生命科学科のゼミ 「嶋田研究室」
池野正一郎
2020.04.01
ゼミ紹介 理学部 在学生 教職員STUDENT'S VOICE
カイコの行動を支配している
遺伝子を特定したい
池野正一郎
理学部生命科学科4年 東京都・私立学習院高等科 出身
嶋田透先生の研究室では、主にカイコやエリサンなどの蛾類を飼育し、個体にあらわれる形質が遺伝的にどのように制御を受けているのか、どの組織で遺伝子が発現しているのかを解析しています。私は、二頭以上が共同でひとつの繭をつくるカイコの系統について研究中。共同は一種の社会性であるといえ、その社会性の基礎となる行動を支配している遺伝子を特定することが目的です。嶋田先生と助教の李先生はお二人とも気さくな方で、研究に関する論文や資料を教えてくださったり、研究についてアドバイスをしていただいたりと、とてもきめ細やかに指導してくださいます。まだまだ生命科学の分野で理解していないことがたくさんあるため、先生方のもとで、一つひとつ学んでいきたいです。
ABOUT SEMINAR
絹糸だけでなく
医薬の生産に使われるカイコ。
そのゲノムの不思議
カイコの行動から見えてくる
生物の進化と多様性
カイコはシルクの生産のために6000年以上人類に飼育されてきました。近年では、絹糸たんぱく質の遺伝子を改変して蛍光シルクやクモ糸シルクなど、まったく新しい材料を生産するカイコが作られています。また、優れた物質生産能力を利用し、様々な医薬品や化粧品の生産にもカイコが使われています。
これらの技術の基盤になるのが、ゲノム(生物がもつ遺伝情報)の解析です。私の研究室では、カイコやエリサンなどの蛾類を対象にゲノム研究を進めており、なかでも「生物多様性」の原理を紐解くことに着目しています。
地球上には多種多様な昆虫がいますが、それは植物の多様化と関係しています。一億年前に被子植物が爆発的に増えたことで昆虫の種も増加し、昆虫に食べられまいと植物はある種の毒(耐虫性物質)をもつように進化しました。しかし、昆虫もそれに適応するように共進化したのです。昆虫の多くは特定の植物しか食べず、カイコも桑しか食べません。桑も耐虫性物質をもつため、"桑しか食べないカイコ"の行動を司る遺伝子の機能を解析することは、生物の進化や多様性の仕組みを解明するカギになると考えています。
論文を読み、批評することで
"科学的な見方"を身につける
学生は各自の研究テーマに取り組んでいますが、カイコやエリサンの飼育や交配実験、遺伝子の構造や機能を明らかにするための実験、バイオインフォマティクス解析など、様々な手法を組み合わせて研究を進めています。
手を動かす研究以外に、学生たちには各人の研究テーマに関わる先行研究の調査や、比較的新しい英文の原著論文の読解とその批評を行ってもらいます。研究テーマに直接関係はなくても、幅広い分野の論文を読み込むことは重要で、生命科学の国際的な動向を把握し、科学的な素養や視点を養ってもらいたいと思っています。論文紹介や研究報告の機会を設けていますので、プレゼンテーション能力やディベート能力も高まっていくでしょう。
嶋田透 教授
東京大学大学院農学生命科学研究科教授を経て、2019年より現職。日本蚕糸学会賞受賞。専門:生物遺伝資源学。
※学年、肩書は取材当時のものです。