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アーカイブズ学専攻で博士号を取得した阿久津美紀先生が日本社会福祉学会学会賞「奨励賞」を受賞しました

2023.03.30

研究

2022年10月15日(土)・16日(日)に関西福祉科学大学で開催された、第70回日本社会福祉学会秋季大会において、アーカイブズ学専攻博士後期課程修了生で文学部非常勤講師の阿久津美紀先生が博士論文を基にして出版した『私の記憶、家族の記憶――ケアリーヴァーと社会的養護のこれから』(大空社出版)が2022年度の日本社会福祉学会学会賞「奨励賞(単著部門)」を受賞しました。
<日本社会福祉学会の学会賞のページ> https://www.jssw.jp/activity/awards/

1954年に創設された一般社団法人日本社会福祉学会は、創立50周年を契機に、社会福祉研究の一層の発展を図るため、顕著な研究業績をあげた者の顕彰および若手研究者の研究奨励を目的とする日本社会福祉学会「学会賞(学術賞・奨励賞)」を創設しました。本書は、アーカイブズ学を基礎としながら、社会的養護の記録と記録管理を通して、その現状や課題を明らかにしたものであり、社会福祉研究の意義と役割、使命や可能性を示し、学問としての社会福祉学の今後の発展に大いに寄与するとして評価されました。

受賞式の様子

受賞式の様子、右から4番目が阿久津先生(日本社会福祉学会提供)

<受賞した阿久津美紀先生の声>

 この本は、2017年に学習院大学に提出し、2018年3月に博士(アーカイブズ学)の学位を授与された博士論文「『社会的養護』における記録管理とケアリーヴァーのアクセス支援」を再構成・加筆修正し、出版したものです。
 社会的養護という言葉を聞きなれない方も多くいると思いますが、社会的養護とは、近年ニュースなどで多く取り上げられるようになった「虐待を受けた児童」や「保護者のいない児童」など、家庭環境上、養護を必要とする児童を公的な責任で養育することを指す言葉です。日本では、多くの子どもが乳児院や児童養護施設などの社会的養護の下、養育されています。こうした社会的養護で養育された経験を持つ子どもの中には、幼い頃に乳児院に入所したものの、入所した理由や生い立ち、家族のことなども知らない子どももいます。
 なぜ社会的養護の下で養育されなければならなかったのか、そうした疑問に答えるものとして、社会的養護の記録は存在しています。子どもの知る権利の情報保障としても重要である社会的養護の記録ですが、施設や機関ごとに記録の保存年限は異なり、海外の国と比較しても日本は短い保存期間で廃棄されてしまうという現状があります。このような状況の中で、現在社会的養護で養育される子どもや社会的養護で養育された経験をもつケアリーヴァー(care leaver)が自分たちや家族のことを知りたいと思ったときに、「子どもの知る権利を保障できる記録管理制度とはどのようなものなのか」ということを課題として取り上げました。ケアリーヴァーの記録へのアクセスについての研究は、イギリスやオーストラリアなどいくつかの国では、既にアーカイブズ学だけでなく、社会福祉学、社会学等を巻き込んだ議論が展開されています。本書では、国内外における先行研究を収集、分析し、アーカイブズ学の観点から社会的養護に関する記録や記録管理システムに焦点を当て、ケアリーヴァーの記録へのアクセスに関する分析を行いました。
 このような社会における記録管理の課題を多くの人に知ってもらい、関心を寄せてもらうことで、社会的養護の下で養育された人たちが、自らの記録の存在を知り、記録へのアクセスが容易になる体制づくりを後押しできればと考えています。

(文学部非常勤講師 阿久津美紀)