総務省の研究開発プロジェクトに学習院大学が参画します
2025.08.20
研究
総務省の「情報通信技術の研究開発に係る提案の公募(ICT重点技術の研究開発プロジェクト)」の結果が公表され、株式会社東芝を代表研究機関とし、国立研究開発法人情報通信研究機構、日本電気株式会社、東京大学、学習院大学、浜松ホトニクス株式会社が研究機関として参画する研究開発課題「量子暗号通信網の早期社会実装に向けた研究開発」が選定されました(注1)。学習院大学は、本研究開発プロジェクトにおいて、ツインフィールドQKDの機能強化を実施します(注2)。
本プロジェクトで取り組む量子暗号は、物理法則を利用して安全な通信を実現する技術です。現在インターネット等で広く使われている公開鍵暗号は、近い将来に技術の進歩により安全ではなくなると考えられており、高度な技術を持つ盗聴者に対しても安全な通信を実現できる量子暗号は、安心で安全な社会のために重要な技術です。本プロジェクトで取り組む研究開発に関する詳しいことは、公募の別添資料1をご覧ください(注3)。
学習院大学は25年以上に渡って量子暗号の研究に取り組んでいます。特に、通常の光通信で用いられている光の測定方法であるホモダイン検出を用いる量子鍵配送の研究を行ってきました(注4)。量子鍵配送は、量子力学の原理を利用して安全に鍵を離れた場所に配送する手法であり、英語では、Quantum Key Distribution、略してQKDと呼ばれています。ホモダイン検出を用いるQKDは、低コスト化が可能と期待されており、学習院大学では日本電気株式会社と実用化を目指した研究開発を行ってきました(注5)。本プロジェクトで取り組むツインフィールドQKDは、2018年に株式会社東芝によって提案された新しいQKD方式であり、長距離の鍵配送が可能です。学習院大学では、株式会社東芝、国立研究開発法人情報通信研究機構等と協力し、ツインフィールドQKDの機能強化による量子暗号通信網の早期社会実装を目指します。
(注1)総務省報道資料 令和7年7月9日 「情報通信技術の研究開発に係る提案の公募 (ICT重点技術の研究開発プロジェクト)」の結果
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin03_02000431.html
(注2)株式会社東芝によるリリース 令和7年8月20日
https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/rdc/rd/topics/25/2508-01.html
(注3)総務省報道資料 令和7年3月31日 「情報通信技術の研究開発に係る提案の公募 (ICT重点技術の研究開発プロジェクト)」の公募
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin03_02000422.html
(注4)ホモダイン方式による量子暗号通信, 平野琢也, 光学 39, 23-28, (2010).
https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/39-01-kaisetsu3.pdf
(注5)How to take quantum cryptography mainstream, Nature portfolio.
https://www.nature.com/articles/d42473-022-00104-2