で日毎に監視するのが重要だということです。

論文情報
著者名:Kentaro Fukumoto, Charles T. McClean, and Kuninori Nakagawa
論文名:No causal effect of school closures in Japan on the spread of COVID-19 in spring 2020
雑誌名:Nature Medicine
DOI  :https://doi.org/10.1038/s41591-021-01571-8
URL  :https://www.nature.com/articles/s41591-021-01571-8

プレスリリース原本はこちら(リンク)