アーカイブズ学専攻修了生の齋藤 歩 氏が「山田一宇賞」「住総研 博士論文賞」を受賞
2022.12.15
研究
齋藤氏は前列、右から二人目
いずれも、令和4年度 前田工学賞 授賞式(2022年6月3日東京會舘にて)
写真提供:(公財)前田記念工学振興財団
人文科学研究科アーカイブズ学専攻修了生の齋藤 歩 氏が「第19回(2022年度) 山田一宇賞」「第7回 (2021年度)住総研 博士論文賞」を受賞しました。
山田一宇賞は、公益財団法人前田記念振興財団による前田工学賞の一つで、工学のうち土木及び建築に関する学術研究において著しい成果をあげた研究者を顕彰するものです。もう一方の住総研博士論文賞は一般財団法人住総研による住関連分野における研究発展のため、若手研究者・実務家の育成及び支援を目的に、将来の「住生活の向上」に役立つ優れた博士論文を表彰するものです。
これらの二つの博士論文賞を、このたび、齋藤 歩 氏の博士論文「米国型建築レコード整理法とその日本への応用に関する研究」が受賞しました。
博士論文賞をダブル受賞した齋藤 歩 氏からの喜びの言葉
2020年9月に学習院大学に提出した学位請求論文「米国型建築レコード整理法とその日本への応用に関する研究」に対して、このたび「第19回 山田一宇賞」(公益財団法人前田記念工学振興財団による前田工学賞の一つ)と「第7回 住総研 博士論文賞」(一般財団法人住総研)の二つの賞をいただきました。本論は、人文科学研究科アーカイブズ学専攻に在籍しながら、2010年より取り組んできた一連の研究をまとめたものです。およそ10年をかけて提出に至り、2021年3月に学位の授与を受けました。アーカイブズ学専攻の保坂裕興先生をはじめとするご指導いただいた先生方、論文の審査にあたっていただきました先生方に深く御礼申し上げるとともに、この場を借りて今回の受賞について報告いたします。
本論の考察対象は「建築レコード Architectural Records」と呼ばれる建築に関係する記録群です。本論では全9章にわたり、建築レコードを対象としたアーカイブズ学の学術研究を通して、日本の現状を見つめ直し日本固有の課題を導きました。建築分野のアーカイブズは、日本において建築学では正面から論じることが難しいと思われてきたなかで、今回の受賞では、建築レコードに注目することによって、記録群の整理手順にしたがいアーカイブズの課題を段階的に論じた点が評価されました。本論で言及した整理とは、記録の価値を判断するアプレイザル(Archival Appraisal)、記録の配列を検討する編成(Archival Arrangement)、記録の内容や背景を明示する記述(Archival Description)等、アーカイブズを利用可能とするために必要とされる実務の構成要素です。その一つひとつは、アーキビストによって実務で応用されることを前提として、アーカイブズ学において検討が重ねられてきました。そうした実践と研究の両面にわたるアーカイブズの理念を総合して日本の現状に照らし合わせることで、日本における課題の摘出を本論では試みたことになります。
学術研究領域としてのアーカイブズ学の認知は、日本では途上段階といえます。それでもなお、建築学の論文を想定した両賞において、アーカイブズ学の挑戦を受け入れて評価してくださった関係者の皆様の気概に心から敬服いたします。今回の受賞により、私自身もアーカイブズ学の可能性を見直すことができました。これを機に、建築学以外の研究分野に対してもアーカイブズ学に基づく学術交流を試みると同時に、学術研究領域としてのアーカイブズ学の自立に向けて、アーカイブズ学研究者としての教育研究、あるいはアーキビストとしての実践に励みたいと考えています。
齋藤 歩(京都大学総合博物館)
▼関連リンク
前田工学賞
https://www.maedakksz.or.jp/prize/
住総研 博士論文賞
http://www.jusoken.or.jp/commend/paper.html
学習院大学学術成果リポジトリ
http://hdl.handle.net/10959/00004996