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哲学科のゼミ 「2年次演習B」

小林佳那実

2019.04.01

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STUDENT'S VOICE

学生たちの研究発表から得られる
新たな視点

小林佳那実

文学部哲学科2年 東京都・私立大妻中学高等学校 出身

吉田紀子先生の演習では学生による研究発表を軸に、文献の選定や論の組み立てなど、幅広い専門領域に共通する研究の基礎を学ぶことができます。また、自身の研究発表に向けた試行錯誤の過程においてはもちろん、ほかの学生の研究発表からも、今後自身の研究の手掛かりとなりうる多角的な研究の視点を得ることができます。歴史や哲学思想などの作品背景にもわたる研究範囲の広さから、ここで得た知識が、美術・美術史の枠を越えた学際的な学びにつながる点も、この演習の魅力のひとつだと思います。基礎から専門的な研究に踏み込むための知識まで、西洋美術についての見識をより深められる重要な場であると感じています。

ゼミの様子


ABOUT SEMINAR

『君の名は。』で感じる驚きを、
19世紀絵画で追体験

大都市改造されるパリの
目撃者だった画家たち

大ヒット映画『君の名は。』では、六本木ヒルズからの眺めが描かれていました。そんな高層ビルからの眺め、アニメーションでも感動しませんでしたか? 19世紀のパリでも、同じように高層階から街を眺める絵画が描かれました。当時、大都市改造されていく街並みを描いていた印象派の画家たちは、その時代の目撃者かつ証言者でもあったのです。

例えばピサロの《オペラ座通り》。当時としては高層である5、6階建ての一室から見下ろす形で描いた鳥瞰構図は、低層住宅しかなかった時代には描けなかったものです。私たちが今、六本木ヒルズからの風景を眺めるのと同じように、19世紀後半のパリの人々も5、6階の高層住宅からの風景を興奮して眺めていたのでしょう。

以前は画家個人の天才性やタッチなどに注目して鑑賞されていました。しかし、今は当時の歴史や都市化、近代化をあわせて理解し、過去を追体験することも研究の視点のひとつとなっているのです。

社会的な視点をもつと
さらに深まる芸術への理解

都市化や高層の建物は人々に未来への期待や興奮を与える一方で弊害も生み出しました。人と目を合わせずに、高い所から一方的に観察する行為からは他者との関係性は生まれず、やがて相互無関心や孤立感にもつながっていくのです。その様子がうかがえる作品に、カイユボット作《ヨーロッパ橋》があるので、機会があればぜひ鑑賞してみてください。

私が担当する2年次演習では、第1学期に参考文献をもとに、造形作品を言葉でディスクリプション(記述)するトレーニングを行い、グループ発表をします。第2学期には、一人一作品を選んで文献にあたり、ディスクリプションに基づく発展考察をして個人発表を行います。これらを通じて、芸術作品とどう向き合うのか基礎的な研究姿勢を身につけます。また、本学科では美術館に行くなど本物に触れる体験を大切にしています。ただ無心に作品を鑑賞することも大切ですが、描かれた時代背景を知れば、作品理解がさらに深まるでしょう。

吉田紀子 教授

パリ第十大学大学院美術史学専攻博士課程修了。美術史学博士。中央大学教授などを経て、2018年から現職。専門:フランスを中心とした西洋近代美術史・デザイン史。

吉田紀子 教授

※学年、肩書は取材当時のものです。